ダンジョンの後半へと、突き進んでいく俺たち。
……だった、が。
『『『ぐぎゃおっ、ぐギャオッ、グギャアアオオオオオオオオオオッ!!!』』』
『わあああアアアアアアアッ?!!』
めっちゃ沢山の猛獣に追われ中。
その数、ぱっと見200体程。
「ちょっとおッ?!! どういう事よこれえ?!!」
「アッハハハハ!!! いやあ、これ多分私が追い払った獣達が、仲間達を連れて戻って来たんだねえ!! いやはや、やはり全部倒しておくべきだったか!!」
「笑ってる場合じゃ無いでしょぉ!? これこのままだとエンドよ、ジ・エンドよ!! だって私、この量で一回死んだんだもの!?」
「それはご愁傷様だったねえ!!」
俺たちの背後に、二百体の獣が迫ってくる始末。
途中でDr.ケミカがいくつかの薬を投げ入れているが、それで怯むのは10数体ずつ。
残りはそのまま追いかけてくる。どう考えても対応の手が足らない。
「困ったね……ボクでも、流石にこの数同時はちょっとキツイな……」
「ユウカ。俺が背負うから、聖剣の詠唱頼めない?」
「それしか方法は無いかな……」
走りながら、俺とユウカでこの状況を切り抜ける方法を見積もっていると……
「こうなったら!! みんな、出てこい!! 召喚、“イフリート・ドラゴン!!”、“フレイム・ドラゴン”4体!! “ウォータードラゴン”4体!! “サンダー・ドラゴン”4体!! “ロック・ドラゴン”4体!!」
『『『GYAAAOOOOOOOOOッッッ────』』』
すると、ショー君が懐からデッキケースを取り出して、そこから大量のカードを一気に取り出した。
それらを掲げてショー君が唱えると、カードから沢山のドラゴン達が!?
「これは……っ?!!」
「何このドラゴンの数!?」
「いやはや、壮観だねえッ!!」
総勢、17体のドラゴン。それらが一堂に並んだ姿に、俺達は全員驚いていた。
「いっけえ! 俺の仲間達!! 全員、なぎ払えッ!!」
『『『GYAAAOOッ────!! GRUOoooooooooooッ────!!』』』
その掛け声とともに、ショー君の呼び出したドラゴン達が猛獣達に突っ込んでいった。
ショー君というただ一人の少年の指示に従っている。その光景は異様だった。
「さらに! “ワイバーン・ドラゴン”を召喚!!」
その言葉とともに、新たなドラゴンが目の前に召喚される。
それはサイズが大きく、羽がデカイドラゴンだった。
「みんな! これに乗ってくれだぜ!!」
「え!? の、乗れるの!?」
「大丈夫!! “イフリート・ドラゴン”とは違って、人に懐きやすいタイプなんだぜ!! 今はみんなが抑えてくれてるけど、念のため距離を取ったほうがいい!! 大丈夫、全員乗れるくらい力自慢なんだぜ!!」
「そっか、分かった!!」
その言葉を信じて、俺たち全員がワイバーン・ドラゴンに乗り込んだ。
全員乗ったことを確認すると、ワイバーン・ドラゴンは雄叫びを上げて、その場から離れていく!
「うっひゃあ! 気分爽快だなあ!!」
「ボク、ドラゴンに乗ったのは初めてだよ!!」
「へへ、どうだぜ! 俺のドラゴン達は最高なんだぜ!!」
俺とユウカが興奮していると、ショー君が自慢するようにそう声を出していた。
しかし、後ろの方でDr.ケミカ達は騒いでいる。
「いやあ、ちょっとこれ落ちそうだねえ!?」
「ちょっと!? 掴む所ないから、ずり落ちそうなんだけど!?」
「あ、悪いんだぜ!? 装備カード、龍装具を発動!! ワイバーン・ドラゴンに装備だぜ!!」
その言葉とともに、ワイバーン・ドラゴンの周囲が一瞬光り、装具が取り付けられた。
人間が複数人乗れるような場所が作られる!
