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第22話 積雪①

 朝、ぼーっとした頭でリビングのカーテンを開ける。今日は桜も早めに起きたみたいで珍しく杏がいない朝だった。


「久志、カーテン開けんの?寒なるやん。」

「窓に結露ついてるやろ。これ乾かさなカビなるから。」


窓から光が差し込み、目の前の道が見えるようになる。外の世界は真っ白だった。


「雪だ。」

「雪だなぁ。」


もうひとつの窓のカーテンも開ける。


「雪だなぁ。」

「雪だね。」


欠伸をしながら洗面所に向かおうとする。が、やっと情報の処理が出来て、気づいた。


「雪だわ。」

「うん、そうそう。雪積もってる。」

「えっ、雪?」

「雪だ!」


桜がリビングではしゃいでいる。その音で起きたのか、杏が降りてきた。


「おはよう、2人とも朝からどうしたの?」

「杏、外見てみろ。」

「外?あっ、雪だ!」


杏は窓に頬をくっつけて、外を眺める。定期的に窓が白くなって、また消えていくのを見ていると、外の寒さが伺えるな。


 朝ご飯を食べて家を出る。この前は道の端っこにうっすら積もっているだけだったが、今日は道の真ん中でも数ミリは積もっている。歩く度にローファーの底がシャリシャリ音を鳴らして、ときどき滑りそうになりながら、きいとの待ち合わせ場所まで歩く。


「おっはよ〜!今日はちゃんと雪積もったね!」

「おう、そうだな、きい。」


喋る度に白い息が空に消えていく。雪が降っているから、肌を突き刺すような寒さではないが、体の芯から冷えてくるような寒さ。


「いやぁ〜、今日朝起きたときびっくりしたな。だってめちゃくちゃ真っ白やもん。」

「うちでも杏が窓に張り付いてた。」

「何それ、めっちゃ可愛いんやけど。」

「残念ながら、動画は録っておりません。」

「チクショー。」


気づけばもう改札前。奏と海南さんがイチャコラしている。


「朝出てきていきなり雪玉当てるとか、マジでありえへんから。」

「ごめんて。ハハハ。」


やっぱりこの2人のやり取りを見ていると、やっぱり和むな。


「2人とも、イチャコラしてるのはいいけど、周りを砂糖で殴殺するなよ。」

「「そんなのしてないし!」」


やっぱ仲良いじゃねぇか。


 来た電車に乗って、香里園まで。車窓から見える景色も真っ白で、グラウンドに雪が積もっている期待はできるな。


 香里園で降りると、うちの学校の生徒が何グループかいた。


「雪積もってるかな?」

「積もってるやろ。」


「学校ついたら遊ばん?」

「いいなそれ!」


結局、みんな考えることは同じようだ。そして俺たちは雪道へと足を踏み出した。

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