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第25話 言葉②

 俺たちは去年のバレンタインから付き合っている。今になって思えば随分恥ずかしい告白をされたものだ。バレンタインのマカロンを渡されて、


「特別な人には特別なものをあげないとね。」


って。まさか意味がわかっていないだろうと思って確認したら、知った上での告白だったらしい。もちろん俺の答えはYES。あぁ懐かしいな。


「2月やね。」

「2月やな。」


流しているアニメをぼーっと見る。


「2月やで!バレンタインとかでウキウキせぇへんの?」

「いや、1個は確定だから別に緊張せんでもええかなって。それに、2月といえば、お前の誕生日やろ。14日は。」

「そうやけど、ね!」


楓はぷくーっと頬を膨らます。俺はその頬を軽く人差し指で刺した。


―プス〜


「ん!」


何だこの可愛い生物は。ヤバい。死にそう。


―プス〜


「んん!」


ヤバい。止まらん。


―プス〜


「止めれ!」

「ハハハッ。ごめん。」

「許す!」


肩に首を乗せてきたので、そっと撫でながら今クールの最終話を見切った。


 1度楓の元を離れて今日の晩飯を作る。離れようとした時楓がしがみついてきたが、ちょっと撫でてやったら大人しくなった。可愛いヤツめ。


「出来たぞ〜。」

「今行く〜。」


トテトテと歩いてきて椅子に座る。今日の晩飯は生姜焼きだ。


「「いただきまーす!」」


肉を1度ご飯の上でワンバウンドさせてから口に運ぶ。


「うんまぁーい!私、奏の作った生姜焼きが1番好きやわ〜。」

「そうか、それは良かったな。」


楓とご飯を食べるようになってから、少しばかりは料理が上手くなった気がする。それは、美味しいと言ってもらいたいのもそうだし、下手なものは食べさせれないのもそう。ほぼ毎日3食作っているのがいいのか。


「あ〜あ。こんなにレベル高いの作られたら、明日の私のご飯が霞んじゃうなぁ〜。」

「楓のも十分美味いぞ。味付けも俺好みだし。」

「もっともっと!」

「もっと?ん〜、料理してる時の立ち姿とか綺麗だなぁって。」

「はふっ!もう一声!」

「もう一声?将来はこうなのかなぁって。」

「はふん!」


おい、勝手に撃ち抜かれるな。あーもう、こっちまで恥ずかしくなってきたじゃねぇか。


「ふふーん、明日は何作ってあげようかな?」

「食べれるのなら何でもいいぞ。どんなけ焦がしても、食べるし。」

「もう〜、奏ったら〜。そんな奏にはおしおきです!私の苦手な人参を食べなさい!」

「いい加減食べれるようになれよ。貰うけど。」

「来年までには食べれるようになる!」


俺たちの幸せな日々は続く。

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