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第30話 情人④ ~きいの場合~

「ふふふふふ〜ん♪」


私の家からひい君の家までは歩いて3分ぐらい。昔は毎日のように通った道も、最近は週1くらいでしか通らなくなった。


「持って行ったらひい君、びっくりするかな〜?」


私がひい君にバレンタインを渡すのは小6以来。今年も絶対貰えないとか思ってそう。ざんねーん。今年はありますよぉー。


 ひい君はキャンディーの意味なんて知らないと思うけど、知らなくてもそういうことだからいいよね。


「よし、いつも通りに!」


―ピンポーン


『はーい。』

「ひい君、開けて。」

『ちょい待ち。』


この待ってる時間が実は結構好きだったりする。なんでって?ひい君がどこまでだらけているのか想像するのが楽しみだから。


「きい姉!久しぶり!」


玄関から飛び出してきたのは杏ちゃん。相変わらず可愛いな。


「杏ちゃん!久しぶり!はいこれ!バレンタインの友チョコ!」

「ありがとう!あっ、ちょっと待ってて。」


杏ちゃんはトテトテと家の中へ戻って行った。


「よっ、きい。課題終わってるか?」

「やっぱりそれ訊いてくる。まだです。」

「だろうな。教えて欲しいところはいつでも言えよ。」

「うん、ありがと。じゃなくて、本題は―」

「きい。はい、バレンタインの友チョコ。」


桜め。いいタイミングで出てきやがって。


「ありがとう!じゃあ私からも。」

「ありがと。きい。」

「それで、ひい君にはこれ。」

「マジか。今年もないと思ってたわ。ありがとう。」


ひい君は100点満点の笑顔で笑った。顔全体がくしゃっとなってて、可愛い。


「ねぇひい君。期末の勉強、一緒にせぇへん?」

「いや、いっつもしてるだろ。」

「エヘヘ。言ってみたかっただけ。」

「じゃあ、今回もな。」

「うん!また明後日ね。」


今は入試休み。明日は月曜日だけど、明日も明後日も休みだ。つまり、次に会うのは明明後日。少し寂しいな。


「やっぱり、もうちょっと喋ってく。」

「おおそうか。なんか羽織ってくるわ。」


やっぱりひい君はいつも私のわがままに付き合ってくれるから嬉しいな。おっといけない。桜の前ではこんな顔しちゃダメだった。


「あのね、ひい君―」


ひい君は私の話を嫌な顔1つせずに聞いてくれた。


「きい、そろそろ帰った方がいいんじゃねぇか?晩ご飯もあるんやし。」

「そうだね。またね。(大好き)」


最後の言葉だけは聞いてくれなかったけど。


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