『アンタのせいよ―』
またこの夢だ。初夢くらいいいのを見せてよ。せっかくいい1年にしようと思ってるのにさ。何でこういう時に限って…
私は昔から基本的になんでも出来る方だった。運動系はもちろん、勉強もほぼ全教科満点だった。
私には仲のいい友達が2人いた。冴那と陽菜。2人とも家が近くて、よく3人で遊んでいた。いい感じの関係だったと思う。それでも、友情というものは案外容易く綻んでしまうものだ。
冴那には好きな人がいた。冴那の幼馴染の男の子。冴那は、幼稚園の頃から彼のことが好きらしく、小6の運動会後に告白した。その次の日から、冴那の態度は変わってしまった。
「アンタのせいよ。アンタのせいだから、気安く話しかけないでくれる?」
最初は何のことか分からなかった。別に冴那に何かした訳でもないし、恨まれる覚えもない。そして、私にはある噂が上がった。色目を使って男たちを誘惑してると。もちろん、そんな覚えはない。私は全てを察してしまった。冴那がフラれたのは、その男の子が私のことが好きだからだと。もちろん確証は無い。それでも、そうとしか考えられない。噂は校内を駆け巡り、私は全員から白い目で見られる存在になった。教室で聞こえてくるのは私の悪口ばかり。最初の頃は耐えられていたが、2学期が終わる頃には耐えきれなくなり、学校を休むようになった。
中学校からは別々のところに行くようになったので、疎遠状態のまま。連絡も取ってないし、顔を合わせることもない。
ただ、あの顔だけが忘れられない。憎悪に満ちた笑みが。
少し身体が熱く感じて目を覚ます。寝間着が少し冷たいから、相当汗をかいたのだろう。まさか、初夢が冴那のことだなんて思わなかった。今日はみんなと初詣に行く日なんだ。私だけこんなテンションじゃいけないな。
「おはよう。」
「おはよう…大丈夫か?」
「何で?」
「顔、赤いから。」
嘘、まだ顔赤かったの?熱が引くまで少しじっとしてたんだけどな。
「ちょっと暑かっただけだから。」
「今日、‐1℃だぞ。身体大丈夫か?風邪引いてないか?」
「大丈夫だって。」
冷たい水を飲んで、もう少し身体を冷やす。新年から本当に最悪だ。集合は8時に蹉跎神社だからもうすぐ出た方がいいな。
「行くよ!久志、杏ちゃん!」
「お、おう。」
久志は少し心配な顔をして返事した。