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第29話~ララとチリの視点8~

 熱かったはずなの。

 苦しかったはずなの。

 それが急に全部消えたなの。


(そうか、ララは死んじゃうなの。この世から消えちゃうなの。でもそれでいいなの。ララが地獄の門の主だから、ララが消えればもう二度と苦埜は出れなくなるから、それでいいなの)


 だけど、ララは最後にチリの姿を見たいと思ったなの。

 2人で1つ。

 だけど、チリはチリ、ララはララなの。

 チリがどこにいるか見ようとしたなの。

 でも、瞼が重くて重くて開けられなかったなの。

 チリの気配を探ったら、少しだけ感じたなの。

 一瞬しかわからなかったけど、ララと一緒に消えるのかなって、感じたなの。

 だって、傍に温もりを感じたなの。


(最後に、チリと手を繋げたら嬉しいなの)


 ララは手を伸ばしたなの。

 でも、腕は動いてくれなかったなの。


(もう時間なの。意識が一瞬戻るなら、一緒に手を繋ぎたかったなの)


 それぐらいの時間はくれたっていいなの。

 運命は意地悪なの。

 ララがそんな風に怒ったからかな?

 頬を撫でるような風が吹いたなの。

 地獄の門の中にそんなものは吹かないはずなのに、不思議だったなの。

 そしたら次は、ララの体が浮いたなの。

 匂いもしたなの。

 花の甘くて優しい香りなの。


(これは、ママの香りなの。死ぬ前は、一番大好きな香りを思い出すなの?そういえば、そんな本を読んだことがある気がするなの。じゃあ、ララはこの幸せな匂いを嗅いだまま眠りたいなの)


 とても気持ちがいいなの。

 狐火で焼かれているはずなのに、なんだかとってもあったかいなの。

 だから、ララはちょっとよくばりさんになってきちゃったなの。


 抱っこしてほしいな。

 ギュってしてほしいな。


 この願い、叶うかな?


 もし叶うなら、ララはママにちゅってしてほしいなの。

 2人は気づいてなかったかもしれないけど、ママとパパでしているのをララは何度も見ているなの。

 金色の糸に結ばれた時にしているのを狐像から見ていたなの。

 いつも2人でだけして、ずるいなの。


「見ていたのね」


 ママの声が聞こえるなの。

 どうして?


「覗きもしていたのか。オレたちの子どもは悪趣味だな」


 あれ?パパの声も聞こえるなの。


「チリ、ララ。聞こえたみたいね」


 あれ?あれ?

 もしかして、この温もりは本物なの?

 温かいのも、好きな匂いがするのも、全部本当なの?


「うん、私がずっと2人を抱っこしているよ」


 ララ、お口を開いていないのにどうして言葉がわかるなの?

 なんで会話が出来ているなの?

 まるでチリとララがテレパシーをしている時みたいに、何でも聞こえているみたいなの。


「そうよ。今2人は地獄の門の外にいるの。門の扉を閉じてから、狐像の傍に貫と一緒に2人を抱きしめていたら2人の声が聞こえてきたのよ。チリは貫が抱えていて、ララは私が抱えているの」


 そうなの?

 それじゃあ苦埜は?

 門の主は?


「チリとおんなじこと言ってるじゃねぇか。チリ、ララに説明するからもっかい言うぞ。地獄の門の主はオレになった。で、楠葉が門の中に入って苦埜を滅してお前らを連れて出てきた。門はもう閉じたし二度と出現しねぇよ。主としてオレが形を無くしたからな」


 形を無くした?

 貫が?

 ララ、わからないなの。


『チリが説明するなの。ララ、力を使いすぎて目を開けられないでしょ?チリの変わりにララが頑張ってくれたから、チリは今目を開けられるなの。今貫は、妖怪じゃないなの。人間になったなの。お母様みたいに、妖怪としての形を失って門を全部消したなの。だから貫は、ママと同じ髪の色をしているなの。パパって呼びやすい見た目になっているなの。狸じゃなくなってとてもいいパパになっているなの』

「まるで狸が嫌だったと言わんばかりの説明だなこんにゃろ。消えかけてもお前らは相変わらずお前らだっていうのには安心したがな」


 ママとパパが同じ髪色なの?

