「ソラーッ! ユウカーッ! マホーッ!?」
見知らぬ場所で一人になった俺は、あたりに大声でみんなの名前を呼びかけたが、一切の反応無し。
やべえ、完全にみんなと分断されちまった!?
「くっそ、マジでやべえ!? メタルマンのやつ、なんつー罠仕掛けてやがったんだ!?」
今思えば、メタルマンの部屋で最初に襲いかかってきたロボ達。
あれは侵入者を倒す事を目的としていた訳じゃなく、最初から時間稼ぎがメインだったのか!?
その時間でワープに必要なデータを収集、解析完了次第特定の場所にワープさせて一網打尽にするために!!
「ギリギリ壊せたのは良いけど、そのせいでみんなバラバラか……!」
確か最後のアナウンス、座標データが破損とかなんとか言ってたな!?
と言う事は、この場所は指定外の場所に飛ばされたって事か?
くそ、正直みんなとバラバラにされる位だったら、あのまま大人しくつかまっていた方がマシだったか……?
「……まあ、しゃーない。切り替えて行こう。考えろ、俺が次にするべき行動は……」
1つ。“ロードする”。
みんなすでにバラバラになってしまった状態だ。一旦俺のセーブデータでロードして出直すと言う選択もある。正直、普通にありだが……
「考えようによっては、チャンスとも言えるんだよな、この状態。全員散らばった状態で、“あちこちの情報収集が出来る”」
無論、俺一人だけが飛ばされていて他3人はまとまって行動している、という可能性はある。
しかしその可能性を差っ引いても、最低二方面異常から見知らぬ土地を探索できるのは大きい。
ロードはいつでもできるし、ギリギリまで粘って情報収集するのは良いだろう。
ただ、戦えないソラが一人という可能性が高いが……まあ、それはそれで頑張ってもらおう。普段があれだし、うん。
よって、この案は一旦保留。
「という事は……」
2つ。“このまま探索する”。
これが最善かな? 他のみんなを探しながらこの場所のことを調べていく。そしてメタルマンに何があったのかを探し出す。
これが一先ずの方針か。
「まあ、一応……」
3つ。“メタルマンを直接探して、正直に話してもらう”。
うん……元々こっそり調べに来る予定だったから、本末転倒感がすごい。
一旦無しで。
4つ。“わざと捕まって、メタルマンに助けて貰う”。
他のみんなと合流出来るかもしれないから、ありっちゃありだけど、捕まっちゃった奴が拷問とかされるかもしれないから、一旦無しかなー……
あと、そうなったら“メタルマン見捨てて来そう”。しばらくそこで反省してるんだな、とか言って。
「うん……やっぱりしばらくは自力で探索するのがベストだな、うん」
というわけで、2つ目の方針で決定。
あとはどこから探索するかだが……
「まあ、とりあえず適当に歩いてみるか……」
特に目星があるわけでも無し。そう思って、俺はとりあえず適当に歩き出した。
パッと見、ここはどこか路地裏っぽい雰囲気を感じる。
大きな道に合流したら、そこから周囲を観察しやすいだろう、と思って……
────で。30分後。
「迷ったあぁぁ──……っ!!」
そこには迷子になって、項垂れている俺の姿が。
しゃーねえじゃん! だってさっきから似たような道ばっかりだし、光景全然変わんねえし!!
土地勘も地図もないのに、こんな所歩けるか!?
いや、地図……!?
「くっそ、こんなことならシルフィからあの地図借りておくべきだったなあ……! あの自動マッピングしてくれるやつ!」
あれがあれば、見知らぬ土地でもかなり助けになっただろう。俺は凄く後悔した。
まあ、こっちに来るタイミング的に仕方なかったし、無い物はしゃーない。今ある物でなんとかするしかない。
今あるものと言えば、ユウカのナイフと、マホのメダル。そして……
「メタルマンがくれた“フロート・ブーツ”か……」
仕方ない……“空飛ぶか”。
正直あまり目立ちたく無かったけど、この状況になった以上しょうがない。
空から周囲を見渡して、現在地をよく知ろうと思う。
俺はブーツを起動して、姿勢を整える。
「ふー……、ヨット!」
俺はフロートブーツの出力を上げて、一気にゴウッ! っと、上昇する。
ここまで一気に空を駆け上がる事は無かったから、凄く気分が良い!
今まで戦闘時くらいしか使ったこと無かったからな。単純な飛行の為の空を飛ぶって、実は初めてかも。
しばらく上がって、建物がいくつか下の方に見えるくらいの位置になった。
「そろそろ良いかな? さて、と……」
そうして、俺はあたりを見渡す。
ふむ、幾つかビルみたいな建物の密集地帯。ここが俺のいた場所か。
遠くには……比較的低い建物と、公園か?
別の方向は……お、海が見える! 綺麗だなあ、俺海数回しか行った事なくて……
「……ん?」
俺はふと、違和感を感じた。海の見え方だ。
ここは結構高い場所だから、砂浜か波際の防波堤か何かが見えてもおかしく無いはず。
けど見た感じ、何も無い……“というか、動いてる? 海が?”
んー?
気になった俺は、一気に横方向に飛んで、海のところまで行って見る。
だんだん近づいて見ても、やっぱり何も無い。というか……
「は……? これ、もしかして」
俺は、海のところに高度を下げようとする。
十分着陸するくらい下がったと思ったら……“海が遥か下だ”。
「……っ!? おいおいこれまさか!?」
俺はふと、後ろを振り返る。
土地だと思っていたそこは……“浮かんでいた”。
「おいこれ浮島……いや、動いてる!?」
今まで俺がいた場所を、改めて全体を見渡して見ると……
「これ、船……いや、“戦艦”か!?」
それは、巨大な戦艦だった。
見たことも無いくらい大きく、人の住めそうな建物もいくつか建っている、浮かぶ戦艦。
それが俺のいた場所だった。
「スッゲエ……これが、メタルマンの世界」
俺はそのスケールのデカさに、改めて圧倒されていた。
流石異世界、予想以上の物体に心底驚いた。
自分の世界ではあり得ない巨大な建造物……
「……ひとまず、降りるか」
一目見れて、一旦地上……いや、戦艦の上に戻ろうとして、船の淵ギリギリに当たる部分に着地した。
全体は見れた、あとは適当な目立った建物の方にでも向かおうとして……
その時だった。
「──おうい、そこのお前! ちょっといいか?」
俺は、誰かに声を掛けられたのだった。