「ウェーイ!プールだぁ!」
朝っぱらからきいの元気な声が木霊する。
「はぁ、プールだぁ。」
「そんなこともあるって。明日からのプールが楽しくなるかもよ。」
「そういうもんか?」
奏は…まぁしょうがないか。ひとまずお疲れ様。
今日は近くの遊園地のプールに来たで…おま!有名なところだから人は多い。園長を探してみたけれど、まぁいるわけないか。客層は子供連れが結構多め。こういう人達は下のプールに集まっている。
「着替えたら、上集合ね。」
「後でな〜!」
一旦解散して更衣室へ。手早く着替えて戻ってきた。女子たちはまだ来ていないみたいだ。
「奏、先行っとくか。」
「そうだな。はぁ、何で15日も連続でプールに入らないといけないんだ。」
「水泳部の宿命だ。諦めな。」
話しながら歩いていると、プールにたどり着いた。こっちは高台にあるプール。人こそいるものの、見晴らしはとてもいい。リゾートのプールとは言えないが。
とりあえず水に膝下を入れる。冷たい感触がふくらはぎにまとわりついて、気持ちいい。
「あぁ、これこれ。毎日味わっている感触。遊びのプールだからって変わるもんじゃねぇんだな。」
「そっちは仕事だろ。」
「そうだけどよ。やってみたら分かるわ。毎日水に触れていると、どうなるか。プールにすら喜びを感じない。」
「可哀想に。」
そう言って水の中に入り、1度潜る。浮き上がってみると、身震いしそうになるほど涼しかった。
「冷たくて気持ちいいぞ、入ってみろ。」
「おう、あぁ、確かに。いつものプールよりは冷たくて気持ちいいな。」
奏は肩まで浸かって一息つく。風呂場のおっさんか!お前は!
「おうおう、お二人さん、先楽しんじゃってんのぉ。」
「おう、やっと来たか。」
ここで女子たちと合流。水着はイメージ通り。桜は白のビキニで、きいはワンピースっぽいやつ。海南さんはレモン色のビキニ、熊野さんはラッシュガードを着ているので、中身は分からないが、全員満点だ。
「さてここで問題です。ここに来るまでに全員合わせて何回ナンパされたでしょうか?」
「知らんけど、まぁ4回。音羽ときいが1回ずつで、桜が2回かな?」
「おい、奏、私は?」
「ナンパされてないだろ?間違ってるか?」
「にゃろーーー!」
奏は海南さんに足で踏んずけられて、沈められている。バタバタと手足をもがいて足を払い除けて、顔を上げた。
「殺す気か?」
「すまんすまん。んで正解は、なんと10回でしたー!音羽と私ときいが2回ずつ、桜が4回です!パフパフ〜!てことで、私が言わんとしてることわかるよね。ナンパ避けよろしくね!」
「「えぇ....」」
「おら男子たち!今も桜に熱い視線を送っている輩がいるかもしれんぞ。頑張れ頑張れ!」
バシャ
気づけば奏が海南さんに水をかけていた。悪い顔をしている。
「にゃろーーー!」
バシャンと大きな水飛沫を上げてプールに飛び込んだ海南さんは、奏の口めがけて水をかけ続ける。俺たちはそれを横目に見ながら借りた浮き輪でぷかぷか浮いていた。