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第23話 積雪②

 校門から見えるグラウンドは真っ白だった。


「うわぁぁぁぁ!」

「キィャーーー!」

「ハハハッ!」


こんなに寒いのに、陽キャ共は自分たちだけの空間を作ってやがる。まったく、愉快な奴らだ。


「あ〜あ、あんな空間には入りたくないな。」

「きいもそうなのか。じゃあ、上行っとこう。」

「俺と楓は遊んでるわ。なんかあったら呼んでくれ。」


2人の荷物を受け取って教室へ上がる。中は、陽キャがいない分、静かだった。


「まさか、ここまでとはな。」

「カッコ書きを言ってくれ。」


ここでこのセリフをぶっ込んでくる桜には尊敬するわ。


「さてと、奏の席は…」


俺は自分の2つ隣の奏の席に荷物を置いた。


 席替えをしたのはちょうど1週間前。これまで3回席替えをしてきたが、近くにはいつものメンバーが全員揃っていた。しかし、今回はきいと海南さんが1番前という超神引きをして、桜が3列目の窓側、1番後ろの席で俺と熊野さんと奏が横並びになっている。


「熊野さん、1時間目何やったっけ?」

「数Ⅰ。」

「寝るな、こりゃあ。」


ロッカーから教科書とノートを取り出して、窓の外を眺める。うちの教室からはグラウンドが見えるので、珍しいものに群がるアリ達を見ることができる。もちろん、人もいるが。


「あっ、ヘッスラしてる。」


アリ達の中の1人が全身を真っ白にしながら立ち上がる。絶対風邪ひくな。


「あぁ、遊びたかったのにな。」

「しょうがねぇだろ。陰の居場所を奪うのはいつだって陽の当たる奴らだ。」

「そうやね。行き帰りだけで我慢するか。」


俺ときいは窓の外を眺めるだけ。グラウンドから聞こえてくる笑い声を恨みながら。


 楽しい楽しい生物の時間が終わって、終礼が始まる。というか、6時間目の間に終礼をしたので、チャイムと同時に、クラスの大半は教室の外へ飛び出した。


「まったく、元気な奴らだな。」

「電車が静かになるまで残ってようか。」

「そうだな。」


クラブに行く奏と海南さん、カレンに呼ばれた熊野さんを見送って、3人で教室内に残る。中は自習しているやつと、帰りたくないアピールをしている陽キャが残っている。見事なコントラストだ。


「私って昔はこんな風に見えてたのかな?」

「少なくとも俺はそんな感じに見えてたぞ。」

「久志、怒るよ。」


ポコポコと桜が俺の胸を叩いてくる。


「桜、ゴメンて。」

「今日の晩ご飯は作ってよ。」

「はいよ。」


喋っていたら、時間は早く過ぎていき、たぶん電車が4~5本行った頃に俺たちは教室を出た。


「はぁ、さすがに残ってないか。」

「昼間は降っていなかったからな。」


アスファルトを踏みしめて駅へと歩く。おそらく今年はもう雪は降らないだろう。来年は楽しめるかな。

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