「いやあ、危なかったねえ……」
「あんた、そんな道具まで召喚出来るのね……」
「へへー、他にも“イベントカード”ってものもあるぜ! 必殺技とか出すのに使うんだぜ!!」
そう自慢するように、様々な種類のカードを見せてくる。
モンスターカードの他に、装備カード、イベントカード、トラップカードと言ったものがあった。
俺は気になった事があるから、ショー君に質問し出した。
「なあ、さっきから大量にポンポン召喚してるけどさ。なんか召喚に条件とかあるのか?」
「ルールのあるバトルならあるんだけど、こう言ったフリーの環境だと特に条件は無いんだぜ。ただ、モンスターがやられるとしばらく再召喚は出来なくなっちゃうんだぜ。そうなるとバトルでの使用も出来ないんだぜ」
なるほど、カードゲーマー同士の対戦ならルールはあるけど、それ以外だったら特に制限が無いと。
便利な仕様に、俺は内心とても驚いていた。
「他にも、今回は俺はドラゴンシリーズのデッキで組んでいるけど、他のシリーズも沢山あるんだぜ! 必要だったら言ってくれだぜ、それに合わせてデッキを組んでくるから!!」
「そっか、その時は頼んだ」
「ちょっと、前!?」
ん? そのシルフィの叫ぶような声で振り向くと、ワイバーン・ドラゴンの飛ぶ先の向こうには……
超巨大な、岩で出来たような巨人。頭部には顔がなく、巨大な赤い宝石が一つだけついている。
『Gu────oO────ッ!!』
「ゴーレムよ!! あれがゴーレム!! 生半可な攻撃じゃ効かないわ!?」
「ワイバーン・ドラゴン、逃げろ!!」
その言葉とともに、急旋回するワイバーン・ドラゴン。
しかし、ゴーレムは頭に該当する箇所の巨大な宝石が光ると──
『Go────oO────ッ!!』
そこから、まるで極太のレーザーを放って来た!?
避け切れないか!?
俺は、“マジック・シールドメダル”を用意しようとして……
「トラップカード!! “身代わり人形”!! クリーチャーへの戦闘を一回だけ身代わりするぜ!!」
その言葉とともに、ワイバーン・ドラゴンの横にデフォルメされたようなドラゴン人形がポンッと現れた。
すると、ゴーレムのレーザーはまるで引き寄せられるかのように身代わり人形へと向かっていく。
「攻撃が曲がった!?」
「これが身代わり人形の効果なんだぜ! どんな攻撃も、一回だけ防いでくれるんだぜ! 今の内に、戻ってこい! “イフリート・ドラゴン!!”」
そうして、白紙になっていたカードの一つを取り出すと、そこに赤い竜の絵柄が戻って来た。
そのカードを再度かざし、ショー君は叫ぶ。
「再召喚!! こい、俺の切り札! “イフリート・ドラゴン!!”」
『GYAAAOOOOOOOOOッッッ────!!』
そうして、俺たちの目の前に、あの俺のリビングを燃やしたドラゴンが再び現れた。
ただし、リビングで見た時より遥かに迫力がアップしているように見える!
「イベントカード・“イフリートフレイム!!” イフリート・ドラゴンの攻撃力2500を、一回だけ二倍にする!! いっけえ、イフリート・ドラゴン!!」
その言葉とともに、イフリート・ドラゴンは口を開けて、キュインキュインと甲高い音を立てる。
そして……
「“イフリートフレイム、発射ぁッ!!”」
『GOOOOOOOOOッッッ────!!』
高圧縮された、それでもなお拡大な炎が、ゴーレムに向かって放たれる!!
岩に対して効き目が薄いと思われる炎だが、それでもゴーレムに巨大な衝撃を与え。
『Gu────Ga────ッ?!!』
ゴーレムの体の上半身が破損、崩壊し。崩れていく。
その上を、ワイバーン・ドラゴンが悠々自適に飛んで行った。
「やったぜ!! お疲れ様だぜ、イフリート・ドラゴン」
『GYA────Oo────!』
その言葉とともに、イフリート・ドラゴンは頷いて……カードに戻っていった。
「す、すっごいじゃない!? あなた、あのゴーレムをこうも簡単に倒すなんて!? あれも私が死んだ原因のやつよ!?」
「そうなのか!? 仇を取れたようで何よりだぜ!!」
シルフィとショー君がそう会話して、驚きと照れを発生させていた。
あ、そうそう。とショー君が言い始め。
「さっき召喚に条件は無いって言ったけど、倒されなくても10分たったら強制送還されちゃうんだぜ。だから、そろそろ降りる準備をしないと。悪いけど、ワイバーン・ドラゴン今回デッキに1枚しか入ってないんだぜ」
「えー? じゃあ、他のドラゴンに乗せてもらうことは?」
「出来なくも無いけど、他のドラゴンだとすぐ機嫌が悪くなって危険なんだぜ」
じゃあ、止めといたほうがいいな。
俺はリビングの惨状を思い出しながら、ショー君の提案を受け入れることにした。
「今回俺もカード20枚くらい使っちゃったから、後半分位。そこまで頼りきりにはしないで欲しいんだぜ」
「マジか……分かった」
やっぱり、そこまで頼りきりに出来る便利な技じゃ無いんだなと、俺はそう思った。
何はともあれ、窮地は脱出することが出来た。
俺達は、そのままワイバーン・ドラゴンで進められるところまで、進んで行ったのだった……