「ユウカちゃんの世界を救えるのは、ユウカちゃんだけ……他の世界、メタルマンも、マホちゃんも、それぞれの世界は彼らしか救えないの。そう言う人材を選んだ……ううん、“見つけた”筈だから」
「……何?」
「そもそもセーブポイントの貸し出しってね。“その世界の命運を決める重要な人物”を見つけて貸し出してるの。女神が選んだから世界の命運を握ってる訳じゃ無いわ。“重要な命運を握ってるから女神が手助けしてる状態”なの」
「…………」
つまり、順序が違う。
ユウカに使命を押し付けているのは女神ではなく、“世界そのもの”が押し付けている状態だと。
女神は、ただそんな彼ら彼女をセーブポイントでサポートしているだけだと。
「だから、あの子達が本当に諦めてしまったら、それこそその世界の終わりになってしまう。そんな、重要人物なのよ。……この家に来る人たちは、みんな」
「…………」
言いたい事は、理解出来た。けど……
「なあ。逆に聞くけど、何で世界の命運を女神が気にしなきゃいけねえんだ? 仮に、仮にだが。ユウカの世界が滅んだ場合、あのクソ女神に影響が出るのか?」
それだったらまあ、あれだけユウカに無理矢理向かわせようとする理由に納得がいく。
自分に悪影響があるなら、無理矢理にでも何とかしれ貰おうと思いたいだろう。
「……影響は、あまり出ないわね。精々、落ち込む程度かしら」
「落ち込む?」
そう聞き返すと、ソラはあのね……と、こちらに顔を上げた。
「そもそも世界ってね。最高神様からいくつか承っているものなの。本体も、いくつかの世界を貰った状態で、それを管理している……ユウカちゃん、メタルマン、マホちゃんの世界も、その内の一つよ」
「ふーん……と言う事は、俺の世界もか?」
「この世界? この世界は……あれ? 何だっけ? “確か普通と違った筈”だったんだけど、うーん……だめ、多分本体に記憶消されてる」
「何だそれ?」
わざわざ記憶を消す必要あるのか、その部分?
俺の世界が一体何だってんだよ?
さっきからうーん……と、ソラが唸っていたが、結局その点については分からなかったらしい。
「ま、まあ。その話は置いておいて……世界を貰った神様は、その世界を管理する使命があるの。最高神様からの命で、“最高の世界”を作り上げるためだって……」
「“最高の世界”って?」
「知らない。多分ハッピーエンドか何かを求めれば良いんだと思うんだけど……」
けど……と、ソラは前置きして。
「……正直、世界を管理する使命とかは、本体にとってはどうでも良いの」
「どうでも良いって……お前……!」
そんなの、受け持たれた世界にとってはたまったもんじゃない。
そう反論しようとしたら……
「──ただ、“貰った世界達が平和”に育ってくれればそれで良かったの」
「──っ!?」
そう、しんみりした表情で言われた言葉に、止まってしまった。
「たとえ貰い物だとしてもね。……神様にとって、その世界は可愛いものなの。人間で言うと、我が子のような……いや、血が繋がってないから、ペットに近い感覚かしら?」
「あー……人によっては、大分例えが離れているか、重要度が近いかと争う話題になりそうだな、それ……」
所詮ペットと言う人と、ペットは家族だ、と言い張る人で喧嘩になりそうだ……俺はそう思った。
「だから、いくつもあってもね。どれも、神様にとって大切な生き物……どれ一つ、見逃したく無いのが本音なのよ。出来る事なら、全て健やかに成長して欲しかった……」
「……だから、諦めようとしているユウカを許せなかったのか? 大切にしている世界の一つが、そのまま滅びるから」
「多分、ね……」
……なるほど、ね……
理由としては、一応納得は出来る。が……
「……それでも。心が折れてる女一人を、無理矢理詰み状態なのに攻略に行かせようなんて、どうかしてるぜ」
「そうね、それは同感。休ませることの重要性は分かっているはずよ! それが何でこんなタイミングで……!?」
……そう話していると、セーブポイントが再度光出す。
っは?! ユウカはまだ家に寝ている最中だぞ!? まさか、抜け出して行ったのか!?
そう思っていると……
「……ッチィ」
そこから現れたのは、メタルマンだった。
「メタルマン!? 今度は何があった!?」
「……別に。また死んだだけだ」
悪いが、またガレージを借りる。
そう言ってメタルマンは、すぐに部屋を出ていく。
しかし態度から、どこかまた落ち込んでる様子は察する事が出来た。
「……どうやら、メタルマンも芳しく無い状態のようね。ユウカちゃんほど詰んではいないとは思うけど」
「あいつもか……!?」
すると、再度セーブポイントが光出す。
今度は……
「……うぅぅー、やられそうになっちゃいましたー」
「マホ!」
現れたマホに対して、俺は声を掛ける。
「そっちは何があった?」
「お兄さん! あはは……いえ、大量の敵に囲まれてしまい、どうあがいても逆転できそうにないなと思って、ロードしただけです」
たはは、と頭を掻きながら照れ臭そうにマホは言う。
すると、自分の腕と足ををよく見て……
「良かったあ。折れた腕も足も治ってます!」
「っ!!」
「これでまた頑張れます!! もう一回行って来ます!」
そう言って、マホは部屋を飛び出していった。
まるでなんてことのない表情を作りながら。
……けれど、薄ら諦めを感じさせるような状態で。
「マホちゃんの方も、芳しくないか……」
「…………っ」
俺は、ここまでの様子を見て……苛立ちをしていた。
どいつも、こいつも、みんな……!!
俺は苛立ち……
──ある事を思いつく。
「……なあ、ソラ」
「何?」
「──────って、出来るか?」
「へ?」
俺がとある事を聞くと、ソラは呆けたような顔を一瞬して。
「で、出来るけど……」
「そうか……よし」
それを聞いて、俺はスックと立ち上がる。
「か、カイト……?」
「このまま、ここで俺達がうだうだ悩んでても拉致があかねえ……」
そうして、俺はふーっ……と深い息を吐き、呼吸を落ち着かせる。
そうして、内心一つの誓いを立てて。
「──俺の方から、行動してやる」