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第7話 そして文化祭は始まった②

 もうすぐ銃が届く頃なので教室に戻る。残っていたのは射的メンバーといつものメンバーだけ。騒がしい奴らは帰ったから、とても静かだ。


「2人とも逃げ出してたんだ。」

「あんな空気の中でいられると思うか?」

「右に同じ。」


今からエンドレスで撃ち続けられると思うと、嬉しいような、怖いような。俺たちはいつになったら帰れるのだろうか。


「てか、Qはさっきいなかった方がいいと思うよ。」

「何でだ?」

「だって、ただ遊びたいだけの集まりだったし。私たちも途中で抜けたぐらい、ムカついた。」


どんどん海南さんの表情が曇っていく。的の並べ方を見る感じ、射的はやっていない。道具が揃っていないからだろう。


「ってことは、あとで俺たちで得点の調整しないといけないってことだよな。」

「Qは物分りが良くて助かるわ。」


やばい、本当にいつ帰れるか分からない。


 銃が届いて、的の調整を始める。


「これ重いかも。」

「上の段全部、重り後ろに寄せてちょっとはみ出すようにする?」

「そだね。みんな、ちょっと待っててね。」


俺と船戸さんで、重りの位置を調整する。そして、他のみんなが撃ち落としていく。この作業の繰り返し。借りた銃は全部で3丁。コルク玉は100個近くあるから、営業中なくしても問題は無いだろう。


「上の段はこんなもんかな?」


綺麗に全部撃ち落とされた上の段を見て、こう呟く。正直言ってみんな上手すぎる。「ここら辺狙って」って指さしたら、そこにドンピシャで当ててくる。遊び慣れてる感が凄い。それでも、これだけは無理だろう。


「ジェンガって的になるの?」

「どこ抜いたらいい?」

「狭い面がこっち向いてるやつを撃ち抜いたらOKだ。よし、頑張れ!」


それぞれのスペースの正面下段に積み上げられた6段のジェンガ。狙えるのは9本だけ。みんな狙いを定めて撃っていくが、当たらない。これはレベルが高いようだ。


「きい、貸してみろ。」

「ひい君、出来るの?」

「多分な。」


俺の手のブレは、この距離だったらジェンガの小さい面1つ分くらい。真ん中よりちょい左に照準を合わせて、引鉄を引く。放たれたコルクはまっすぐジェンガに当たり、一つだけ撃ち抜いた。


「Q、上手すぎ。」

「なんで当たるの?」


賞賛の声が飛び交う中、俺は2つ目のコルクを装填する。狙うのは上段の真ん中2つ。離れているが、当てて届かない距離では無い。引鉄を引くと、左側の的の内側に当たり、跳ね返ったコルクは右側の的にも当たる。2つとも後ろに落ちて、得点が加算される。3発目から5発目までは上段の的を1つずつ落としていった。


「琴さん、合計何点だ?」

「えっと、550点。これだけで1等賞の景品が貰えるわ。」

「上限が多分これになるから。平均は下段の2つか上段のどれか1個になると思うから、100点ちょいって感じかな。」


自分でもここまで獲れるとは思わなかった。けれど、的屋の息子とかなら、これくらいのことはしてくるかもしれない。覚悟しておこう。


「射的は出来上がったから、あとは景品の振り分けだね。あっ、当たった!」


柚さんは片手でジェンガを撃ち抜きながら言った。

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