「クッ、この! この!」
別の日。
私は相変わらずリビングで待機して、スマホゲームをやっていた。
丁度最初の章ボスと相対した所で、チュートリアルの総決算とでも言うべきか、中々な難易度をしている。
このっ、画面が小さくてタッチがし辛いわね!? アクションゲームに不向きよ、もっと大きい端末買って貰おうかしら!?
そう四苦八苦しながらやっていると……
「──おい、邪魔するぞ」
「何!! その声メタルマン!? 今手が離せないんだけど!!」
おそらく窓の方からメタルマンがやって来ていた。
けれど今は手が離せない。ちょっとでも画面から目を離したら、あっという間にゲームオーバーになってしまう!
今めっちゃ良い所なの! 何度も負けていて、今度は勝ちそうなの! 用なら後にして!!
「何をやってるんだ貴様は……まあ良い、セーブポイント使うぞ」
「どうぞー!? よし、行ける! 行け!」
「ふん……よし、これで完了か。──ん? おい、ここに転がっている金属製品の塊はなんだ?」
「あ? 何!? って、ああ!? めっちゃダメージ受けた!?」
もう! メタルマンが声を掛けて来るからちょっとミスしちゃったじゃない!!
何、金属製品の塊? ああ、この間ユウカちゃんに置いていって貰ったやつ?
「あーそれ! メタルマンが使うかなって思って貰った奴!! リサイクル品よ! 使うなら上げる!!」
「──ッ!? こんないい物をか!? 相変わらず何を考えている!?」
「うっさいわねえ!? 今ガチで手が離せないの!! いらないなら上げないわよ!? 逆に処理に困るけど!!」
「……まあいい。どうせカイトのお人好しなのだろう。ならば、ありがたく貰っておこう」
「はいはい、貰っておきなさい! よし、よし! 挽回出来そう!」
さっきまでのミスの分を取り返して、スマホの中のゲームで味方陣営の体勢を立て直した所だ。
ここから一気に逆転してやる!!
「またガレージ借りるぞ。……言っておくが、勝手に入るなよ? おそらく調整中のパーツが机の上に散らばる事になるだろうが、ちゃんと意図した配置だからな? 勝手に物の位置を弄るなよ?」
「あー、はいはい! 言われなくても好き好んで入らないわよ!!」
「ふん。……そういえば、カイトはどうした? いないのか?」
「お出かけ中!! 帰るの夜!!」
「そうか。まあ、居ないなら居ないで別にいい」
そう言って、メタルマンは何処かに行った。
全く、これでようやくスマホゲームに集中出来るわ。
そうして私は熱中して……
「──終わったー!! いやー、白熱した! これ本当にチュートリアル!? 最初っからクライマックスなんだけどー!!」
私はスマホを投げ出して、ソファーの上でグイーっと伸び上がっていた。
いやー疲れたー! 肩凝ったー!!
「さっきからうるさいな、お前は……」
「あ、メタルマン。そういえば来てたんだっけ」
「もう戻るがな。カイトによろしくと言っておいてくれ」
「あら? デレ? デレ期?」
「なんだそれは? 知らん、帰る」
そう言って、さっさとメタルマンは窓から元の世界に帰っていった。
ちぇ、つれない態度ねー。
まあ良いわ、3時のおやつでも……
「……あら? ユウカちゃんの置いて行った銅の剣とか……結構残ってるわね?」
私はふと視線を向けると、リサイクル品として受け取っていた道具がまだ沢山残っているのを見つけた。
と言うか、ほとんど減っていない。
あれ? ゲームに夢中になってたから生返事だったけど、確か使うとか言ってなかったっけ?
何よあいつ、結局殆ど使わなかったって事? せっかく貰ってあげたのに、意味無かった……
「……あっれ? “ユウカちゃんの鎧、何処?”」
気付いたら、ユウカちゃんの鎧がなくなっていた事に気づいた。
確か、ゴミ山とは別にここに置いていたような……?
