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第97話 はぐれました

「ソラーッ! ユウカーッ! マホーッ!?」


 見知らぬ場所で一人になった俺は、あたりに大声でみんなの名前を呼びかけたが、一切の反応無し。

 やべえ、完全にみんなと分断されちまった!?


「くっそ、マジでやべえ!? メタルマンのやつ、なんつー罠仕掛けてやがったんだ!?」


 今思えば、メタルマンの部屋で最初に襲いかかってきたロボ達。

 あれは侵入者を倒す事を目的としていた訳じゃなく、最初から時間稼ぎがメインだったのか!?

 その時間でワープに必要なデータを収集、解析完了次第特定の場所にワープさせて一網打尽にするために!!


「ギリギリ壊せたのは良いけど、そのせいでみんなバラバラか……!」


 確か最後のアナウンス、座標データが破損とかなんとか言ってたな!?

 と言う事は、この場所は指定外の場所に飛ばされたって事か?

 くそ、正直みんなとバラバラにされる位だったら、あのまま大人しくつかまっていた方がマシだったか……?


「……まあ、しゃーない。切り替えて行こう。考えろ、俺が次にするべき行動は……」


 1つ。“ロードする”。

 みんなすでにバラバラになってしまった状態だ。一旦俺のセーブデータでロードして出直すと言う選択もある。正直、普通にありだが……


「考えようによっては、チャンスとも言えるんだよな、この状態。全員散らばった状態で、“あちこちの情報収集が出来る”」


 無論、俺一人だけが飛ばされていて他3人はまとまって行動している、という可能性はある。

 しかしその可能性を差っ引いても、最低二方面異常から見知らぬ土地を探索できるのは大きい。

 ロードはいつでもできるし、ギリギリまで粘って情報収集するのは良いだろう。

 ただ、戦えないソラが一人という可能性が高いが……まあ、それはそれで頑張ってもらおう。普段があれだし、うん。

 よって、この案は一旦保留。


「という事は……」


 2つ。“このまま探索する”。

 これが最善かな? 他のみんなを探しながらこの場所のことを調べていく。そしてメタルマンに何があったのかを探し出す。

 これが一先ずの方針か。


「まあ、一応……」


 3つ。“メタルマンを直接探して、正直に話してもらう”。

 うん……元々こっそり調べに来る予定だったから、本末転倒感がすごい。

 一旦無しで。


 4つ。“わざと捕まって、メタルマンに助けて貰う”。

 他のみんなと合流出来るかもしれないから、ありっちゃありだけど、捕まっちゃった奴が拷問とかされるかもしれないから、一旦無しかなー……

 あと、そうなったら“メタルマン見捨てて来そう”。しばらくそこで反省してるんだな、とか言って。


「うん……やっぱりしばらくは自力で探索するのがベストだな、うん」


 というわけで、2つ目の方針で決定。

 あとはどこから探索するかだが……


「まあ、とりあえず適当に歩いてみるか……」


 特に目星があるわけでも無し。そう思って、俺はとりあえず適当に歩き出した。

 パッと見、ここはどこか路地裏っぽい雰囲気を感じる。

 大きな道に合流したら、そこから周囲を観察しやすいだろう、と思って……



 ────で。30分後。



「迷ったあぁぁ──……っ!!」


 そこには迷子になって、項垂れている俺の姿が。

 しゃーねえじゃん! だってさっきから似たような道ばっかりだし、光景全然変わんねえし!!

 土地勘も地図もないのに、こんな所歩けるか!?

 いや、地図……!?


「くっそ、こんなことならシルフィからあの地図借りておくべきだったなあ……! あの自動マッピングしてくれるやつ!」


 あれがあれば、見知らぬ土地でもかなり助けになっただろう。俺は凄く後悔した。

 まあ、こっちに来るタイミング的に仕方なかったし、無い物はしゃーない。今ある物でなんとかするしかない。

 今あるものと言えば、ユウカのナイフと、マホのメダル。そして……


「メタルマンがくれた“フロート・ブーツ”か……」


 仕方ない……“空飛ぶか”。

 正直あまり目立ちたく無かったけど、この状況になった以上しょうがない。

 空から周囲を見渡して、現在地をよく知ろうと思う。

 俺はブーツを起動して、姿勢を整える。


「ふー……、ヨット!」


 俺はフロートブーツの出力を上げて、一気にゴウッ! っと、上昇する。

 ここまで一気に空を駆け上がる事は無かったから、凄く気分が良い!

 今まで戦闘時くらいしか使ったこと無かったからな。単純な飛行の為の空を飛ぶって、実は初めてかも。

 しばらく上がって、建物がいくつか下の方に見えるくらいの位置になった。


「そろそろ良いかな? さて、と……」


 そうして、俺はあたりを見渡す。

 ふむ、幾つかビルみたいな建物の密集地帯。ここが俺のいた場所か。

 遠くには……比較的低い建物と、公園か?

 別の方向は……お、海が見える! 綺麗だなあ、俺海数回しか行った事なくて……


「……ん?」


 俺はふと、違和感を感じた。海の見え方だ。

 ここは結構高い場所だから、砂浜か波際の防波堤か何かが見えてもおかしく無いはず。

 けど見た感じ、何も無い……“というか、動いてる? 海が?” 

 んー?


 気になった俺は、一気に横方向に飛んで、海のところまで行って見る。

 だんだん近づいて見ても、やっぱり何も無い。というか……


「は……? これ、もしかして」


 俺は、海のところに高度を下げようとする。

 十分着陸するくらい下がったと思ったら……“海が遥か下だ”。


「……っ!? おいおいこれまさか!?」


 俺はふと、後ろを振り返る。

 土地だと思っていたそこは……“浮かんでいた”。


「おいこれ浮島……いや、動いてる!?」


 今まで俺がいた場所を、改めて全体を見渡して見ると……


「これ、船……いや、“戦艦”か!?」


 それは、巨大な戦艦だった。

 見たことも無いくらい大きく、人の住めそうな建物もいくつか建っている、浮かぶ戦艦。

 それが俺のいた場所だった。


「スッゲエ……これが、メタルマンの世界」


 俺はそのスケールのデカさに、改めて圧倒されていた。

 流石異世界、予想以上の物体に心底驚いた。

 自分の世界ではあり得ない巨大な建造物……


「……ひとまず、降りるか」


 一目見れて、一旦地上……いや、戦艦の上に戻ろうとして、船の淵ギリギリに当たる部分に着地した。

 全体は見れた、あとは適当な目立った建物の方にでも向かおうとして……


 その時だった。


「──おうい、そこのお前! ちょっといいか?」


 俺は、誰かに声を掛けられたのだった。



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