 そしたら、チリとララも同じ髪色になりたいなの。

 でも、生まれ変われない限り無理なの。

 チリとララは門の中に入っちゃったから、不死身がなくなっちゃったなの。

 だから、輪廻転生の輪にも入れず、このまま消えちゃうなの。


「ううん、消えちゃうけど、消えないわ。私がそうさせない」

「ああ、お前らは輪に入れるようにする」


 どういうことなの?

 結局消えるのは変わらないなの?

 一緒にいれないなの?


「ララ……」


 ララは、家族を守りたかったなの。

 皆を守りたかったなの。

 だから消滅してもいいと思ったなの。

 守れるならいいと思ったなの。

 こんな風に会話が出来て助かるなんて思ってなかったなの。

 でも、やっぱり助からないなの?

 秘密にして全部勝手にララたちがやっちゃったからママとパパは怒ってララを助けてくれないなの?


「違う!そんなことない!私だってララとチリと一緒に居たい!また一緒に同じテーブルを囲んでご飯を食べたいよ!だけど、だけど!助けたくても助けられないの!あなたたちは……う、ヒック、もう……う、うわああああ!」


 ママ?

 どうしたなの?

 ララの顔が冷たいなの。

 これはもしかして、ママの涙?

 どうして、そんなに泣いてるなの?

『ララ。チリたちはもう消えかけているなの。地獄の門の中に居すぎちゃったなの』

 居すぎちゃった?

 ……ああ。

 わかったなの。

 手遅れ、だったなの、ね。


「チリ、ララ。お前たちを助けられなくてすまない。オレの判断が遅かった。だが、そのかわり輪廻の輪に入れるよう今から楠葉がお前たちを浄化する。そうしたら、お前たちは人間となってオレたちと会えるかもしれない」


 そんなことできるなの?


「できる。お前たちはいつか楠葉のお腹に宿れるように。すぐにオレたちが子作り始めてやるからさ」

「え、ちょ、それって子どもに言うことじゃないでしょ!? ヒック、いくらこんな時だからって」

「こんな時だからこそストレートに言うんだよ」

「でも、でも」

「楠葉。忘れるな。今のチリとララといれる時間は最後だ。なら、やることは……わかるよな?泣いてる場合じゃないってよ」

「……! ぐす……う゛ん゛」


 ママが鼻をすすってごしごし顔を拭いている様子を感じるなの。

 チリが『ハハ、ママ、凄い顔をしてるなの。いっぱい泣いちゃったなの』って教えてくれたなの。


「チリ……ララ……少しだけ、バイバイするけど、必ず戻ってきてね。待っているから。パパとママで待っているから」

「お前らが本当の子どもになったら大変そうな未来しか見えねぇけど、お前ら以外に子どもが欲しいとも思わねぇしな。ちゃんと輪に入って戻ってこい。お前らは、いつだってオレたちの子だ」


 おでこが、あったかいなの。

 もういっかい、柔らかい温かさがあったなの。

 気持ちよくてうっとりしていたら、ララの目が開いたなの。

 そしたら、パパとママの優しい笑顔が目の前にあったなの。


『ララ、ママとパパがチリたちのおでこにチュってしてくれたなの。嬉しいなの』


 チリが柔らかくてあったかいの正体を教えてくれたなの。

 嬉しいなの。

 ちゅ、してくれたなの。

 ララは、それだけで十分なの。

 そう思ったら、金色の糸が周りをとんだなの。

 まるで、チリとララと、パパとママを囲んでいるみたいなの。

 ちょっと体を貫通して、4人をくるくると繋いでいるようにも見えたなの。

 あったかい。

 とてもあったかいなの。

 温かな金色の光が、とっても気持ちいいなの。


「「あったかいなの」」


 ずっと喋れないと思っていたけど、チリと一緒に同じことを言えたなの。

 そうしたら、パパとママがチリとララをぎゅっと抱きしめてくれたなの。

 金色の粒子がいっぱい見えるなの。

 ふわふわと、一緒になって、ララとチリとお空に飛んでくれるなの。

 幸せな気持ちでいっぱいなの。

 パパ、ママ。

 また、会いに来るから。

 それまで待っててなの!


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