「……まあ、前回の夜カイト帰って来ていたから、あいつが何処かしまったんでしょう。うん」
そういえば、ユウカちゃんがカイトに聞いた方がいいんじゃ、とかなんとか言ってた気がする。
きっとカイトが気を利かせて、どこか別の場所に保管したのね。
私はそう納得して、鎧の事は一旦置いておいて、3時のおやつに向かう事にしたのだった……
☆★☆
また、別の日。
「──こんにちわー! お兄さん、ソラちゃん!」
「あ、マホちゃんじゃない。こんにちわー」
今度は、マホちゃんがやって来た。
私は相変わらず、ソファーの上でスマホゲームをやっている。
今はそこまで忙しく無いから、顔だけマホちゃんの方を向いていた。
「あれ? お兄さんは? ソラちゃんだけですか?」
「カイトはお出かけ。金策中ー」
「ありゃ、それは大変ですねー?」
んー、と口元に指を当て、考える仕草をしているマホちゃん。
そう思っていたら、よし! と、何かを思いついたように手を叩いていた。
「それなら、お兄さんが戻って来るまで何かお手伝いしちゃいます! この間のお菓子と遊園地のお礼です! 何かありますか?」
「本当にー? 助かるわー」
その言葉に、私はかなり本気で喜んでいた。
マホちゃん比較的こっちの世界と似たような常識持ってるから、頼みやすくてありがたいのよねー。
「それじゃあ、お掃除の手伝いお願い。この家一戸建てで、無駄に結構大きいから掃除がめっちゃ大変なのよねー」
「あー、そうなんですね。了解です! じゃあぜーんぶピカピカにしちゃいます!!」
「ありがたいわー。……ちなみに、魔法であっという間に出来たりする? 杖の一振りで、こうパーっと」
「そう言うのは、ちょっと専門外ですね……」
ッチ。ダメか。
ダメ元だったけど、やっぱりニチアサ系の魔法少女じゃ生活系の魔法は使えないのね……とても残念。
まあ、本人が手伝ってくれるだけでもありがたいか。単純に人手が二倍だしね。
「それじゃあ、私は二階の方をやるから、マホちゃんは一階の方をお願い」
「はーい! 頑張ります♪」
──そうして、私たちは家の隅々まで掃除した。
二階の部屋を終えた私は、リビングに戻って来ている。
「ふう、やっと終わった。マホちゃん、まだやってるのかしらね? ちょっと様子を見に……」
「ただいまー! やっと終わりましたー!」
「あ、マホちゃん。お疲れー」
「ふう。ものすごくゴチャゴチャした場所があったから、物の整理するのに大変でした!」
あれ? そんなにゴチャゴチャした部屋ってあったかしら?
最近は暇がなかったとしても、前までカイト普段から掃除はしてたから、そこまで汚く無いような……?
まあいいわ、綺麗になったなら文句を言うことでも無いでしょう。
私は深く気にせず、マホちゃんにお礼を言った。
「ありがとうー! 本当に助かったわ!」
「いえいえ、これくらいヘッチャラです! それでは、お掃除も終わったことですし、オヤツでも食べませんか? 以前、とっておきの品を冷蔵庫に入れさせて貰ってたんです!」
「本当? 楽しみねー」
そう言って、マホちゃんは冷蔵庫を開き……あれ? と首を傾げていた。
「あれー? ここに入れていた、限定品のオヤツが無いですねー?」
「えー? 本当に? ……まさか、カイトのやつが食べちゃったのかしら?」
「お兄さんがー? うーん、考えづらいんですけどね。名前書いて置きましたし。お兄さんには伝えたので、存在を知ってる筈です。プリンなんですけど」
プリン?
……へー、そうだったんだ。うーん、心当たり無いわね。←(完全にド忘れ)
「……まあ、無いならしょうがないわね。代わりの物でも買って来る?」
「うーん、楽しみにしてたんですけど残念です……」
そうして、私はマホちゃんと一緒に新しいおやつを買いに出掛けに行った。
留守番だけど、まあちょっとくらい大丈夫でしょう。
そうして、その日は1日無事に終わったのだった……
☆★☆
うーん、順調ね! 私って留守番の天才かしら?
ユウカちゃんとマホちゃんに家事手伝って貰っているから、楽だわー。
メタルマンは論外。あいつ自分のことしかやらないし。
まだカイトはアルバイト探しているようだけど、まあ今日も無事に留守番を終わらせちゃいましょう。
……そう思って、いたのだったんだけど。
☆★☆
「──ソラ様? 私の鎧知らないかい? そこに置いてあったと思うのだけど」
「え? カイトが仕舞ったんじゃない?」
☆★☆
「──おい!? 私のガレージ部屋、パーツが一つ残らず無くなっていたんだが!? どう言うことだ!?」
「え? 知らないけど? 入ってないわよ、私?」
☆★☆
「──あれー? 今度は新しく補充しておいたオヤツが沢山減ってるー?」
「そんなに食べてないわよ、私?」
☆★☆
──とまあ、なんだか雲行きが怪しくなっていき。
数日経った頃……
「「「──誰だッ!? 君達は/お前達は/あなた達はっ!?」」」
三者三様。リビングで、互いに武器を構えながらそう叫んでいたのだった。
「……おい、どう言うことだこれは?」
丁度帰って来た、カイトもそこにいた状態で。