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第21話 DAY15

ジリリリ、ジリリリ。


「ああぁぁぁ。」


ジリリリ、ジリリリ。


「んあぁぁぁ。」


ジリリリ、ジリリリ。


「むぎゃあぁぁぁ!」


最近つくづく思う。なんで目覚ましはこんなにうるさいのか。その爆音には何回も助けられたけどさ。ちゃんと起きたのに、最後のワンコールが要らねぇんだよ。そんなこと考えても、機能なんてそうそう簡単に変わるわけないしな。人生は諦めも肝心か。


 バキバキになった体を無理矢理動かして下に降りる。


「おはよ、バカ兄。」

「おはよ、杏。桜は?」

「まだ出てきてないみたい。」


夏休みに入ってからはこういう風景が多い。朝、リビングに降りると、テレビを点けながらスマホを触っている杏が1人。今までと何ら変わらない風景。桜が来てからは現実とは思えない生活が続いているので、たまにはこういう休息も必要かもしれない。


 ぬるめの水で顔を洗う。寝癖を軽く直して、歯を磨く。水でゆすいで、リビングに戻る。


「何食う?」

「朝からピザってのも乙だよね。」

「確かに。でもピザ生地ないからピザトーストにするぞ。」

「具材は任せる。あっ、ここでスキルを打って、よっしゃあぁ!」


それは人に物を頼む態度かね、杏さんや。俺がそんなこと言ったら放り出されるのはわかっているけど。


 5枚切りのパンにピザソースを塗る。その上にパプリカと種の部分を取って刻んだトマトを乗せて、チーズをかける。調味料入れから胡椒と岩塩を取り出して、少しかけてトースターの中へ。2分焼いた後、上火にして1分弱。チーズに焦げ目がついたら取り出して、粉末バジルとはちみつをかける。


「出来たぞ〜。」

「うい。」


杏はスマホをローテーブルに置いて、マグカップを取り出す。コーヒーは各自で淹れて、椅子に向かい合わせに座った。


「「いただきます。」」


サクッ。みょーん。むしゃむしゃむしゃ。ごっくん。


「この塩とはちみつの感じ。最高!」

「お気に召したようで何より。」

「さすが、うちの家の料理担当だね!」

「褒めても何も出ねぇぞ。」

「ケチ。」


久しぶりに杏とはこんなに長く過ごしているのではないか。


「杏、水泳は楽しいか?」

「楽しいよ。」

「それは良かった。」

「でもちょっと怖いかな?だってバカ兄みたいにキックの打ち方間違って、膝怪我したくないし。そういえば、杏が水泳部入ったの、バカ兄が怪我した後なのに、よく反対しなかったね。何で?」

「何でって、そりゃあ、お前が泳いでいる姿が楽しそうだったからだけど。まあ、正直反対したかったけど、俺の事情で妹のやりたいことやらせないのはなんか違うだろ。」

「そうだね。ありがとう、お兄ちゃん。」


なんか、久しぶりにゆっくりとした朝だ。

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