「えー……重大な事実が判明しました」
俺はソラ、ユウカ、マホを目の前に並べて、そう切り出した。
リビングのテレビの前で俺たちは集まっている。
「カイト、重大な事実って何よ? それに何よ、その敬語」
「これを見てください」
「ん? 何だい、これ?」
「これもしかして、小型のカメラですか?」
俺が手のひらに乗せて差し出した物を見て、近い世界の住人であるマホがいち早く気づいた。
「そう、カメラです。正確には、小型の監視カメラです」
「なんでそんなものがここにあるのよ?」
「この間リビングを直すついでに、俺のいない時の様子がわかるように設置いたしました」
俺のその言葉に、ソラが目を見開いた。
震えた声で言葉を話し始める。
「なんて事をするのカイト!? そんなのプライバシーの侵害じゃない!? 何黙ってそんな事をしたの!?」
「ソラ様、いったいどうしたんですか? 何をそんな動揺を……」
「ユウカちゃん気づいて!! こいつ乙女の敵になるような事をしたのよ!? ねえ!!」
「別に、リビングくらいなら問題ないんじゃないですか? お風呂場とか自室に設置されたわけじゃないですし……」
ソラの動揺の意味が分からなかったユウカとマホが困惑の声を出す。
まあ……
「そうだな。けどなソラ。“夜中にお菓子をこっそり取りに行くお前の姿がバッチリ写ってたんだけど”」
「…………てへ♪」
「ソラ様?」
それを指摘した瞬間、作り笑いでソラは誤魔化した。
その顔をユウカは真顔で見つめる。
こいつ、最近大人しくなったなと思ったら、俺とユウカの目の無い夜中に好き勝手やってやがった。
さっきの動揺はそれが原因だろおい。バッチシ写ってたからな。
それを指摘すると……キリッとした表情になって。
「記憶にございませんね」
「記録にございますんだよ」
「上手い! 座布団一枚!」
「やかましいわ」
俺はソラの頭をペシっとはたいた。
漫才やってんじゃねーんだぞおい。
「まあ、ソラの事は一旦置いておいて」
「そのまま仕舞い続けてくれない?」
「後で取り出すから。それより……」
そう言って俺は、カメラで録画した映像をテレビに映した。
時間は既に調整済み。そこには……
「あれ? “メタルマン”さん?」
「メタルマンだね? 最近姿を見せないと思ってたのに」
そう、暫く見ていなかったメタルマンがそこにいた。
ちょうどセーブポイントの目の前に現れた場面だった。
「時刻は真夜中。俺たちが完全に眠った後だったな。見ての通り、おそらくロードした直後だろう」
その後、画面内のメタルマンはすぐに立ち上がって、窓のほうに向かって行った。
おそらく直ぐに自分の世界に帰ったのだろう。
「で、これだけならメタルマンがただロードしてた、で終わる話なんだが。別の日も見ると……」
そうして俺は、監視カメラの映像を早送りにする。
昼の俺たちの様子が高速で流されて、その後……
「あら? またメタルマンじゃない?」
「本当ですね。さっきの次の日ですか?」
そう、またメタルマンが夜中の時間にロードしていた。
前日のように窓から元の世界に帰っている。
「で、別の日……」
また早送りすると……
「またメタルマンさん!?」
「さらに別の日……」
「また彼かい!?」
「別の日ー」
「ちょっと!? 毎日ロードしてるじゃないあいつ!?」
はい、というわけで。俺は姿勢を直してキッパリ宣言。
「メタルマンのやつ、“毎回夜中だけロードして家にやって来てやがった”……」
『なんで!?』
マホ達の驚きの声が同時に重なる。
うん、意味分かんないよな。
「何やってるんですかメタルマンさん!? あれ? ていうかこっちの世界で夜中の時だけロードするってできるんですか?」
「そう言えばそうだね? 確か“時間帯が違う”んじゃ無かったっけ?」
そう。実を言うと、俺のこの世界と、ユウカ達の異世界は“時間帯”が違っていたりする。
と言うか、ロードおするたびにセーブした時の時間まで戻るから、時間帯がずれるずれる。
そのせいで異世界同士の時差が生まれており、マホ達も一時期時差ボケが酷かった。
こっち昼なのに、私の世界夜なんですよー、と愚痴ってたっけ。
そんな事を思っていると、ソラが答えを出す。
「まあ、ロードでリセットしない限り1秒の時間の流れは同じだしね。こっちの世界で腕時計か何かで時刻を合わせて、それを向こうの世界に持っていけば、こっちの世界にロードした時の時間が分かるわ」
「あ、そっか。ロードって死亡した時だけでなく、任意でも出来ますもんね。それなら合わせようと思えば合わせられますもんね」
マホがポンっと両手を叩いて、感心したように言う。
けど、直ぐに疑問の顔に戻り……
「でも、結局なんでこっちの世界の夜中でロードするんでしょうか? メタルマンさん。わざとやってるって事ですよね?」
そう、その理由がわからない。
直ぐに思いつくのは……
「単純に、“俺たちに顔を合わせたく無い”って所なんじゃねーの?」
「だね」
「えー!?」
と言うか、それくらいしか理由思いつかない。
カメラ映像を見返した所、ソラみたいに夜中の間に俺の家を物色しているわけでも無さそうだし。
直ぐに元の世界に戻っているし、完全にこっちの世界で人に合わないようにしているだけだこれ。
「なんでそんな事する必要があるんですか!?」
「大方、カイトの家にある物を壊したりとかして、顔を合わせづらいとか?」
「ソラじゃねーんだから、それは無いだろ」
俺はソラの言葉をバッサリ切った。「どう言う意味よそれえ!?」と喚き立っていたが、無視をする。
と言うか、実際それが正しかったとしても、メタルマンなら絶対正直に言うだろ。
すまん、壊した。とか、あんまり悪い事したと思わないような軽い口調で。
実際家のガレージの壁壊した時もそんな感じだったしアイツ。
アイツがそんな事気にするような繊細なやつじゃねえ。
「……“詰みセーブ”に入ってる?」