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第39話 神は世界を愛す

「ユウカちゃんの世界を救えるのは、ユウカちゃんだけ……他の世界、メタルマンも、マホちゃんも、それぞれの世界は彼らしか救えないの。そう言う人材を選んだ……ううん、“見つけた”筈だから」

「……何?」

「そもそもセーブポイントの貸し出しってね。“その世界の命運を決める重要な人物”を見つけて貸し出してるの。女神が選んだから世界の命運を握ってる訳じゃ無いわ。“重要な命運を握ってるから女神が手助けしてる状態”なの」

「…………」


 つまり、順序が違う。

 ユウカに使命を押し付けているのは女神ではなく、“世界そのもの”が押し付けている状態だと。

 女神は、ただそんな彼ら彼女をセーブポイントでサポートしているだけだと。


「だから、あの子達が本当に諦めてしまったら、それこそその世界の終わりになってしまう。そんな、重要人物なのよ。……この家に来る人たちは、みんな」

「…………」


 言いたい事は、理解出来た。けど……


「なあ。逆に聞くけど、何で世界の命運を女神が気にしなきゃいけねえんだ? 仮に、仮にだが。ユウカの世界が滅んだ場合、あのクソ女神に影響が出るのか?」


 それだったらまあ、あれだけユウカに無理矢理向かわせようとする理由に納得がいく。

 自分に悪影響があるなら、無理矢理にでも何とかしれ貰おうと思いたいだろう。


「……影響は、あまり出ないわね。精々、落ち込む程度かしら」

「落ち込む?」


 そう聞き返すと、ソラはあのね……と、こちらに顔を上げた。


「そもそも世界ってね。最高神様からいくつか承っているものなの。本体も、いくつかの世界を貰った状態で、それを管理している……ユウカちゃん、メタルマン、マホちゃんの世界も、その内の一つよ」

「ふーん……と言う事は、俺の世界もか?」

「この世界? この世界は……あれ? 何だっけ? “確か普通と違った筈”だったんだけど、うーん……だめ、多分本体に記憶消されてる」

「何だそれ?」


 わざわざ記憶を消す必要あるのか、その部分?

 俺の世界が一体何だってんだよ?

 さっきからうーん……と、ソラが唸っていたが、結局その点については分からなかったらしい。


「ま、まあ。その話は置いておいて……世界を貰った神様は、その世界を管理する使命があるの。最高神様からの命で、“最高の世界”を作り上げるためだって……」

「“最高の世界”って?」

「知らない。多分ハッピーエンドか何かを求めれば良いんだと思うんだけど……」


 けど……と、ソラは前置きして。


「……正直、世界を管理する使命とかは、本体にとってはどうでも良いの」

「どうでも良いって……お前……!」


 そんなの、受け持たれた世界にとってはたまったもんじゃない。

 そう反論しようとしたら……


「──ただ、“貰った世界達が平和”に育ってくれればそれで良かったの」

「──っ!?」


 そう、しんみりした表情で言われた言葉に、止まってしまった。


「たとえ貰い物だとしてもね。……神様にとって、その世界は可愛いものなの。人間で言うと、我が子のような……いや、血が繋がってないから、ペットに近い感覚かしら?」

「あー……人によっては、大分例えが離れているか、重要度が近いかと争う話題になりそうだな、それ……」


 所詮ペットと言う人と、ペットは家族だ、と言い張る人で喧嘩になりそうだ……俺はそう思った。


「だから、いくつもあってもね。どれも、神様にとって大切な生き物……どれ一つ、見逃したく無いのが本音なのよ。出来る事なら、全て健やかに成長して欲しかった……」

「……だから、諦めようとしているユウカを許せなかったのか? 大切にしている世界の一つが、そのまま滅びるから」

「多分、ね……」


 ……なるほど、ね……

 理由としては、一応納得は出来る。が……


「……それでも。心が折れてる女一人を、無理矢理詰み状態なのに攻略に行かせようなんて、どうかしてるぜ」

「そうね、それは同感。休ませることの重要性は分かっているはずよ! それが何でこんなタイミングで……!?」


 ……そう話していると、セーブポイントが再度光出す。

 っは?! ユウカはまだ家に寝ている最中だぞ!? まさか、抜け出して行ったのか!?

 そう思っていると……


「……ッチィ」


 そこから現れたのは、メタルマンだった。


「メタルマン!? 今度は何があった!?」

「……別に。また死んだだけだ」


 悪いが、またガレージを借りる。

 そう言ってメタルマンは、すぐに部屋を出ていく。

 しかし態度から、どこかまた落ち込んでる様子は察する事が出来た。


「……どうやら、メタルマンも芳しく無い状態のようね。ユウカちゃんほど詰んではいないとは思うけど」

「あいつもか……!?」


 すると、再度セーブポイントが光出す。

 今度は……


「……うぅぅー、やられそうになっちゃいましたー」

「マホ!」


 現れたマホに対して、俺は声を掛ける。


「そっちは何があった?」

「お兄さん! あはは……いえ、大量の敵に囲まれてしまい、どうあがいても逆転できそうにないなと思って、ロードしただけです」


 たはは、と頭を掻きながら照れ臭そうにマホは言う。

 すると、自分の腕と足ををよく見て……


「良かったあ。折れた腕も足も治ってます!」

「っ!!」

「これでまた頑張れます!! もう一回行って来ます!」


 そう言って、マホは部屋を飛び出していった。

 まるでなんてことのない表情を作りながら。

 ……けれど、薄ら諦めを感じさせるような状態で。


「マホちゃんの方も、芳しくないか……」

「…………っ」


 俺は、ここまでの様子を見て……苛立ちをしていた。

 どいつも、こいつも、みんな……!!


 俺は苛立ち……


 ──ある事を思いつく。


「……なあ、ソラ」

「何?」


「──────って、出来るか?」

「へ?」


 俺がとある事を聞くと、ソラは呆けたような顔を一瞬して。


「で、出来るけど……」

「そうか……よし」


 それを聞いて、俺はスックと立ち上がる。


「か、カイト……?」

「このまま、ここで俺達がうだうだ悩んでても拉致があかねえ……」


 そうして、俺はふーっ……と深い息を吐き、呼吸を落ち着かせる。

 そうして、内心一つの誓いを立てて。


「──俺の方から、行動してやる」


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