通りのわき道に入って、住宅街を抜けたところにあるのは蹉跎神社。少し小さいところだが、初詣客は結構いる。
「おはよ〜!」
先に来ていた音羽が手を振って俺たちのことを読んでいる。人を避けながら音羽のいる駐車スペースへ。あと4人か。
「あっ、来た!こっちこっち!」
楓が人混みの中からQたちを見つけ、手招きする。俺もやっとその4人の姿を確認…ん?桜の様子が変な気がする。気のせいか。
「揃ったな。とりあえず、人が多くなる前にお参りしようか。」
女子5人を先に列に並ばせて、その後ろに俺とQが並ぶ。
「(桜、何かあったのか?)」
「(俺にも分かんねぇよ。起きたときからずっとあんな感じだ。)」
少し心配になりながら階段を登り、お参りする。俺は健康と金運向上を祈願したが、みんなは何をお願いしたのか分からない。言葉にしたら叶わなくなるって聞いたことがあるから、訊かないでおこう。
次におみくじを引く。100円を投入して手を突っ込んだ。
『せーの!』
邪魔にならないところでおみくじを開く。今年も小吉だった。学問は『努力すべし』、失物は『意外なところからでてくる』、そして恋愛は『遠し』。俺、めちゃくちゃ努力しないといけなくね?
「末吉かぁ。まあまあかな。」
と少しガッカリしている。笑いにもならないし、スゴいとも言われない。たしかに少し嫌だな。
「私も末吉か。」
「私もです!」
音羽と杏ちゃんも末吉だったらしく、さっきとは打って変わって、キャーキャー騒いでいる。
「イェーイ!私、大吉!ひい君は?」
「俺は吉だ。桜は?」
「大凶。」
……………え?本当に存在したん?
「……桜、伸びしろしかねぇな!」
「そうやん!上しかないやん!」
全員で精一杯のフォローをする。すると、すぐに桜は笑顔になった。あ〜っ、心臓止まるかと思った。
〇〇〇〇〇
やっぱり大凶だったか。初夢からもう最悪だしね。内容は…
『願望 叶うがまだ先
待人 来ず
失物 いつかでる
旅行 行けど難あり
商売 利益出ず
学問 特に変わらず 努力しなければ落ちる
相場 不動
争事 負ける 諦めよ
恋愛 今年は諦めるべし
転居 するな
出産 安産
病気 かかるがすぐに治る
縁談 なし 待っておくとよし』
本当に散々な結果だな。我ながらスゴいや。
「ア〜ハハハハハッ!」
「桜、なんで笑ってんの?大丈夫?」
「音羽、大丈夫大丈夫。だって、内容面白いんだもん。もう『落ちるところまで落ちました』って言われてるみたいで。」
私は結果を見せながら言って、その場にうずくまる。もう、腹筋が痛くて死にそう。
「桜がおかしくなってる。」
「私なら3回は死んでるな。」
「ここまで諦めるって言われたら傷つくな。」
みんな素直な感想ありがとう。普段の私なら血を吐いて死んでたよ。呼吸を整えてもう一度内容を確認する。思ったよりもいい内容かもしれない。願望はこの先叶うみたいだし、恋愛は今年諦めたらいいだけ。そして何より、転居の『するな』って、もしかして久志の家から出ていかなかったらいいことでもあるのかな?私にとっては一石二鳥だ。
「でも、桜さん。なんだか嬉しそう。いいことでもあった?」
「あったよ。」
これは私だけの秘密。