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第28話 情人②

 奏、明らかにソワソワしてたよな。まぁそうか。明日はバレンタインだもんな。何あげてびっくりさせてやろうかな。


「桜は何あげるの?」

「マドレーヌにしようと思う。楓は?」

「特に考えてないな。音羽はどうするの?」

「無難にチョコかな?って誰にあげる必要があるの?」

「そりゃ、カレンやろ。家隣なんやし。」

「いつもお世話になってるんやし。」

「どっちか言うとお世話してんの。それこそきいはどうすんのよ?」

「私もチョコかな?そんな凝ったもんはいいかなって思うし。」


百貨店の地下にあるバレンタインのコーナーの角で話す。フロアは20代くらいの女の人でいっぱいだ。


「こういうところで買う人の大半は彼氏持ちなんかな?」

「そうちゃう?私にそんな人はいないけど。」

「この前、楓と奏っちが仲良く歩いてるの見たけど、そういうのではないん?」

「ちゃうわ。」


マジか。いつ見られてたんだろ。ここ最近はデートとかも特にしてないから、結構前だな。Qと桜が付き合うまでは黙っておくって決めてるから、バレたら元も子もないしな。気をつけないと。


 てか、今のを否定したので少し心が痛んだのが辛い。前まではこんなことはなかったのに。


「楓、面白い顔してるよ。」

「べ、別に何もないし。早く行こ。」

「そだね。」


行き交う人を避けながら、ショーケースの中を見て歩く。


 正直悩んでる。告白したときみたいな派手なのはちょっと違うかなって思うけど、チョコレートみたいなベタなのは面白くない。何にしようかと手元のスマホで『バレンタイン 意味』で検索する。へぇー、バームクーヘンってそんな意味があるんか。


「私決まったから買ってくるね。」

「私も。」

「私もいいの見つけたし。行ってくる。」

「じゃあ私は良さげなの買おうかな?」


さっき喋っていた角で待ち合わせにして、各々の欲しいものを買いに別れた。


 私が買うのはさっき調べて意味を知ったバームクーヘン。意味は、『今の幸せがいつまでも続きますように』。結婚式とかで出されるみたいだからちょっと小っ恥ずかしいけど、ゆくゆくは…だし。


「ありがとうございます。」


私は箱の入った袋を受け取った。


〇〇〇〇〇


 マドレーヌ。意味は『もっと親しくなりたい』。昨日の晩のうちに調べといて良かった。悩んでいるときに楓がスマホで検索してたし、きいも音羽もそういうのには興味無いだろうから気づいてないよね。


「ありがとうございます。」


私はパウンドケーキとマドレーヌの詰め合わせが入ったビニール袋を受け取った。


〇〇〇〇〇


 正直、カレンにあげるのには抵抗がある。別に嫌いではないけど、そういうのではない。


 ちなみに、男子にバレンタインをあげるのは初めてだ。だからこそ、何を渡せばいいのか分からない。


「人気NO.1のやつでいいか。」


私は山積みになっている、マカロンの箱を手に取った。


〇〇〇〇〇


「ごめんね、桜。私、負けたくないんだ。」


そう呟いて目の前のキャンディーに手を伸ばす。

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