理解できなくてもそれでも時間は流れる。
私は、どうにか河上君に文化祭の話をしようとしていたが、学校に来るようになって出し物の話をする時は寝ているし本人にやる気の欠片も感じないので、どうするか頭を悩ませていた。
「出し物は、縁日にするけど段階はどこまで進んでいる?」
係の人が言うので各々進み具合を発表する。
現在、文化祭まで後数日だった。看板はもう出来上がっているけど後は前日に教室を飾り付けして、景品のお菓子とかも前日に買いにいく程度だった。
もう後は前日を待つのみとなった。
「ねえ、さくら」
「え?」
「さっきから呼んでいるけど、大丈夫?」
舞が放課後一人でいる私に話しかけてきた。
「大丈夫だよ、それでなんだっけ?」
「文化祭の件だよ」
「ああ、それね。実はまだ話せてなくて」
「まだ?」
「うん」
「じゃあ私が今から話そうか?」
「うーん」
「河上君はどこにいるの?」
「今、買い出しに行っているよ」
「買い出し?」
「皆で話し合っている時に寝ていたから、その罰」
「全く興味ないのね」
「うん、そんな感じ。颯太君はどうなの?」
「颯太は意外と前向きだけど、別れ方があれだから今、面と向かって話すのは厳しいって」
「そっか」
どうやら、クラスの出し物よりこっちの方が難航していた。
「只今~」
「お帰り、買い出しはどうだった?」
「まあ、無い物探せって言われている訳じゃないから簡単だったけどチャリにしては荷物が多かったな」
「君が河上君だね」
なんだか刑事物語の警察官のような言いだしだった。
「誰?」
「高倉舞です」
「それで?」
「実は文化祭一緒に周らない?」
「やだ」
「え?」
「だってあんたのこと知らないし」
「私だけじゃなくてさくらも一緒に」
「大体なんで文化祭に行かないと行けないんだ?」
「ちょっとまさか来ない気?」
「だって興味ないし」
「は~」
「舞、河上君はこう言う人だから」
すかさずフォローするがフォローになっているか、疑問だった。
「まあ、文化祭も最後だし思い出って事で良いんじゃない?」
「まあ、そう言われるとそうだな」
「お、その調子」
「でも二日目は俺行けないからな」
「なんで?」
「まあ、事情があるんだ。それに先生には許可もらっている」
「そっか、じゃあ仕方ないけど一日目は一緒に周ってくれるってこと?」
「まあ、いいけど」
「それは良かった、それでもう一人連れて周りたい人がいるんだけど」
舞がそう言った瞬間、颯太君が教室に入ってきた。
「舞、帰ろう」
「あ、うん」
「じゃあ俺はこれで」
「ちょっと待って」
颯太君を見るなり、帰ろうとする河上君だったがそれを止める。今逃したらもう言えないと確信していた。
「まだ何か?」
「一緒に周りたいのはこの四人なの」
「颯太も入っているのか?」
「うん」
四人しかいな、教室が静まり返る。そして悪い空気が流れる。
「颯太」
「久しぶりだな」
「ああ、戻ってから話してなかったしな」
「じゃあ積もる話もあるだろうから後は二人で話して」
「え?」
「じゃあ私達は行くから、じゃあねー」
私は舞に手を引いて教室、そして学校を出る。
「ねえ、舞二人にして大丈夫だったの?」
「大丈夫でしょ」
「そんな無責任な」
一方河上は、颯太と無言の時間が続く。
「久しぶりだから何話せばいいのか分からないな」
「そうだな」
なんとか会話をしようとする颯太だったが、河上はあまり乗り気はしてない様子だった。
「あのさ」
「なんだ?」
「悪かった」
「ん?何が?」
「いや、心太が帰ってきてるいのに知っていたのに話さなくて」
「いや、謝るなら俺のほうだろ。何も言わずに海外に行ってそれっきり連絡もしなくて悪かった」
「そうだな、それは怒っている」
「悪かったよ、携帯壊れてどうすればデータが戻るのか知らなかったし」
「あっちで何やっていたんだよ」
「颯太なら言ってもいいけど、時間がある時にゆっくり話したい」
「そっか、まあそれならいいけどさ。これで文化祭どうする?」
「まあ、俺はどっちでもいいけど」
「じゃあ周るか」
「そうだな」
これで河上と颯太の確執はなくなったのであった。