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第69話 ダンジョン冒険、女エルフのアイテム

「……と言うわけで、ダンジョンに来たわけだが」

「いい!? 私の前科についてはともかく、言っておくけどね、ここでは私が先輩なの! 経験者! つまり、このダンジョンの危険性についてはよ〜っく分かっているから、私の言う事をしっかり聞くように!! じゃないとあなた達も死ぬわよ、ガチで死ぬわよ!?」


 と、さっきまで意気消沈だったシルフィが気を取り直したのか、俺たちに向かってそのように力強く注意して来ていた。

 まあ、言ってる事自体は文句はないため、俺達は全員大人しく聞いていた。


「了解。じゃあ、まず何に気をつけたらいい?」

「そうね、まずは無闇矢鱈に歩き回らない事。トラップとか作動する恐れがあるからね。それと、猛獣達に注意よ。あいつらの住処にぶち当たったら、囲まれて一巻の終わりよ。あと、ボスと呼ばれる凶悪な猛獣、またはゴーレムとかいるから、そいつらと会ったら真っ先に逃げるように!!」


 ふむふむ、なるほど。

 そうして、俺達はシルフィの警告をコクコクと頷きながら十分聞き続けた。


「さて。それじゃあ分かってもらえた所で、現状把握といくわね」


 そうして、シルフィは古い紙のようなものを取り出した。

 それをよく見えるように俺達に広げて見せてくる。


「それは?」

「これは冒険者達に必需品の道具の一つ。“オートマッピングシート”よ」

「オートマッピングシート?」


 その紙をよく見ると、確かになんらかの地図らしきものに見えた。

 しかし、途中で欠けているように見える。地形の情報が途中で終わっているのだ。


「これはね。一度通った場所は自動的に構造を記録してくれる優れものなの!! こうして、タッチする事で詳細な情報も得られるわ!」

「おいおい、ガチで凄いなそれは!!」


 俺はシルフィの言った事に、凄く驚いていた。

 ゲームで確かに似たような機能を持つシステムがあるが、それが実現化していると言ってもいいだろう。

 しかも見た目紙なのに、タッチ操作で詳細情報など切り替わる事から、見た目に反しスマホに近い操作感らしい。ハイテクの極地と言えるだろう。

 よく聞くと、別にレアアイテムというわけでもなく、冒険者なら誰でも買える代物らしい。

 ちょっと値段が割だがらしいが、それを除いてもかなりの高性能アイテムだ。


「しかもね! これ、一度通った場所なら“敵性反応”の情報も見られるの!! 持ち主にとっての敵を判別してくれる! ほら見て、ここに“青いマーク”が5つあるでしょ。これが私たち。これが“赤いマーク”だと、敵、つまり猛獣やゴーレムって事ね」

「へえー、便利だねえ」

「ふふん、驚きなさい!」


 自慢げなシルフィだが、実際機能がとても凄いからビックリだ。

 ……あれ? と言う事は……


「シルフィ君、ちょっといいかい?」

「何よ? まだ説明が終わってない……」

「赤いマークが敵性反応って事は、そこに書いてある幾つかの赤いマーク、“こっちに接近して来てないかい?”」


 Dr.ケミカの指摘に、は? と声を出すシルフィ。

 色いでマップを見直すと、確かにいくつかのマークが接近して来てる!?


「嘘でしょ!? 1、2の、3……7つ!? 結構な数が来るわね!?」

「どうする? 逃げるかい?」

「……いいえ、この速度だと逃げきれないでしょう。ここで対処するわ!!」


 そう言って、シルフィは背中に背負っていた弓矢と取り出して、準備をし始める。

 そうしながら、俺達に顔だけ向けて。


「あなた達も見てなさい。ダンジョンで戦うと言う事は、どう言う事か」

「なるほど、実例を見せてくれるんだね。ボクも参考になるよ」

「エルフのねーちゃん戦うのか! 楽しみだぜ!」

「……そろそろ来るぞ!!」


 シルフィの準備が終わってしばらくして、グルルァッ!! と声が響く。

 声がした方に振り向くと、そこには狼らしき動物達がいた。

 マップのマークに示された通り、7体が高速で走って来てこっちに向かって来てる!


「見てなさい! “ピンポイント・アロー”!!」


 そうして、シルフィが弓矢を一本放つ。

 その放った矢が、一瞬にして飛んでいき……吸い込まれるように、獣の一匹の額に突き刺さった。

 悲鳴を上げる暇すらなく、当たった獣は倒れていた。


「ふっフッ!!」


 そして、一本だけでは無い。

 2本目、3本目と続けて放ち……その全てが、獣の額を正確に撃ち貫いていた。

 そして……7体全てが、シルフィの矢によって打ち倒されていた。


『おお〜!』


 パチパチパチ、と俺達4人が称賛の拍手をし始める。

 それを見てシルフィは得意げな顔になって、ふふんと鼻息をしていた。

 ユウカが近づいて、彼女に称賛し始める。


「ざっと、こんなもんよ。どんな相手だって、急所を貫けば簡単に倒せるわ」

「あの弓矢、すごい精度だったね。君の技術によるものかい?」

「まあね。エルフの里で暮らしていれば、いやでも上達するわ」

「すごいね。特訓が必須だったりするのかい?」


「いや。娯楽が少なくて、弓矢で的当てくらいしかやることが無くて……」

「思ったより世知辛い理由だね……」


 シルフィは、遠い目をしながらそんな事を呟いていた。

 彼女が里を飛び出したのも、そう言う娯楽が少ないのも原因の一つだったらしい。


「……そんな事は今はいいわよ。さて、解体しないと」


 そう言って、倒した獣達に近づいて、ナイフを構えるシルフィ。

 見ると、見事な手捌きでテキパキと解体を進めていく。

 Dr.ケミカが感心したように声を出す。


「ほう、なかなかの手捌きじゃないかい? 手慣れているねえ」

「まあね。ダンジョンの宝以外に、獣の皮とか肉も十分売れるから、しっかり持って帰らないと」

「しかし、これだけの量を持ち帰るのは大変じゃないかい? 私たちがいるから今回はともかく、ソロで持ち帰るのは物理的に全部は無理では?」


 心配ご無用、そう言ってシルフィはリュックを取り出した。

 あの時家で金塊を持ち帰ろうとしたときに使ってたものだ。


「このリュック、特殊な空間になっていて、見た目以上に物が入るの! “マジックバック”って言って、戦利品を持ち帰るのに、こんな便利なものはないわ!」

「ほう! それはとても便利だねえ! それも冒険者としての必需品かい?」

「まあね! これも高いけど、普通に売ってるわよ!」


 話を聞いていると、なんだかシルフィの世界はアイテムがとても発達しているように思えて来た。

 オートマップしかり、容量拡大リュックしかり、とても便利なアイテムばかりだ。


「さて、これで戦利品の解体は済んだわね。他にもいくつか便利アイテムはあるけど、それはおいおい話していくわ」

「他にも凄いのがあるのか! 楽しみだぜ!!」

「まあ、それは後のお楽しみって事で。先に進むわよ」


 そうして、俺達はシルフィの先導の元、ダンジョンを突き進んでいくのだった……

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