……あれから数日。
俺達はシルフィの世界の宝を、少しずつ持ち運んでいた。
俺は俺の取り分として、溶けた金属の一部をそれなりの量貰っていた。
あまり量が多すぎると、自分の世界で売るとき怪しまれるし、これくらいがちょうど良い。
Dr.ケミカやショー君、ユウカも少しずつ貰っており……
「正直、私の世界だと換金も何も無いからねえ、状況的に。……まあ、触媒にはなるだろうから、ありがたく貰っておこうかね」
「スッゲー! 手元に金があるぜ! ピッカピカー!」
「ボクも貰ったけど、カイト、必要なら言ってね。君に上げるから」
とまあ、それぞれこんな感じの反応だった。
そして、肝心のシルフィの反応はと言うと……
「そうよ! ロードよ!? こっちの家にお宝を持ってきて、その状態でロードするの! そうすれば、お宝無限に増殖出来ないかしら!?」
とまあ、よくそんな発想気がつくな、というアイデアを思いついていて、早速実行していた。
が……
「うわあああん!! なんでよ?!」
「あちゃー、お宝ごと元に戻っちゃったねえ」
とまあ、残念ながら失敗していた。
どうやら別の世界に物を持ち込んだ状態で、それが戻らない様にするためにはセーブが必要らしい。
つまり、“無限増殖は無理”とのこと。
今まで俺もユウカ達の世界からお裾分けをもらっていたが、あれらももしセーブされていなかったら消えていたらしい。
みんな渡した後ちゃんとセーブしてくれていた様だった。
そんなわけで、シルフィは大人しく残ったお宝をせっせと運んでいるとの事。
まあ、流石にあの量は一人でダンジョンの外まで持ち運ぶのは無理があるので……
「それなら、“カイトの家を倉庫代わり”にしたら? それで街に戻ったあたりでマーカーを付け直したら、一気に運べるわよ?」
と言うソラの一声に、シルフィは大いに喜んでいた。
そして本当に遠慮無くシルフィはお宝を俺の家に持ち運んでいる。
まあ、それでも俺の家に一度で入りきらないから、後日何往復かはするつもりらしい。
マップも埋めていたから、荷物のない状態で往復ならそこまで手間じゃ無いとの事。
そんなわけで、俺たちのダンジョン探索は一応の終わりを迎えたのだった。
そして……
☆★☆
「オレのターン!! 二体のクリーチャーを生贄に捧げて、イフリート・ドラゴンを召喚だぜ!!」
「カイトくーん、お昼ご飯はまだかい?」
「カイト手伝ってえ!? まだ今日の分のお宝を持ち運べていないの!」
「一気になじんだな、お前ら……」
現在。俺の家に3人が居座る様になっていた。
なんかすごくデジャビュな光景。
「ちょっと待てって。今ショーとデュエル中なんだから」
「カイトのにーちゃんが対戦相手になってくれて嬉しいぜ!! 遊び相手が増えたんだぜ!」
「おやおや、すっかり懐かれているねえ……まあ、私も人の事言えないか」
「ねえ、私はあ!? もう正直誰でもいいから手伝ってほしいの!! ショー、あのドラゴン出してえ! 持ち運んでくれるやつ!!」
そんな感じで、元から少なかった俺自身の時間がさらに短くなる様に。
ユウカ、メタルマン、マホとは別の3人組が出来上がる様になっていた。
「はいはい。今ちょうど終わった所だから、先にご飯な。宝の持ち運びはその後という事で」
「私は唐揚げで頼むよ」
「俺はハンバーグ!」
「カツサンド頂戴!」
「せめて一個に纏めろやお前らよお!?」
全く……そんなこんなで、ひとまずキッチンに向かおうとすると……
「カイト君」
「カイトのにーちゃん!」
「カイト!」
そんな声で呼びかけられて……
『──これから、よろしく!』
「……ああ、わーったよ」
元気よく、そう頼まれて。
こうして、我が家に新しいメンバーが居つく様になったのだった……