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第15話 そして体育祭は始まった③

 久志たちが出た綱引きの後にあるのは借り物競争。私と音羽の出番だ。楓には色んなものを持って見えるところにいてと伝えたから、他のみんなもやってくれるだろう。


「ねぇ桜、どんなお題があるのかな?」

「『校長先生』とか『担任の先生』とかはあるんじゃない?あとは『生徒会長』とか。」

「やっぱり、それが定番だよね。簡単なのがいいなぁ。」


音楽が流れて待機場所までかけ足で向かう。整列して座り、ルールを聞き始めた。


 今回の借り物競争のルールは、自分の前に置かれた封筒を取って、その中身の紙に書かれたお題に合う人を連れてくる。コースの途中に紐を置いているから、そこになったら足に結んで二人三脚。そのままゴールして、お題をマイクの前で言って、委員がOKしたら終わりって感じだ。


 3組目になって、音羽の番になる。ちなみに私は5組目だ。


「音羽、思いっきり走ってこい!」

「任せて!」


音羽はスタートラインに立った。


〇〇〇〇〇


―パァン


乾いたピストルの音に合わせて走り出す。目の前にある封筒を拾い、中の紙を開く。私のお題は『この夏、1番一緒にいた人』か。まぁ、楓とかが妥当だ…ん?いや待てよ。まさかだがカレンになりやしないか?隣の部屋だし、朝昼晩は一緒に食べてたし、なんなら料理も教えた。ってことはカレンか。でも少し恥ずかしい。ここで楓を選んでも、あの単純は、


「カレンってハーフの男の子とよく遊んでたのに?」


とかマイクの前で言っちゃいそう。そうなりゃ私の一生の恥だ。そんなことは絶対に避けないといけない。つまり…しょうがないか。


「カレン来い!走るよ!」


D組の前まで行って名前を叫ぶ。1回で気づいてくれたみたいで、すぐに出てきた。


「何で自分が?」

「後で説明するから。」


私はカレンの手を引いて紐のところまで走る。まだ1本もなくなってないから、私が1番みたいだ。少しキツめに紐を結んで、呼吸を合わせて走り出す。『私、汗かいてないかな?』なんか考えている暇は無い。とりあえず、ゴールテープを切って、委員のところへ。お題をマイクの前で叫んだ。


「私のお題は、『この夏、1番一緒にいた人』です。」

「エェェェ!」


ヤバい。結構恥ずかしい。それよりも、何であんたが1番驚いてんのよ。


「えぇっと、合ってますか?」

「まぁ、ご飯は毎食一緒だったし、部屋は隣だし。」

「もう文句は言えませんね。1位はピンクチームです!」

『ウオォォ!』


文句言えないなんて、私たちってそんな風に見えてるの?恥ずか死しそう。とりあえず、足首に結んだ紐を解いて、私たちは1位の旗の後ろに並んだ。桜も恥ずかしいお題を引きますように。

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