【ユニオン・バース 第13番艦】
それがこの船の名前だった。
……かつて、人類は地上に暮らしていた。
平和な日常を送る最中、突如として奴らはこの星にやってきた。
それは、有機生命体では無かった。
それは、機械の体だった。
それは、意思疎通が出来なかった。
……それは、突如として人間を襲い始めた。
人類を襲い、彼らの生存圏を奪い、土地を略奪をして行ったのだ。
──“侵略者/インベーダー”
いつしか奴らはそう呼ばれ始めた。
人類は、インベーダーから自らの土地を守るため、抗おうとした。
しかし、既存の技術体系では、宙からやってきた奴らに当初対抗出来なかった。
抵抗虚しく、人類の生存圏を30%まで減らされてしまったいた。
残った人類はなんとか生き延びようと、体制を整えようと逃げ出した。
地上では無く、空へ。
幸い、少なからずインベーダーを撃破した際、奴らの技術体系を少しばかり盗む事が出来た。
皮肉にも、人類の科学技術は急速に発展したと言えるだろう。
そのおかげで、完成した。空を飛ぶ船。空中戦艦が。
それが【ユニオン・バース】シリーズだった。
43機の大小様々な、人類を逃す方舟が作り上げられたのだ。
しかし、あえてこの船に乗らずに、まだ残った地上を守る者達もいた。
この船に乗り込む者。残り土地を未だ守る者。
二種類の人間がいたが、どちらの意思も尊重し、それぞれの道を歩み始める。
それから月日は流れ。
人類の生存圏は15%まで減らされて。
43機あった戦艦は、29機まで減らされて。
どちらも、困難な道には代わりなく。
しかし道は違えど、どちらも目的は同じ。
──いつか、地上の全てを侵略者/インベーダーから取り返す。
その目的の為に、今日も人類は侵略者に争い続ける……
☆★☆
「──というのが、大まかな歴史だ。分かったか、異世界人君?」
「はへー……なるほどなあ」
俺は、マックスからもたらされた説明に、関心の声を上げていた。
だからこの場所は船……戦艦で浮かんでいたのか。
かつて、人類が空へと避難した側。その時の空中戦艦の一つがこれだと。
インベーダーから生き延び、対抗する為に。
「この船は戦艦であると同時に、人類の保護施設でもある。一般人、戦闘員はもちろん、農業員とかもいて、農作物などを作る場所もあるんだぜ」
「へー……」
だからマンションみたいな建物もたくさんあったのか。
元々人が暮らす事を目的とした船だから。生活しやすいような工夫がされていると。
「こうして、俺たち人類は生き延びたわけだが……インベーダーの奴らはそれを見逃すほど甘くは無い。当然、空に逃げた戦艦達を追い落とす奴らも現れた。現に、さっきの話で説明した通り何機か既に撃墜されている。今この時代でも、だ」
マックスは大仰な身振り手振りで説明してくれている。
その姿は、今の時代に生きるものとして歯痒さを感じているようだった。
「それでも、いつもって訳じゃ無い。数ヶ月単位で平和が続いていることだってある。だが……」
「もしかして、今厳戒態勢なのって……」
「ああ、この所インベーダーが襲いかかってくる頻度が高くなってる。週に、2,3度のペースだな。あまりに頻度が高すぎる。原因は不明だが、落ち着くまでは、その警戒状態のままってわけだ」
なるほど、メタルマンがあまり顔を合わせてくれなかったのはこれが理由か?
あまりに頻度が高すぎて、その対応に忙しかったと。
アイツのことだ、俺達に助けを求めるより、自分の世界の事だから一人で先になんとかしてみようと足掻いてる最中だったんだろうな……
「話を戻そう。インベーダーの奴らは戦艦を襲うようになった。当然、人類はそれに抗おうとするが、如何せん技術、ボディ、戦力、全てにおいて劣勢だ。再び人類は追い込まれた……」
だが……と、マックスはここからが違うと言いたいように付け加える。
「人類を追い詰めすぎた結果なんだろうな。逃げ延びた人類の中で、特殊な力を持った奴らが現れた。“ミュータント”だ」
「“ミュータント”?」
これは完全に初めて聞いた単語だ。
けど、確かアメコミ系の漫画とかでよく聞くような?
「“ミュータント”は、サイコキネシスだったり、怪力だったり、炎を出したり、体から特殊な粘液を出したりと、“およそ科学的に説明し切れない力を持った奴ら”のことだ。そいつらが人類の中で生まれるようになって、その人達を中心にインベーダーに対抗出来るようになっていった」
「へー。でも、なんでそんな人達が急に産まれ始めたんだろ?」
「一説によると、追い込まれた人類が危機的状況によって、遺伝子に眠っていた特殊な力を司る部分が目覚めやすくなったんじゃ無いかと言われている。それで、特殊な人間が産まれやすくなったんじゃ無いかって話だ」
なるほど、いわゆるアメコミ系でよくいるヒーローみたいな奴らか。
てっきり科学だけが発達した世界だと思ってたけど、不思議な力を持った奴らもいるんだな。
「環境によって人数はバラバラだが、平均して各戦艦の中に十数人はいるらしいぜ。どんな力に目覚めるかは分からねえが、そいつらが中心となって防衛しているんだとか」
「へー……あ。と言う事はもしかして、メタルマンも“ミュータント”の一人って事? あいつめっちゃ戦えるもんな」
メタルマンの戦いぶりは、よく知っている。
ファーストメンバーでの初めての顔合わせの時の喧嘩や、炎の四天王の時の戦闘。
そのどちらでもメタルマンはよく戦っていたのを覚えている。
俺から見て、頼りになる飛行アタッカーだ。
だから当然、メタルマンもその“ミュータント”ってやつかと思っていたんだけど……
「……あいつから聞いていないのか?」
「へ?」
「────メタルマンは、普通の人間だ。“ミュータント”じゃ無い」