はぁ、随分いい夢を見たな。
「奏、奏!」
3年間聞きなれた声。あぁもうすぐ、4年間か。
「奏、起きてるんでしょ?」
「そうと言ったら?」
「起きて!」
ゲシゲシと腰を蹴られる。コイツも元々水泳をしていたからな。なかなか強いんだわ。
「痛えって。おはよう、楓。」
「おはよう、奏。」
笑顔でそう言ってくる。この笑顔はおそらく「漫画貸して」か「暇やからどっか遊びに行かん?」だろうな。漫画はこの前貸したばっかりだから、答えはおそらく後者か。
「ちょっと待っとけ。準備してくる。」
「ブブ〜!正解は、暇だけど寒いから家でゴロゴロしてたいでした!」
「やっばり変な答えじゃねぇか。」
「彼女のお願いを変ってどゆこと?」
「最近は2回に1回は当たるようになってきたけどよ、めっちゃ難しいぞこれ。なんなら楓もやってみるか?今俺が思ってることは?」
うーんと楓は少し考える。今俺が思ってることかー。どんなことして楽しませようかなとかかな。
「どんなことして楽しませよう?とか?」
えっ、コイツ、エスパーなの?なんでほぼ一言一句間違わずに答えんねん。
「それで、正解は?」
「正解。どんなことして楽しませようかな〜って。」
「意外と簡単やん。」
ふふんと胸を叩いて自慢げな様子。楽しそうで何よりだ。あっ、そうだ。そろそろ起きないとな。楓との時間も無くなるし。
体を起こしてリビングまで手を繋いで歩く。繋ぎ慣れたというのはおかしいが、幾度となく繋いだ手はいつまで経っても変わらない感触。いつも通り一緒に朝食を食べて、片付けする。時々手が当たったりするが、もうそんなことでオドオドすることはない。4年も一緒にいるからな。
「フフッ。奏って最初は朝、ベッドに忍び込んだ私にビクビクしてたのにね。」
「こんなことを慣れたくはなかったな。」
「そんなのいずれ一緒に寝るんだから言ってられへんで。」
楓は少し顔を赤らめながらニヒヒと笑う。俺の体温も少し高くなった気がする。
「そういや、朝来るのは久しぶりだな。」
「なんとなく来たくなってね。」
「なんとなく?」
「そう、なんとなく。」
〇〇〇〇〇
夢で、昔いっぱい遊びに来てたのを思い出して、あの頃のようにやってみたけど、色々覚えた私には少しハードルが高かったかな。
朝食の片付けを終えた私たちはテレビの前のソファに腰掛ける。奏が足を広げて座ったので、私がそこに座る形で。
溜まっているアニメを見る。まあ、いつも通りの光景だ。オープニングが終わったとき、後ろから締め付けられる感触があった。腰には奏の手。
「どうしたの?」
「特別な人には特別なことをしないとな。」
「誰のセリフのパクリよ。」
「さぁて、誰のだっけな。」
なんでこういう時だけ全問正解なのよ。