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第40話 第二章エピローグ

 ベッドに横になる二人の少女。一人は唯依ゆよりであり、もう一人はユーリ。

 陸軍の附属病院に運び込まれた二人。カティンカの襲撃により深手を負った唯依ゆよりは、すぐに手当を受ける。人並み外れた耐久力と回復力に医官は舌を巻く。それもそのはずである。彼女は『魔法少女』であるのだから。

 一方ユーリの方は外傷は全くない。ただ、変身を解いた後ただ眠り続けていた。

唯依ゆよりさまも大丈夫です。ユーリさまの方は......多分エネルギーを回復しているのでしょう。寝ることによって」

 そうやさかは隣に立っているすざくに告げる。

 そっと唯依ゆよりの額に触れるすざく。

 すざくは感じた――唯依ゆよりが『大丈夫』と心のなかでつぶやくことを――


 どこまでも続く、白い地平線。春が近いとは言えシベリアは極寒の地である。それを下目に見ながら、空を行く――カティンカ=クンツェンドルフであった。

 部下は一人もいない。あのユーリの『大砲の皇帝ツァーリ・プーシュカによって一掃されてしまった。そして、カティンカの身にも大きなダメージを与え――

 しかし、カティンカはニヤける。痛みに身をこらえながら、小さく奥歯を振動させる。

 それは電磁魔法による超長波通信。モスクワにある赤軍諜報部に事の顛末を伝える。

『赤軍特別参謀カティンカ=クンツェンドルフ発。敵白軍所属ユーリヤ=スヴォーロフの攻撃を受け、日本派遣魔法少女特別工作部隊『赤い真珠クラースナヤ・ジェームチゥク』は小官を除き全滅せり。しかし敵の誦祭記『大砲の皇帝ツァーリ・プーシュカ』を見極めることに成功。今後会敵した際は――』

「みんな、殺してあげる」

 一段と口を歪ませ、そう吐き捨てるカティンカ。

「まずは、あのいまいましい反革命分子そしてそれに味方する日本の魔法少女。あの二人を倒せば、ロシア全土はトロツキーさまの支配するところとなる!そして世界革命を――この世界に革命の動乱を引き起こす!」

 額から血が一筋伝う。それをカティンカは舌でそっと拭い取る。

 血の味。それは彼女が一番、好むものである。

「まだ足りぬ。この程度の動乱では。欧州大戦が終わったとは言え、いまだ世界にはいくらでも動乱の火種は残っているはず。われら『動乱の魔法少女』の宿命として、火種を大火にせんことを――」

 宙に浮かびながら、すっと右手を上げるカティンカ。

 その声の響きはシベリアの大地に響き渡った――


 第2章 新たなる魔法少女たち【完】

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