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第40話 DAY33

「あぁ、私の夏休みがもう終わるぅ。」

「どうしたんですか、黒潮先生?」

「あっ、田辺先生。お疲れ様です。」


私の名前は黒潮岬。26歳独身。1-Cの担任をしている。担当科目は生物基礎。田辺先生とは5クラスずつ受け持っていて、今日は授業内容の打ち合わせをしに学校へ来ている。


「それにしても黒潮先生、ひどくお疲れの様子ですね。大丈夫ですか?」

「ええ。どうにか。みんなが来る頃には元気になってないといけないですけど、それは分かりませんね。」


私は作り笑いをして返す。これが精一杯の強がりだ。たぶん、田辺先生は気づいていて何も言ってこない。やっぱり尊敬できる。


「じゃあ、授業内容の確認でもしましょうか。2学期は神経、ホルモン、人間の細胞でいきましょう。」

「人間の細胞に関しては、『はたらく細胞』を見せながらやっていくのはどうですか?」

「確かに、あれを授業で使ってる学校も多いしね。肺炎球菌とすり傷と花粉症と癌のところでいいんじゃないかな?」

「そうしましょう。私、Blu-ray持ってるので、持ってきます。」

「ありがとうございます。」


会議は着々と進んでいき、1時間ほどで終わった。私の夏休みの業務はこれで終了。9月1日までは学校には来ない。忘れ物がないか確認して家に帰る。


 私の家は香里園から徒歩10分ほど。学校が山側にあるのに対し、家は川側にあるので、駅構内を抜けることになる。クラブ終わりのうちの学校の生徒を度々見かけるが、誰も私には気づかない。それだけ一般人に紛れているのか。


「ただいまぁ。」


もちろん返事は無い。最初の頃は寂しく思うこともあったが、今では普通になりすぎて、あった方が不安になる、と思う。


「私もいい人探した方がいいかな?」


真っ白な天井を見上げて呟く。急に疲れが押し寄せてきて、私は眠りについた。


 何時間くらい寝ただろうか。スマホを開いて確認する。3時過ぎ。だいたい2時間30分ほど寝ていたのか。


「着替えよ。」


重たくなった体を持ち上げ、仕事用のスーツを脱いで下着姿になる。半袖のTシャツに袖を通し、ダボダボのスウェットを履く。鼻歌交じりにトーストを焼いて食べる。そのあとは漫画を読みながら過ごした。


 そろそろ読む漫画も尽きてきたので、新しいのを探しに近くの古本屋へ。中に入ると真っ先にまとめ売りコーナーに行く。端から順番に見ていくと、1つ、気になるシリーズがあった。男子高校生が教師とその妹に恋する物語。結末は知っているが、読んだことは無い。気づけばそれを持ってレジに並んでいた。


 家に帰って、まとめていたビニールを破り、1巻から読み進める。青年雑誌で連載されていただけあって、性描写もしっかり描かれている。次、また次と読み進める手は止まらなかった。


「私も命をかけられる相手は出てくるのかな?」


最後まで読み切った私の感想はこうだった。

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