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第103話 凡人のヒーロー

「──メタルマンは、普通の人間……?」


 俺はカイト。

 ……その言葉は、俺に取って予想外の衝撃だった。

 そんなの……いや、と俺は頭を振りかぶる。


 確かによくよく考えてみると、メタルマンの戦闘方法はパワードスーツだよりだ。

 中身の本人の身体能力が、それほど求められているかと思うとそうは思えない。いや、最低限の動きは必要かもしれないけど……それでも、人外レベルのものが必要とは思えない。

 つまりメタルマンは、開発能力があるだけの凡人って事……?


「インベーダーには、よっぽど訓練された軍人か、“ミュータント”くらいしか基本対応出来ない。アイツは……メタルマンは、正直軍人としての身体能力は“並”だった」


 マックスは、空を見上げながら言葉を続けていた。


「それが嫌だったんだろうな……アイツは、自分の手で戦う手段を作り出した。ジャンク品や、インベーダーの撃破パーツから、いろんなものを再利用してまで、作り上げた」

「それが、あのパワードスーツ……?」

「そうだ。あれこそメタルマンが自力で作り出した戦う手段。ま、今度は逆にスーツを扱う才能が無いと、使いこなせないって代物らしいけど」


 あと、単純に必要素材が多すぎて、量産品には向かないとか。

 そんな事をマックスは付け足していた。


「アイツは、すげーやつだよホント……ミュータントで無いにも関わらず、普通の人間が、インベーダーに対処出来る力を身につけたんだからな」

「はー……」


 あ、だからメタルマンからミュータントって言葉を聞いた事無かったのか。

 アイツ自身、ただ自力でメカを作り上げていただけだから。


「しかも、見ろよこれ。この変わった形の銃。こいつはメタルマンが支給してくれたものなんだぜ。一般兵でもある程度インベーダーに戦えるようにってな」


 そう言って、マックスは腰に付けていたホルダーから特殊な形の銃を見せてくれた。

 既存の銃を改造して、出力を揚げたらしい。

 その顔は自慢の道具を紹介する子供のような笑顔だった。


「アイツがすげーのは、一人だけ強くなるわけじゃない。その技術を、他のみんなに伝えて戦力を底上げする事だ。選ばれたものだけじゃ無い、多くの人材がインベーダーに対抗出来るようになったんだ……」


 なんでも、この技術はこの今いる艦だけでなく、他の艦にも電子データとして設計図を送っているらしい。

 そのおかげで、他の艦でもメタルマンの名前は有名なんだとか。

 へー、アイツもスッゲーやつだったって事なんだな……

 俺の家に来る異世界人の一人と思っていたけど、流石あの駄女神に選ばれただけはある、と言うことか?

 俺は改めてそう思った。


「だから、俺はアイツを尊敬する。親友として、人類の地上を取り戻す目的を進めさせたキーマンとして」

「そっか……そうだな。アイツは凄いな」

「……で、“そんな重要人物の知り合いと宣う自称異世界人の不審者”が、目の前にいるわけだが……」

「あー……」


 そうして、話は戻り、俺への対応へとなっていた。

 そっかー、そんな人類にとって重要人物の一人の知り合いを自称する不審者かー。

 うーわ、俺でも怪しむだろうから何も言えねー。


「ま、とりあえずそっちの話も後で色々聞かせろよ。言い訳なりなんなり、お前の目的がなんなのかとかな」

「はあ、分かったよ……とりあえず、どこまで行けば良い?」

「まあ、割と距離があるからな。もうしばらくは歩いてもらうぞ」


 うーい、と俺は適当に返事をして、そのまま歩き続ける。

 まあ、めんどくさくなったら直ぐにでもロードすれば良いか。

 そう思って、深く考えずに付いていく。


 しっかし、メタルマンのやつスッゲー存在だったんだな。

 今度家に来た時、もう少し豪華な食事くらい奢ってやってもいいかな?

 この世界に影響を与えていると言われてる人物に対し、この扱いが正しいかどうかは分からないが、俺はなんとなく俺なりにメタルマンを労ってやろうかと思っている。



 ────そんな事を考えていると。



 ウーッ!! ウーッ!!


 っと、分かりやすいサイレンの音が鳴り響く。


「っ、なんだ!? これ何の音!?」

「っ、また襲来か!」

「襲来って!?」

「決まってるだろ、インベーダーだよ!!」


 そうしてマックスは、銃を取り出してあたりを警戒し出す。

 すると、続けてアナウンスが入る。


『D-43にて、インベーダー発見。D-43にて、インベーダー発見。該当区域の住人は、直ちに避難して下さい。繰り返す……』


「D-43、だってッ!?」

「え? よく分かんないけど、それ不味いの?」


 マックスがアナウンスを聞いて目を見開いているのを見て、俺はそう質問した。

 するとマックスはとても慌てた様子で。


「不味いって言うか、D-43って“今通ってるここ”……!?」


 その言葉に、は? と言う前に。


 ──突如降って来る、金属の塊。それも、複数。


「っ何だ!?」

「嘘だろ、もう目の前に!?」


 俺は、ユウカのナイフを構えて準備を整える。

 すると、目の前の金属の塊がガシャガシャと音を立てて、形を変えて行く……


 それは、まるで金属で出来た“蜘蛛”のような造形だった。

 足先が刃で出来ているように鋭く、頭部と胴体が四角形で構成されている。

 見て分かる通り、金属の生命体と印象付けるような造形だった。

 そいつらが、一斉にしゃがみ込み──


「「「◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆────ッ!!」」」


「っ、逃げろぉ!?」


 とても人語には聞こえない、甲高い音を鳴り響かせながら、金属生命体……インベーダー達が、襲いかかって来た──


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