ユウカのポツリと呟いたようなその声に、俺たちの視線が彼女に集まった。
「メタルマンのあの感じ、ボクが追い込まれた時と似ているような気がして……」
「つまり、炎の四天王の時とにたような感じか?」
「多分。あそこまで時間がないレベルで追い詰められてるって感じでは無さそうだけど……何かしら、大きな問題にぶち当たっているんだと思う」
映像の中のメタルマンを見ながら、ユウカは自分の感じた事を話し出した。
詰みセーブの経験者だ、何かしら似たような物を感じ取ったのかもしれない。
「それでも、メタルマンさんがその事を隠す理由がありません! 言ってくれたら、この間みたいに私たちが助けに……」
「“それ”が嫌なんじゃねーの? だって、メタルマンだぜ。『これは私の世界の問題だ、君達には関係ないだろう』って言い出すだろアイツ」
「うわっ、言いそう」
俺の言葉に、全員があー……と声を出す。
その様子がありありと思い浮かんだらしい。
「けど、メタルマンさんはユウカさんの世界に助けに来てくれたじゃないですか!! だったら別に、自分も助けを求めても問題ない筈です! その権利があります!」
「それはそれ、これはこれって言うわよ絶対。自分の事棚にあげるタイプよアイツ」
「あう……」
ソラの言葉に目をギュッとするマホ。
どうやら否定できないらしい。
「それで、どうするんだいカイト。メタルマンの事をこのまま放っておくわけにも……」
「でも、実際メタルマンさんが何も言ってこない以上、私達から話しかけても素直に聞いてくれるかわかりませんよ?」
マホの言葉に、正直同意する。
こうして考えてみると、やっぱめんどくせーなメタルマン。
あの頭でっかちな固いプライドがありありと想像出来る。
「──“一旦、放っておく”って言うのも手よ」
「ソラ様?」
すると、ソラが意外な提案をし出して来た。
「実際、アイツが本当に詰みセーブしているか分からないし、もうしばらく様子を見る。と言うのも手よ。アイツ自身本当に参って助けを求め目に来るのを待つか、最悪、私の本体が本当にヤバくなったら警告に来るでしょ。ユウカちゃんの時みたいに」
「ふむ……」
ソラの言葉を冷静に聞いて、俺は一理あると感じとる。
実際、俺たちのやろうとしている事は余計なお世話に近い。
ユウカの時は、本当にユウカの精神がやばそうだと思ったから強引に助けに向かったが、映像の中のメタルマンは比較的そこまで追い詰められているようには見えない。
もう少しだけ様子を見ると言うのも手だろう。
ただ……
「ただ?」
「──正直、“毎日夜中の家に侵入されてる”と言う行為自体が、普通にいい気分しないから止めて欲しいんだけど」
『あー……』
俺の言葉に、全員納得の声をあげる。
だってさあ……普通に嫌じゃね?
夜寝ている時、知り合いとは言えいつの間にか家に入られて、出ていくやつ。
盗みとかしてないとは言え、なんか普通に嫌。
例えばホテルに泊まっていたりとかしても、自分の止まっている部屋にいつの間にか誰か入ってるって事実を知るだけで、十分嫌だぞおい。
この家に住んでるならまだしも、ユウカと違ってメタルマン普通に自分の世界で暮らしてるからなあ……
「それは、まあ……気持ち、分かるかもです」
「だろ? と言うわけで、あくまでメタルマンを助けるためじゃなく、俺の安心な睡眠を返してもらうために行動しよう。これならお節介じゃないだろ」
「カイトらしいね」
クスッとユウカが小さく笑う。
「ボクの時も、確か理由が“気に入らないから”、だっけ」
「別にいいだろ。今回も、ある意味気に入らないんだから」
うん、実際知っちまった以上、気になって普通に眠れねえし。
俺自身のためにも行動する理由は十分だ。
「それじゃあ、どうします? 行動するのはいいとして、夜中まで待ってメタルマンさんに話しかけますか?」
「普通に話しかけても、さっき言ったように取り合ってくれない可能性も高いけどね。どうしようか……」
「あっ! いいこと思いついた!」
そう言って、ソラがはーい、と手を上げた。
その顔はニヤリと悪戯を思いついた悪ガキそのもので。
「普通に話しかけるのもあれだし、どうせなら驚かせちゃいましょう! そうすれば動揺して、隙を見せるかも!」
「……ちょっと失礼」
俺はそれを聞いて、ちょっと嫌な予感がしたから、こっそり念のためセーブクリスタルに触れるのだった……