俺は夢を見ていた。あの頃の夢を。
何やら騒がしいな。
「奏、奏!」
「ぬあ?何だ楓か。」
「何だじゃないでしょ。顎骨折るよ。」
「折ってみろ非力め。」
「あぁん?やんのか?」
―ゴリゴリゴリゴリ
「やめろ!悪ぃ、俺が悪かった!」
「素直に聞いてくれればよろし。それで、私がなんでここにいると思う?」
目の前の
「分からん。てかどうやってここまで入ったんだ?」
「奏のお母さんがOKって連絡くれた。」
「アイツ…」
そうやって時間を稼いでいる間も、彼女は無言で見つめてくる。笑顔を崩さずに。ヤバい。クソ怖い。
今日の服装を見る感じ、特別オシャレしている訳ではない。付き合う前から着ている部屋着。全体的にダボッとした感じの服。化粧はナチュラルメイクくらいかな?
「本当に分からないの?」
「分からん。」
「彼氏ポイント-10点。正解は漫画貸してほしいから来ただけでした。あ〜私の彼氏はこんなことも分からないのかぁ。」
「その問題ムズすぎだろ。てか、ほぼお前の思考を読めって感じじゃねぇか。」
また俺をじっと見つめてくる。この顔はおそらく分かってよの顔だな。
―チュッ
俺は彼女のおでこにキスして起き上がる。なんともいい目覚めなんだろう。彼女を残して部屋を出て、リビングへ。
「ーーーーーーーーー!」
俺の部屋からは何やら声がした。
誰もいないリビングで朝食を摂る。ゆっくりとした朝は比較的に大好きだ。いつも忙しい朝を過ごしているからだろうか。
楓が漫画を貸してって言う時は、基本的に何を借りたいとかは決まっていない。俺のオススメとか、今流行ってるやつとかを貸してって言うことが多い。今はオススメとかは出し尽くしたからなぁ。どうしよう。
「いつの間にか、朝一緒にいるのも当たり前になってきたね。」
「高校になったら自炊の練習したいからやめてくれよ。」
「分かってるって。まあ、その時は私も一緒だろうけど。」
「俺が捨てられない限りはな。」
「余程のことがない限り捨てないし。」
「余程のことって?」
ん〜、と楓は考える。何か思いついたのか、あっ、って手を叩いた。
「人殺した時とか、窃盗した時とか。」
「犯罪を犯さなければいいんだな。」
「そゆこと。」
わしゃわしゃっと楓の頭を撫でる。細い茶髪の髪の毛が指の間を通り過ぎていく。
「ありがとな。」
「エヘヘー。」
その後も2人でゆっくり朝の時間を過ごした。彼女とソファに座ってアニメを見たり、ゲームしたり。そんな感じの2人の関係。どこか行くとかじゃなくて、お互いの家(基本的に俺の家)でゆっくりと過ごし、晩ご飯まで一緒にいる。そんな距離感の彼女との記憶。