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第98話 メタルマンの親友

「っ!??」


 バッと、俺は声を掛けられた方向に振り向いた。

 そこには、機械の整備士みたいな格好をしていた人物が立っていた。

 工具箱を片手に持って話しかけてくる。


「あんた、今空を飛んでいただろ? どうやって飛んでいたんだ? ていうか、こんなところで何してんだ?」


 純粋に質問して来ているような雰囲気に対し、俺は一時固まっていた。


 ──この男は、ウチに来るメタルマン達以外で、初めての現地異世界人。

 つまり、初めての現地人との交流だったからだ。


 今まで俺が異世界に行った時、ユウカの世界では炎の四天王という人外。

 シルフィの世界では獣やゴーレムといった動物無機物。

 純粋な現地人との遭遇はこれが初めてだ。


 だからこそ、なんて答えれば良いか一瞬詰まる。


「ん? どうした?」


 まさか、馬鹿正直にあなたから見たい世界人です、なんて言えるわけも無く。

 あまり目立ちたく無い以上、当たり障りのない会話をするしかないのだが、どう答えれば良いかわからない。


 いつも我が家に見知らぬ異世界人が来た場合は、ソラが対応して説明してくれていたが、これは状況が違う。

 どうしよう……


「……いや、なんでもない。ただちょっと辺りを見渡したかったから、空から見てただけだ」


 とりあえず、本当のことを言う。

 下手に嘘をついて挙動不審になるよりは、遥かにマシだろう。

 敬語で話した方がいいかと一瞬悩むが、相手もタメ口だったからそれに合わせておこう。俺はそう思った。


「それで、空を飛んでいた方法は、このブーツのおかげなんだけど……」

「あ──ッ?!」


 突然の大声に、俺はビックリする。

 目の前の男が俺の足元を見て声を上げたらしい。


「その靴、メタルマンが作ったやつじゃないか!? それを持ってるって事は、あんたもしかしてメタルマンの知り合いか!?」

「え? ああ、うん。そうだけど……という事は、もしかしてあなたも?」

「おう! 俺の名前は“マックス”って言うんだ! よろしくな!」


 自分を指差して自己紹介するマックス。

 まさかメタルマンを知ってる人といきなり遭遇するとは。

 メタルマンの世界とは言え、すごい偶然だ。


「あんたの名前は?」

「ああ、俺の名前はカイト。よろしく」

「カイトか、いい名前だな。よろしくな!」


 そうして、俺達は互いに握手を交わした。

 最初はどうなるかと思ったけど、割とやっていけそうか?

 俺はそう思って内心少しホッとした。だが……


「いやー、まさかメタルマンの知り合いがいるとはな! あいつあんな性格だから、仕事仲間としてはともかく、親しい奴があんまり出来ねえんだよなあ」

「あはは、まあ確かに」


 マックスの言葉に俺は軽く同意する。

 あいつ、知り合いからも同じように思われてたのかよ。

 それがちょっと笑ってしまって。


「あんたはどうやってメタルマンと仲良くなったんだ? 正直興味深いぜ」

「えーっと……」


 さて、また答えづらい質問だ。どうしよう……


「……俺の家にメタルマンがやって来て」

「あいつから? マジか、なんで?」

「俺の家、金属とかいくつかあるから、それを素材としてメタルマンに上げているんだ」

「素材を!? そうか、通りでメタルマン、最近装備の新調が多いと思ってたんだ。なるほどな……」


 マックスは、顎に手を当てて納得したように頷いていた。

 よし、これも切り抜けたか……


「ところで、あんたはどこ住みだ? メタルマンと親しい割には、俺は見たこと無いし、ひょっとして別の艦住みか? ワープゲートで来たのか?」

「あー、まあそんな所」


 少なくとも、俺の家はここの艦の上じゃ無い。

 ある意味、言う事は間違っていないだろう。

 それを聞くと、マックスははへ〜……と声を漏らし始め……


「なるほどなー……失礼、ちょっといいか?」

「うん?」


 そう言って、マックスは懐から何か端末を取り出して、少し操作したかと思うと……俺の方に向けた。

 するとその機械が、ピッと音を鳴らす。


「反応無し、と……はあ? じゃあますます分からねえな」

「どうした? というか、今何やった?」

「ああ、単純に“あんたがインベーダーなのかどうか調べていた”だけだよ」

「インベーダー?」


 侵略者って意味? いやあれ、どっかで聞いたな?

 確か……ああ、そうそう。メタルマンが初めて俺の家にやって来た時、なんかそんな事言ってたっけ。

 確か、世界中に突如現れた、宇宙からの“機械生命体”だっけ?

 それで陸を追われたとかなんとか、あーだんだん思い出して来た。


 なるほどなるほど……ちょっと待て。それを俺に向けて確かめられたという事は……


「あー、まあいいや。もうまだるっこしいことは無しだ」


 すると、急にマックスが頭をガシガシと掻きながらこっちを睨みつける。

 その目は、さっきまでのお人好しのような柔らかさは消えていて……


「単刀直入に聞く。お前……何者だ?」


 そうして、上手く行ってたと思っていた会話は、“大失敗”していたという事にようやく気づいたのだった。



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