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第19話 DAY14②

「ねぇねぇ次、あれ乗ろうよ!」


海南さんが指差したのは横にあるスライダー。さっきから「キャー」と声が聞こえてきていたから気になっていたのだろう。


「いいな、それ。じゃあ俺は普通の方で。」

「私と楓ちゃんは渓谷の方に行こうかな?」

「いいねそれ!早く並ぼ!」


きいと海南さんが走り出す。しばらくして「いてっ」と聞こえてきたからコケたのだろう。自業自得だ。


「私は少ない方。」


フラフラと歩き出した熊野さんが消えていく。プールの中を見れば、もう誰もいない。奏はもう行ったらしい。


「桜はどうする?」

「私、こういうの苦手なんだけど、多分下集合よね。階段降りるのは面倒臭いし。久志、一緒に滑らない?」

「別にいいけど。」

「じゃ、行こ!」


桜は俺の手を引いて、いや、拘束して列に並ぶ。長さを見る限り15分ほどだろうか。少し前にきいたちが見えて、向こうもこちらに気づいたのか、手を振ってきた。もちろん手を振り返す。あと、薄々気づいていたが、さっきから周りの野郎どもの視線が痛い。俺たちのグループが美男美女揃いだからだろうか。俺以外は。


「「ギイャアァァァ〜!」」


聞き馴染みのある声が聞こえてくる。多分きいたちが今滑っているのだろう。見たところあと数組で俺たちの番だ。


「どっちが前に座る?」

「久志、前で。前の方が多分怖いから。」

「そうだな、じゃあ前乗るぞ。」


自分たちの番になって、2人乗りであることを伝える。体重制限があるが、俺も桜も細いので問題なくパスした。俺が前で桜が後ろになるように座る。係員の合図で滑り始めた。


「キャーーーー!」


後ろで桜が叫んでいるのが聞こえる。左右に大きく揺れるタイプなので、スピードこそ出ないが、それでもかなりの速度は出ている。正直少し怖い。だけど、楽しさの方が勝っているからか、いつの間にか笑っていた。


 下にたどり着く。浮き輪を置いて、他のみんなを探す。売店の近くにいた。


「遅ぇぞ、ほら、アイス!」

「悪ぃな、奏。何円した?」

「あとでいいから。それより時間やばくねぇか?」


近くの時計を見れば12時前。確かにやばいかもしれない。


「じゃあ、着替えて入り口前集合な。」

「後でね〜。」


シャワーを浴びてまた解散。ササッと着替えて、ロッカーに預けていた荷物を取り出し、入り口前で待つ。夏の日差しがジリジリと照りつけてきて、俺の体を蝕んでいく。入り口の方を眺めていると桜たちが出てきて、こちらに手を振っている。俺たちは小さく振り返して、荷物を取り出すのを待った。


「おまたせ!お昼はどうするの?」

「ここじゃ高いから、移動してからだな。公開後すぐだからできる限り早く行かないと、席が埋まっちまう。」


最寄りの枚方公園駅に急いで移動して、丁度入ってきた準急淀屋橋行きに乗り込む。昼間だから車内は閑散としていて、俺たちは横並びに座った。


「何時からの見る?」

「今行ってすぐのやつは、多分席空いていないから、この16:15からのやつかな?」

「じゃあ、まだ時間あるね。とりあえず大日着いてから、チケット買って、お昼ご飯食べよ。もうお腹ペコペコだよぉ。」


話しながら乗っていると、萱島に着いたので乗り換え。各停に乗って、門真市駅で降りる。今から乗る大阪モノレールまでは連絡通路があって、行き交う人は多い。はぐれないようにしながら改札を通り、ホームに上がる。3分ほど待って、モノレールが入ってきた。始発駅なのでもちろん人はいない。また横並びに座り、発車を待つ。ここから大日までは1駅。同じ側のドアが開いて下車する。目的のアオンモールは目と鼻の先にあるので、正面の入り口から入った。


「確か、シネマは1番奥のところにあるから。」


近くのエスカレーターで4階まで上がり、また奥の方に歩く。連絡橋を渡って目的のアオンシネマに着いた。


「チケットは…ここか。ワンピの…6人の。席は横並びの方がいいよな。」

「モチロン!」

「じゃあ、1番後ろの席で。みんな高校生でいいよな?」

「当たり前だ!」

「じゃ、高校生と。非会員の現金払いで…皆の衆、英世を出せぇい!」


全員から1000円を徴収。精算機に入れて発券されるのを待つ。


「空いてて良かったね。」

「これで空いてなかったら、私の家で過ごすことになったかも。そしたらカレンが来て…あぁ良かった。」


熊野さんが何やら肩を撫で下ろしている。


「あれ、音羽ちゃんやないの!こんなとこで何してるん?」


えっと…誰だ?

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