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第24話 言葉①

 俺は夢を見ていた。あの頃の夢を。


 何やら騒がしいな。


「奏、奏!」

「ぬあ?何だ楓か。」

「何だじゃないでしょ。顎骨折るよ。」

「折ってみろ非力め。」

「あぁん?やんのか?」


―ゴリゴリゴリゴリ


「やめろ!悪ぃ、俺が悪かった!」

「素直に聞いてくれればよろし。それで、私がなんでここにいると思う?」


目の前のが俺の上に座って訊いてくる。


「分からん。てかどうやってここまで入ったんだ?」

「奏のお母さんがOKって連絡くれた。」

「アイツ…」


そうやって時間を稼いでいる間も、彼女は無言で見つめてくる。笑顔を崩さずに。ヤバい。クソ怖い。


 今日の服装を見る感じ、特別オシャレしている訳ではない。付き合う前から着ている部屋着。全体的にダボッとした感じの服。化粧はナチュラルメイクくらいかな?


「本当に分からないの?」

「分からん。」

「彼氏ポイント-10点。正解は漫画貸してほしいから来ただけでした。あ〜私の彼氏はこんなことも分からないのかぁ。」

「その問題ムズすぎだろ。てか、ほぼお前の思考を読めって感じじゃねぇか。」


また俺をじっと見つめてくる。この顔はおそらく分かってよの顔だな。


―チュッ


俺は彼女のおでこにキスして起き上がる。なんともいい目覚めなんだろう。彼女を残して部屋を出て、リビングへ。


「ーーーーーーーーー!」


俺の部屋からは何やら声がした。


 誰もいないリビングで朝食を摂る。ゆっくりとした朝は比較的に大好きだ。いつも忙しい朝を過ごしているからだろうか。


 楓が漫画を貸してって言う時は、基本的に何を借りたいとかは決まっていない。俺のオススメとか、今流行ってるやつとかを貸してって言うことが多い。今はオススメとかは出し尽くしたからなぁ。どうしよう。


「いつの間にか、朝一緒にいるのも当たり前になってきたね。」

「高校になったら自炊の練習したいからやめてくれよ。」

「分かってるって。まあ、その時は私も一緒だろうけど。」

「俺が捨てられない限りはな。」

「余程のことがない限り捨てないし。」

「余程のことって?」


ん〜、と楓は考える。何か思いついたのか、あっ、って手を叩いた。


「人殺した時とか、窃盗した時とか。」

「犯罪を犯さなければいいんだな。」

「そゆこと。」


わしゃわしゃっと楓の頭を撫でる。細い茶髪の髪の毛が指の間を通り過ぎていく。


「ありがとな。」

「エヘヘー。」


その後も2人でゆっくり朝の時間を過ごした。彼女とソファに座ってアニメを見たり、ゲームしたり。そんな感じの2人の関係。どこか行くとかじゃなくて、お互いの家(基本的に俺の家)でゆっくりと過ごし、晩ご飯まで一緒にいる。そんな距離感の彼女との記憶。

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