もうすぐ銃が届く頃なので教室に戻る。残っていたのは射的メンバーといつものメンバーだけ。騒がしい奴らは帰ったから、とても静かだ。
「2人とも逃げ出してたんだ。」
「あんな空気の中でいられると思うか?」
「右に同じ。」
今からエンドレスで撃ち続けられると思うと、嬉しいような、怖いような。俺たちはいつになったら帰れるのだろうか。
「てか、Qはさっきいなかった方がいいと思うよ。」
「何でだ?」
「だって、ただ遊びたいだけの集まりだったし。私たちも途中で抜けたぐらい、ムカついた。」
どんどん海南さんの表情が曇っていく。的の並べ方を見る感じ、射的はやっていない。道具が揃っていないからだろう。
「ってことは、あとで俺たちで得点の調整しないといけないってことだよな。」
「Qは物分りが良くて助かるわ。」
やばい、本当にいつ帰れるか分からない。
銃が届いて、的の調整を始める。
「これ重いかも。」
「上の段全部、重り後ろに寄せてちょっとはみ出すようにする?」
「そだね。みんな、ちょっと待っててね。」
俺と船戸さんで、重りの位置を調整する。そして、他のみんなが撃ち落としていく。この作業の繰り返し。借りた銃は全部で3丁。コルク玉は100個近くあるから、営業中なくしても問題は無いだろう。
「上の段はこんなもんかな?」
綺麗に全部撃ち落とされた上の段を見て、こう呟く。正直言ってみんな上手すぎる。「ここら辺狙って」って指さしたら、そこにドンピシャで当ててくる。遊び慣れてる感が凄い。それでも、これだけは無理だろう。
「ジェンガって的になるの?」
「どこ抜いたらいい?」
「狭い面がこっち向いてるやつを撃ち抜いたらOKだ。よし、頑張れ!」
それぞれのスペースの正面下段に積み上げられた6段のジェンガ。狙えるのは9本だけ。みんな狙いを定めて撃っていくが、当たらない。これはレベルが高いようだ。
「きい、貸してみろ。」
「ひい君、出来るの?」
「多分な。」
俺の手のブレは、この距離だったらジェンガの小さい面1つ分くらい。真ん中よりちょい左に照準を合わせて、引鉄を引く。放たれたコルクはまっすぐジェンガに当たり、一つだけ撃ち抜いた。
「Q、上手すぎ。」
「なんで当たるの?」
賞賛の声が飛び交う中、俺は2つ目のコルクを装填する。狙うのは上段の真ん中2つ。離れているが、当てて届かない距離では無い。引鉄を引くと、左側の的の内側に当たり、跳ね返ったコルクは右側の的にも当たる。2つとも後ろに落ちて、得点が加算される。3発目から5発目までは上段の的を1つずつ落としていった。
「琴さん、合計何点だ?」
「えっと、550点。これだけで1等賞の景品が貰えるわ。」
「上限が多分これになるから。平均は下段の2つか上段のどれか1個になると思うから、100点ちょいって感じかな。」
自分でもここまで獲れるとは思わなかった。けれど、的屋の息子とかなら、これくらいのことはしてくるかもしれない。覚悟しておこう。
「射的は出来上がったから、あとは景品の振り分けだね。あっ、当たった!」
柚さんは片手でジェンガを撃ち抜きながら言った。