カイトです。
なんか家に帰ったら、異世界人メンバー共が互いに睨み合っている件について。
いやー、いつかブッキングするだろうなとは思っていたけど……ものの見事に敵意むき出しだなおい。
「あっ、カイト!」
「むっ、カイトか」
「お兄さん!」
「「「はっ?」」」
「お前ら全員落ち着いてくれない?」
とりあえず、武器を構えている3人に対してなんとかそう言うが、ジリジリと互いに立ち位置をずらしながら睨み続けるだけの結果になってしまった。
ひとまず俺は、ソファーに縮こまっているソラに対して何があったのかを聞く事にした。
「おいソラ、一体何があった? 互いに見知らぬ相手にあったとしても、明らかに敵意が異常だぞ?」
「えっとねー……」
1.ユウカちゃんとお菓子を一緒に食べている。
2.メタルマンがやって来て、剣を持ってる見知らぬユウカちゃんに手の平を向ける。
3.マホちゃんもやって来て、私のお菓子買ってに食べられてるー!? と驚く。
「いろいろ端折ると、メタルマンが敵意むき出しで二人に武器向けたのがキッカケ」
「OK、大体わかった」
俺はソラのその言葉に、あちゃーと頭を抱える。
特に、最初に遭遇したのがメタルマンとユウカだったと言うのが不味かったらしい。
ユウカは剣も腰に携えているのもあって、メタルマンの警戒度が跳ね上がったのが問題だったと。
そんなピリピリした状態でマホまでやって来て、更にメタルマンの余裕が無くなったと。
主要因主にメタルマンじゃねえか。相変わらず警戒心高いなおい。
これがもし、ユウカとマホの互いの遭遇だけだったなら、まだ穏やかに終われただろうものの……
これ、混乱するだろうから敢えて他のメンバーの事を説明して無かった俺のせいか? 原因?
「カイト、この人達は知り合いかい?」
「カイト、こいつらはお前の仲間か?」
「お兄さん、この人たちって誰なんですか?」
「あー……簡単に説明するから、武器を降ろしてくれ」
そうして、とりあえず全員の武器の構えを解かしてから、詳細を説明していく。
カクカク、シカジカ──
「──と言うわけで、お前ら全員セーブポイント利用者って訳だ。理解したか?」
「ボクの世界以外の、異世界人……!」
「全く、またトンデモ話が出たな……」
「こんなファンタジーとアメコミの話の住人の世界があるんですか……!?」
その言葉に、三者三様で驚きの表情を出していた。
互いの顔を見合い、異なる世界の存在というものを改めて実感している所らしい。
「でも、確かによくよく考えると、私以外の利用者がいてもおかしくないですね……あまり考えてませんでしたけど」
「ああ、ボクもそうだ。てっきり女神ソラリスによる導きは、ボクにしかないかと思っていたけれど……」
「ふん。こう雑多に使用者が増えると、色々と問題が出そうだがな。更に異なる世界の住人だと? 常識が通じる保証なんてない! ただでさえカイト達で手一杯なのに、ことさら信用出来る相手なんて思えるか!」
マホとユウカは冷静に状況を受け止めているが、メタルマンは相変わらず警戒心が高く二人に対して気を一切許していないようだった。
くそう、予想通り面倒な事になったな……メタルマンのいい分も間違いって訳じゃないから、警戒するなっつっても無理のある話なんだよなあ。
実際、俺は3人それぞれと既に交流したから全員話の通じる相手だと分かっているが、これがもし人殺しが当たり前の文化の世界から来たとか言う奴がいた場合、悲惨な状況になる可能性が高い。
そこまではいかなくとも、人の家を簡単に漁るような奴がやって来るかもしれない。
実際、俺もそう思って警戒して家を留守にするのは嫌だったから、ソラを待機させたのが理由だ
そう言う意味では、メタルマンの懸念点は最もだから説得しづらいのだが……
「何よ!? 女神の采配にケチを付ける気!? そんな危ない奴、そもそも招待する訳ないじゃない!! ちゃんと事前に連れて来る相手は判別してるわよ!!」
あー、なるほど。その言葉に俺は思い返す。
そもそも、この家に異世界からやって来るためには、ソラの本体、ソラリスが“マーカー”を渡したから、らしい。
それなら、よっぽどじゃない限りおかしな奴はやってこない筈だ。
でもなー……
「それは君基準の判断だろう。だからこそ信頼出来ないのだが?」
「あー!? ひっどーい!?」
「貴様、初対面の時に私に何をしたか忘れたか? 言っておくが、ある意味一番信頼出来ない相手がお前なのだが」
そう言って、メタルマンはソラに対して割と苛立ち気味に声を漏らす。
あー、そういえば無理やりセーブポイント使わされていたな、お前……
家の空間ねじ曲げて、無限ループとかやらされていたのを思い返すと、確かにソラは能力的にも、悪ガキ敵にも油断ならねえ相手になるだろう。
「……仮にもボクの恩人の一人に対して、あまり否定的な言葉を使わないで欲しいんだけど」
「そうだよ! ソラちゃんいい子だよ!?」
「よーしよし! ユウカちゃんマホちゃんもっと言ってやって! この分からず屋、頭でっかちなの!」
二人の後ろに隠れるように移動して、メタルマンにベーッと舌を出すソラ。
その姿は、まんま悪ガキのようにしか見えず、女神の威厳もあったもんじゃねえ、と思ってしまった。
「……ところで、初対面の君たち二人に確認したい事があるんだけど」
「あ、なんだ?」
「何ですか?」
そう言って、ユウカが改まって切り出し……
「──ボクの鎧を勝手に持って行ったのは、君たちのどちらか、あるいは両方なのかい?」
そんな言葉を質問していた。
鎧? 何の話だ?
