まずは一言、謝罪をさせてくれ。
俺は今すぐにでも胃薬で胃を労りたいほど、胃を痛めている。
言い訳がしたい訳では無い。が、体調が万全でない。このような状態で挨拶をする羽目になったのには、ちゃんとしたわけがある。
そのわけを説明をする前にまず、俺の簡単な自己紹介をしよう。
俺の名は
ココ、私立『
自分で言うのもなんだが、学力や普段の学園生活の素行に問題を持つような生徒ではない。断じて違う。どちらかと言うと、優等生タイプだと自負している。
何故「わざわざそんなことを言うのか」って? もちろん、必要なことだからだ。
次に俺が通うこの学園、『私立縁城学園』について。
今は四月上旬。
今年も新たな生徒が入学してきた季節。
この学園は中・高一貫の学園で、俺は幼なじみに勧められて高等部から外部入学した。
正直、私立は敷居や学費面など、色々とお高いイメージがあったために、最初こそは緊張した。
だが、クラスメイトや先生方も、とても優しい人たちばかりで、そんな不安はすぐに払拭された。とても素晴らしい学園だと、俺は自信を持って言おう。
……以上が俺と、俺の通う学園についての紹介だ。
ザックリとだが、理解してもらったところで。
続いて、俺の胃が悲鳴をあげている理由について説明しよう。
まずはなにも考えずに、この反応を見てくれ。
「なんだ……あの部活動?」
「着ぐるみがいるし……演、劇部……か?」
「いや、演劇部はさっき紹介してただろ」
「じゃあ白衣の人も居るし、科学部……?」
「いやいや、科学部もさっき紹介やってただろ?」
「部活の名前違うから、別の部活じゃない?」
「……っていうか、なに? 『
お分かりいただけただろうか?
これは一体何の集まりか……何となく察してくれている人もいるだろうが、一応説明させてもらう。これは今年入った、新入生たちのために行っている『部活動を紹介する集まり』……つまり『部活動紹介』だ。
この学園は校則には『必ず部活に入らねばならない』という決まりがある。
故にこの場には、今年新しく高等部に入った一年生の諸君。そしてこの学園に現在ある、様々な部活動が集まっているのだ。
そして『部活動紹介』ということもあり、『部活動』として申請している部はどんなに奇人・変人の巣窟であり、
無論、どうせ部員は入らないだろうし、元々期待など微塵もしていない。
俺はまだ紹介もしていないのに胃痛だけでなく、頭痛までし始める。
新入生たちからの『うわぁ……何あの部、マジでウケるんですけど』や『あの人たち、頭大丈夫なの?』など、残念なものを見るような痛い視線が辛い。マジで痛い。冗談抜きで痛いのだ。
だって、考えてみてくれ。
俺たちは今から、新入生たちに『部活動紹介』をするんだ。
なのに何故、俺の隣にいるこの二人は『
俺はキリキリと悲鳴を上げている胃を抑えながら、壇上へと上がる。
それでは俺の隣にいる二人を、恰好とともに簡潔に紹介しよう。
まずは制服の上から、
この少女の名は
肩まである癖の強い黒髪と、少しだけキツ目の印象を与える大きな瞳が特徴の容姿端麗。
そして模試では常に全国一位を取るほどの頭脳を持ち、成績は優秀。
白衣を羽織っているが、彼女は科学部ではない。歴としたウチの部員だ。ウソじゃない、本当だ。
次に、何故か
この青年の名は
癖のある柔らかな黒髪に猫のような目元と瞳が特徴で、『
なんでわざわざそんなことを言うのかって? それはこれか起こるであろうことを見ていれば、すぐに理解するさ。
「そ、それでは次の部活動紹介……えーっと、『イカれた奴等の集まる部』です……」
猫山先輩はやや戸惑い気味の司会担当の生徒からマイクを受け取ると、ニッコニコの爽やかな笑顔でこう宣言した。
「やぁやぁ、新入生の諸君♪ 俺たちは『イカれた奴等の集まる部』、通称『イカ部』だぜ☆ そして俺が部長でぇ……」
猫山先輩は俺たちを指さしながら「こっちのイケメンが副部長でぇ、可愛い子がウチの部員な!」と、声高らかに宣言する。
そう、俺が胃を痛めている原因。
それはこの、地獄の部活動紹介の時間である。
そして俺は、悲しくもこの『イカれた奴等の集まる部』……通称『イカ部』の『
では何故、俺のような一般生徒がこんなヘンテコな名前の、このふざけたメンバーと部活動を共に行い。その上、『副部長』なんて不名誉な肩書きを背負わされているのか。
それを語るには少々話は長く、ほぼほぼ俺の愚痴になるのだが……それでもいいだろうか?