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第39話 DAY32

 昨日はバカ兄がどっか行ってたみたいだから、私も1人旅行してみよ!ということで、初めて伏見稲荷に来てみた!伏見稲荷までは京阪電車で京都方面にまあまあ行ったところにあるので、思ったよりは近かった!


 まず驚いたことは駅が赤い!もう鳥居を連想させるこのデザインが、京都に来たんだなぁって思わせる。


 本殿でまずすることといえばお参り。五穀豊穣、商売繁盛の神様として有名だが、お願いしといて無駄なことはないだろう。平穏な日々を祈願して有名な千本鳥居の方に向かっていった。


 鳥居と鳥居の隙間から日光が射し込んで、幻想的な風景が広がっている。


「1、2、3、4…」


1本ずつ数えながら、少しずつ階段を登っていく。少しずつ汗が出てきて、足にも疲労感が溜まってきた。


「少し、休憩するか。」


鳥居にもたれて立ち止まって、持ってきたお茶を飲む。体に染み渡っていく感じがして心地いい。


「ココカラ、ドレクライデツキマスカ?」


観光客らしき外国人に声をかけられる。カップルだろうか、男女で手を繋いでいた。


「About one hour and a half.」

「Oh,thank you!」


2人は手をヒラヒラと振って、上に登って行った。


「私もそろそろ。」


私はまた重い一歩を踏み出す。途中から段が広くなるから楽になってくるだろう。それだけが救いだ。


 だんだんと足に乳酸が溜まっていくのが分かってくる。街の方を見るとだいぶ上の方まで登ってきたのが分かる。ちょっと行ったところに茶屋があるから、そこで休憩にしよう。


 少し開けたところに人が集まっている。私はサイダーとソフトクリームを買って腰を下ろした。


「んあぁぁ!」


いつも水中だから、陸上はさらに疲れる。頂上まではもう少し、こうなれば行ってやろう。少し休憩して、私はまた歩き出す。通るのは左ルート。まずは緩やかな下りから。休憩したからか、下り坂のおかげか、いくらか足が楽だ。それでも山頂に向かう道。下ったら登るわけで、さっきよりもキツい上りが始まる。そこまで歩いていないのに息も切れてきて、汗が吹き出してくる。ときどき水分を補給しながら登り続け、頂上にたどり着いた。


「ゴール!」


思わず両手を挙げて喜ぶ。周りの観光客も同じように叫ぶ。なんともノリのいい人たちだ。少し恥ずかしくなって、そのまままっすぐ進んで、階段を降り始める。さっきまでの上りにしたら下り坂なんて楽すぎて反吐が出る。それでも油断してはいけない。バカ兄は下り坂のときにたまに痛むって言っていたから。一段一段慎重に降りていく。私は止まることなく本殿まで降りていった。


 時間が昼過ぎだからか、観光客が若干多くなってきた気がする。人の波に逆らいながら駅まで歩き、人のほとんどいない電車に乗りこんで、光善寺へ。


 家の前に立つと、少し緊張してきた。2人とも怒ってるかな?書置きは昨日のバカ兄と同じ内容だしな。


「ただいま!」

「おかえり!兄妹ってやっぱり似ているね!行動パターンが。」

「どういうこと?」


バカ兄は家にいなかった。まったく…

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