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第104話 インベーダー、襲来

 ──別の場所。


「よっと……ふう、やっと登り切れた」


 ボクはユウカ。

 今ようやく鉄製の崖を登り切った所だった。

 全く、酷い目にあった……いくらボクが勇者として鍛えているからとは言え、長時間聖剣とナイフを使ったロッククライミングなんて、初めてだよ。

 おかげで腕がプルプルさ。明日は久しぶりに筋肉痛かな……


「さて、ここは何処だろうか……」


 ボクが最後に覚えているのは、メタルマンの部屋からここに転移させられた事だ。

 強制ワープされたとは言え、おそらくここもメタルマンの世界なのだろう。

 あたりを見渡してみると、一見普通の広場のような場所が見える。

 カイトの世界でよく見た、公園、に近いような感じだ。


「ここも公園の一種なのかな? もしかして、カイトの世界とそこまで変わらない? 浮島らしき場所ではあるけれど」


 何度も言うが、ボクはまだこの場所が空を浮かぶ船だと言うことは知らない状態だ。

 そんな事を検討しながら、あたりを探索しようとすると……


 ウィーン、ウィーン、と微かな音が聞こえて来る。


「うん? ……あ!?」


 音の発生源に目を向けると……メタルマンの部屋で見つけた、金属の塊!!

 確か、ロボットって呼ばれてたっけ? が、そこら辺を動いていた!


【──パトロール中。パトロール中。パトロール中】

【──サーチ、サーチ、サーチ】

【──探索中、探索中、探索中】


「こんな場所にも!? まさか、メタルマンの設置したやつ!?」


 ボクはそう思った。まさか、メタルマンに関係無い、この世界で当たり前のように存在する見廻りロボットと言うものだとは思わず、とっさに警戒をする。

 再度襲われるか、と懸念したが……


【──問題無し、問題無し、問題無し】


「……? 襲って、こない? さっきのものとは、違うのかな?」


 メタルマンの部屋で、ボク達に向けたような武器を取り出さないロボット達を見て、ボクは恐る恐る警戒を解く。

 正直よく分からないけど、ロボット達はボクのことをそこまで気にしていないようだ。

 寧ろ、道端のゴミなどを積極的に拾っており、ただただ綺麗好きのように思えて来た。


「うーん……まあいいや。今はカイト達の合流を優先しよう」


 襲ってこないなら、それに越した事は無い。

 そう思って、ボクは逸れたカイト達を探そうとする。


 ボク自身がこの場でロードして、一旦カイトの部屋に戻るって手もある。

 そうすれば、また直ぐメタルマンの部屋まで戻れるだろう。

 けれど、またメタルマンの部屋に入ってトラップが作動しないとも限らない。

 今は情報収集に専念して、だめそうだったらロードで退却する方針として行動しよう。


 そう決めて、歩き出そうとする。が……


 ウーッ!! ウーッ!!


『G-12にて、インベーダー発見。G-12にて、インベーダー発見。該当区域の住人は、直ちに避難して下さい。繰り返す……』

「何の音!?」


 突如放たれたその音声と言葉に、ボクは驚きの声をあげる。 

 すると、ガシャガシャッ、と金属が擦れる音が鳴り響く。

 見ると……


【──警戒!! 警戒!! 警戒!!】

【──インベーダー!! インベーダー!! インベーダー!!】

【──排除!! 排除!! 排除!!】


「っ!? ロボット達が、武器を構え始めた……!?」


 やっぱり、ボクを狙って!?

 そう思ったけど……どうやら違うらしい?

 ボクに照準を定めず……空に向けている?


 ──すると、空からフワリと何かが舞い降りた。



「♢────────────────♢」


「何……あれ……?」


 それは、機械の体だった。

 しかし、人間大の姿をしていた。

 近いものだと、メタルマンのパワードスーツとか言ってたやつだろうか?

 あの姿に似ていると言えば、似ていると思う。


 違うと言えば、メタルマンは赤に対して、目の前のアイツは真っ黒。

 そして、大きな違いは……“6枚の黒刃による羽”。

 それが背中から生えている。

 まるで、“黒い天使”……パッと見て、そう思った。

 そして、両手に付いた腕と一体化した二対の大きな刃。


「♢◆◆────◆◆────♢」


 すると、そいつが何らかの声? のような音を発し始め……


「♢────◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆────ッ!!♢」


「────ッ?!!」


 突如、ビリビリとした激しい威圧感。

 アイツが叫ぶだけで、一歩後ろに下がってしまうようだ。

 この威圧感、方向性は違えど、似たような強さは知っている。


 それは、あの炎の四天王に負けずとも劣らずといった強さで────


【──危険!! 危険!! 危険!!】

【──排除!! 排除!! 排除!!】

【──掃射!! 掃射!! 掃射!!】


 すると、周りのロボット達が、一斉に武器をソイツに向けて掃射しまくる。

 ガガガガガッ!! っと、弾丸が連続で当たる音が響いていく。

 しかし……


 ガキキキキキィッ!!


「全く効いていない……全部、装甲に弾かれてる!?」


 アイツの金属の体を貫くには、程遠い威力だったらしい。

 まるで雨にでも打たれている程度の動作で、ゆっくりとロボット達に近づき……


【──危険!! 危/

【──排除!! 排/

【──掃射!! 掃/


 全てを、一刀両断した。


「────ッ!!」


 それを見て、ボクは警戒心を極限まで上げた。

 そいつは、ボクにゆっくり振り向いて……


「♢◆◆────◆◆────◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆────ッ!!♢」


 再度、強大な威圧感を放って来たのだった。

 ボクは聖剣を構え、対峙する────


 ☆★☆


「きゃああああああ!? なんかいっぱい来ましたー!?」


「「「◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆────ッ!!」」」

「「「◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆────ッ!!」」」

「「「◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆────ッ!!」」」


 私はマホです!! なんか逃げてたら、明らかに毛色の違うロボットに追われています!!

 これもメタルマンさんの部屋にあったセキュリティのロボットなのでしょうか!? 分かりません!!

 ちなみにこの時点の私だと知るわけないのですが、こいつらがインベーダーらしいです!!

 そんなことより、めっちゃ沢山追われています!!


「どーしましょう!? これ戦っていいんでしょうか!? これ壊したらまた大問題になりますかねえ!?」


 メタルマンさんの部屋のものを壊して、あのような出来事になっちゃいました!!

 今度も壊していいのか、器物破損で訴えられないかどうか心配です!!

 でも、このまま逃げ続けるのも限界です!!


「ええい、ままです!!」


 私は急ブレーキを掛けて、後ろから追っかけて来るロボット(インベーダー)と対峙します!

 すみません、申し訳ないですが壊します!!

 問題になったら、メタルマンさんにロードしてもらいます! ごめんなさい!!


 こうして私は、ロボット(インベーダー)を止めるために行動を移し始めたのでした……



 ☆★☆


「────だーれかー。ターすけてー……」


 私はソラ。

 壁尻状態になって長時間。

 相変わらず誰もこない。

 もう半ば諦めて、棒読みの叫びを上げている。


 まだ私の助けは、来ない────


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