ジリリリ、ジリリリ。
「ああぁぁぁ。」
ジリリリ、ジリリリ。
「んあぁぁぁ。」
ジリリリ、ジリリリ。
「むぎゃあぁぁぁ!」
最近つくづく思う。なんで目覚ましはこんなにうるさいのか。その爆音には何回も助けられたけどさ。ちゃんと起きたのに、最後のワンコールが要らねぇんだよ。そんなこと考えても、機能なんてそうそう簡単に変わるわけないしな。人生は諦めも肝心か。
バキバキになった体を無理矢理動かして下に降りる。
「おはよ、バカ兄。」
「おはよ、杏。桜は?」
「まだ出てきてないみたい。」
夏休みに入ってからはこういう風景が多い。朝、リビングに降りると、テレビを点けながらスマホを触っている杏が1人。今までと何ら変わらない風景。桜が来てからは現実とは思えない生活が続いているので、たまにはこういう休息も必要かもしれない。
ぬるめの水で顔を洗う。寝癖を軽く直して、歯を磨く。水でゆすいで、リビングに戻る。
「何食う?」
「朝からピザってのも乙だよね。」
「確かに。でもピザ生地ないからピザトーストにするぞ。」
「具材は任せる。あっ、ここでスキルを打って、よっしゃあぁ!」
それは人に物を頼む態度かね、杏さんや。俺がそんなこと言ったら放り出されるのはわかっているけど。
5枚切りのパンにピザソースを塗る。その上にパプリカと種の部分を取って刻んだトマトを乗せて、チーズをかける。調味料入れから胡椒と岩塩を取り出して、少しかけてトースターの中へ。2分焼いた後、上火にして1分弱。チーズに焦げ目がついたら取り出して、粉末バジルとはちみつをかける。
「出来たぞ〜。」
「うい。」
杏はスマホをローテーブルに置いて、マグカップを取り出す。コーヒーは各自で淹れて、椅子に向かい合わせに座った。
「「いただきます。」」
サクッ。みょーん。むしゃむしゃむしゃ。ごっくん。
「この塩とはちみつの感じ。最高!」
「お気に召したようで何より。」
「さすが、うちの家の料理担当だね!」
「褒めても何も出ねぇぞ。」
「ケチ。」
久しぶりに杏とはこんなに長く過ごしているのではないか。
「杏、水泳は楽しいか?」
「楽しいよ。」
「それは良かった。」
「でもちょっと怖いかな?だってバカ兄みたいにキックの打ち方間違って、膝怪我したくないし。そういえば、杏が水泳部入ったの、バカ兄が怪我した後なのに、よく反対しなかったね。何で?」
「何でって、そりゃあ、お前が泳いでいる姿が楽しそうだったからだけど。まあ、正直反対したかったけど、俺の事情で妹のやりたいことやらせないのはなんか違うだろ。」
「そうだね。ありがとう、お兄ちゃん。」
なんか、久しぶりにゆっくりとした朝だ。