「聖アリギエーリ高等女学校の洋食は本当の『西洋料理』だからね。日本人の味覚には合わないさ」
もりもり食べるすざくを楽しそうに見ながら、
「なんだろう――旨味というやつかな。鰹節とか昆布とかそういったもので感じる味覚。化学の世界でも研究が進んでいるようだけどね。もし、旨味の調味料ができたらどんな食べ物でも美味しくなるかもしれない」
「じゃあ、デザートにしますか」
テーブルに運ばれてくるのは、白いこんもりとした山――アイスクリームである。冷蔵設備がまだ未発達な時代、氷菓子は贅沢の象徴である。まして、その材料が牛乳と砂糖とあっては――
ドキドキする胸を抑えながら、そっとスプーンを差し込もうとした――次の瞬間テーブルが跳ねた。
チュン!という衝撃音と、光。気がつけばすざくはスプーンを抱えたまま、
ぎゅっと
『狙われた』と。
数分後、レストランの中はざわついていた。二人の座っていたテーブルには穴が空き、その周りには焦げも見える。
明らかに、『銃弾』の後である。口に運ぶ機会を逸したソフトクリームが床にベタッと転がる。
「電話を貸してほしい」
軍服姿の
うんざりとした顔で、受話器を置く
不安そうな顔のすざく。そんなすざくの顔を
「大丈夫。だいたい予想はついている」
なるべく建物の影を歩く、二人。
「あいつは高いところから狙っている。大丈夫。狙われているのは僕だから」
また、地面が跳ねる。
間違いない。狙撃されているのだ。この帝都東京の繁華街の中で――
「跳弾や流れ弾で一般の人が怪我をしては大変だ。元凶を早速捕まえさせてもらう」
「こんなことされる――心当たりがあるの?」
すざくの問に、
「ロシアに居た頃から、しつこく僕を狙っていた魔法少女さ。名前はユーリヤ=スヴォーロフ。別名、赤い