俺たちは去年のバレンタインから付き合っている。今になって思えば随分恥ずかしい告白をされたものだ。バレンタインのマカロンを渡されて、
「特別な人には特別なものをあげないとね。」
って。まさか意味がわかっていないだろうと思って確認したら、知った上での告白だったらしい。もちろん俺の答えはYES。あぁ懐かしいな。
「2月やね。」
「2月やな。」
流しているアニメをぼーっと見る。
「2月やで!バレンタインとかでウキウキせぇへんの?」
「いや、1個は確定だから別に緊張せんでもええかなって。それに、2月といえば、お前の誕生日やろ。14日は。」
「そうやけど、ね!」
楓はぷくーっと頬を膨らます。俺はその頬を軽く人差し指で刺した。
―プス〜
「ん!」
何だこの可愛い生物は。ヤバい。死にそう。
―プス〜
「んん!」
ヤバい。止まらん。
―プス〜
「止めれ!」
「ハハハッ。ごめん。」
「許す!」
肩に首を乗せてきたので、そっと撫でながら今クールの最終話を見切った。
1度楓の元を離れて今日の晩飯を作る。離れようとした時楓がしがみついてきたが、ちょっと撫でてやったら大人しくなった。可愛いヤツめ。
「出来たぞ〜。」
「今行く〜。」
トテトテと歩いてきて椅子に座る。今日の晩飯は生姜焼きだ。
「「いただきまーす!」」
肉を1度ご飯の上でワンバウンドさせてから口に運ぶ。
「うんまぁーい!私、奏の作った生姜焼きが1番好きやわ〜。」
「そうか、それは良かったな。」
楓とご飯を食べるようになってから、少しばかりは料理が上手くなった気がする。それは、美味しいと言ってもらいたいのもそうだし、下手なものは食べさせれないのもそう。ほぼ毎日3食作っているのがいいのか。
「あ〜あ。こんなにレベル高いの作られたら、明日の私のご飯が霞んじゃうなぁ〜。」
「楓のも十分美味いぞ。味付けも俺好みだし。」
「もっともっと!」
「もっと?ん〜、料理してる時の立ち姿とか綺麗だなぁって。」
「はふっ!もう一声!」
「もう一声?将来はこうなのかなぁって。」
「はふん!」
おい、勝手に撃ち抜かれるな。あーもう、こっちまで恥ずかしくなってきたじゃねぇか。
「ふふーん、明日は何作ってあげようかな?」
「食べれるのなら何でもいいぞ。どんなけ焦がしても、食べるし。」
「もう〜、奏ったら〜。そんな奏にはおしおきです!私の苦手な人参を食べなさい!」
「いい加減食べれるようになれよ。貰うけど。」
「来年までには食べれるようになる!」
俺たちの幸せな日々は続く。