「はい? 鎧って、何の事ですか?」
「……まさか、あの金の塊の事か?」
マホは首を傾げ、メタルマンが心当たりがあるような言葉を言う。
それを聞いて、ユウカが目を細めてメタルマンを睨みつけ始めた。
「へえ……あなただったんですね。セーブしてたおかげで復活したから良かったものの、おかげで再ロードしないといけなくなってしまったんだよ? 要塞の調査の為、街で買い物や王城で手続きとかしてたのに全てやり直しになってしまったよ……!!」
そう言ったユウカの声色は、多少の苛立ちを隠せないようなそぶりだった。
あー、なるほど……ロードをすると、それまでの世界の時間も巻き戻る。
と言う事は、時間をかけて準備をしていた事があった場合、それも全てリセットされてしまうと……
そんな落とし穴があったんだな、ロードって。
それを聞いて、メタルマンがフンッと鼻息を荒くして。
「そんな事は知るか。使っていいと聞いたから使ったまでだ。そんな事より、私のガレージに置いていたパーツを片付けたのは貴様らか?」
「ガレージ? なんだいそれは?」
「ガレージ……あー!? もしかしてめっちゃゴチャゴチャしてた部屋!?」
今度は、マホが何か気づいた方に声を上げていた。
それを聞いてメタルマンはマホの方に向き、怒りの声を出す。
「やはり貴様か……!! 一体どう言うつもりだ!! まさか私の装備の情報を盗むために忍び込んだんじゃないだろうな!? しかもパーツまで隠すとは!! 見つけるのにどれだけ手間取ったと思ってる!!」
「急に何言って来るんですか!? あんなの部屋をゴチャゴチャにしておくのが悪いんじゃないですか!! せっかく綺麗にお掃除したのに! そもそも、あのガレージってお兄さんの家のものですよね!? 人様の家の部屋を汚いまま放置ってどうかと思います!!」
そんな事より!! と、今度はマホが声を荒げて。
「私の溜め込んだお菓子を食べたのは、もしかしなくてもあなた達ですよね!? 特にそっちの女勇者さんの人!! さっきも現在進行形で食べてましたよね!?」
「はあ? お菓子? そんなもの食べるか」
「あれ君のだったのかい!?」
メタルマンが呆れたような声を上げている中、ユウカが驚いたように声を上げていた。
やっぱり!! と、マホは声を荒げる。
「あれ、限定品も含まれていてとても楽しみにしてたんですよ!? すっごく酷いと思います!! あんな貴重なもの食べる機会、私そうそう無いのに!? 美味しいお菓子を安心して食べられる環境、どれだけ貴重か分かってるんですか!? 張り詰め続ける環境の中、どれだけ私の救いになっていたか!!」
「そんなこと言われても!? ソラ様に出されたものだったから食べてただけだったんだけど!?」
ユウカが戸惑ったように、マホに言い訳をしていた。
おいおい、何だなんだ? 三者三様、なんか互いに迷惑掛けてるっぽい?
「おいソラ、何か事情知ってるか? 最後のは間違いなくお前のせいだとは分かるけど」
「えー? 私が知ってるのは……」
カクカク、シカジカ──
なるほど、なるほど。
「──全部お前の管理不行届けが悪いじゃねえかああああ?!!」
「いひゃい、いひゃいっいひゃいっいひゃいぃぃぃ──?!!」
これどう聞いても、留守番中生返事したり、勝手に冷蔵庫にあるものを出したソラが原因じゃねーか!?
留守番の役目果たせてねーだろ!?
こんな時のために事情を知ってるお前を留守番させてたんだろうが!?
「何よ!? 役目というべきなら、そもそも管理人としてカイトに任せたんだから、あなたが責任もって監督しなさいよ!? 異世界人同士の調停役としてあなたがいるんでしょ!? 役目放棄してアルバイトなんか探してるんじゃないわよ!!」
「知らねーよそんなの!? そんな役割押し付けてたのお前!?」
おい、完全初見情報だぞそれ!? 確かにソラの本体と出会った時、管理人だが何だか言ってたような気がするが、そう言うことなの!?
クッソ面倒なの押し付けてんじゃねーよ!?
いや、今はそれよりソラがやらかした事についてだ!!
「とにかく謝れ!! 3人に謝ってやれ!? お前のせいで3人とも険悪な状態になってんだから!!」
「うう〜〜っ……その、えっと……ごめんなさい」
そうして、唸りながらも自分が悪いと言う自覚が出たのか、ゆっくりペコリと、頭を下げていた。
「……まあ、ソラ様に対しては許すよ」
「ッふん……」
「もう、次から気をつけてね? ソラちゃん」
とりあえず誠意が伝わったのか、3人ともソラの言葉に納得してくれたようだった。
ひとまず、これで一安心か……
「……まあ、それはそれとして」
ん?
「どの道、コイツら二人を信用するべき相手かどうかは、別問題だがな」
「……それは、こっちのセリフだね。特に、君に対しては」
「私も、ちょっとイラッと来ちゃいました」
違った。全然一安心出来てなかった。
もう勘弁してくれよ……
「いつまで喧嘩腰でいるんだよおい……このままじゃ家壊されそうな気がするんだけど」
「喧嘩腰……それよ!?」
「あ? どう言うことだ?」
俺の言葉に、まるで名案! とでも言いたいように、手を叩くソラ。
そうして、ソラは宣言する。
「──この際、3人とも思いっきり喧嘩してもらいましょう!!」
『は?』
火に油を注ぐような発言。
燃え盛りそうなら、全て爆発させるまで。
そんな事を、宣いだしたのだった……