2015年8月31日(月曜日)
ぶっちゃけよう。
大異変のとき告白された頃は、まだ聖奈に対する気持ちは〝向こうが好きだって言うなら付き合ってもいいかな~〟程度だったが、一緒に暮らすうちにすっかりおれもあいつのことが気になるようになってた。
ヘレナが成長して局所的異変もほぼ制御できるようになったのを期に、聖奈まで家を出てっちゃったわけだけど。
まあ。異変の心配がなくなれば付き合ってでもいない限り同居する必要はないし、しょうがなかったよ。詩江里ギュスターヴ……いや法律の関係でどっちも元の名字だったな。彼をからかうのは大学で厳しくされたときだけにしとこう。
――そのギュスターヴ・ドゥミ教授も念のため聖奈はそばにいた方がいいって判断したし、家族だからな。ヘレナも聖奈の姉妹みたいなもんだし、二人はあちらの家に帰ったわけだ。
同居してる間も幸か不幸かヘレナが歯止めになって男女の関係なんてなかったし、ラッキースケベな展開があったくらいだ。なのになんでこんなこと振り返って書きだしたかといえば、その、いやらしい話なんですが、……進展しちゃいましてね。
てなわけで、聖奈たちとは離れ離れになってからも一緒に遊んだりしてた。
今日も大学終わってから、学校帰りの聖奈とマンション前の公園で会ったんだ。通学路は途中が被ってるし。
あいつももう中三なのに、やぼったい私服姿のおれとセーラー服で並んでベンチに座ってるとやっぱ歳の差を感じるよ。半分ロボットなせいで外見が老いないヘレナと並ぶともっと感じるけど。
んでその公園でだ。
今日は人も少なくて、着いた頃はちょっとだけある遊具でまばらに遊んでた子供たちも夕方だからかすぐ帰って、お互いの生活状況を話したりしてたおれたちもだんだん静かになって。いかにも、な雰囲気になったわけ。
したら短い沈黙のあとに、あいつから手を繋いできたんだよね。
顔見ても、恥ずかしそうに俯いてるだけだし。今だと思ったよ。
最初にあいつから告ってるんだから、こっちもいいかげんはっきりしなきゃってな。だから、
「……聖奈。前に大異変のときにさ、おれに告白しただろ」
って具合に語りだしたよ。そしたら、
「なっ」って、真っ赤になってこっち向いた聖奈は、「なななななななな、なに。それがなによっ! なになに、なんなのよッ!!」
みたいに過剰反応したわけだ。こっちも焦って、「ま、まあ。もちつけ」とか超絶古いなだめかたしちゃったよ。
なにせ、同居し始めてからしばらくはこの話題出すと必ず聖奈は暴力とかでごまかしてたし、時間が経てば今度はおれもあいつを意識しだして逆に口にしにくくなってたんで、久方ぶりの題材だったもんな。
でも、あいつは昔ほどには食って掛かってこなかった。だから、改めて告ったね。
「おれも、おまえのこと好きだよ」って。
そしたら、
「……え、ホントに? ……べ、別に、あんたなんかと両想いになっても嬉しくなんかないんだからねっ!」
ってこれまた懐かしのツンデレみたいに、いちおう受け入れてくれた。
そんなこんなで、それ以上は恥ずかしくて会話も進められずに、二人でしばらく照れ笑いとかしてたんだけど。いつしか雰囲気も高まってきて、顔を近づけ合ってさ。
その。キス、したんだよね。
「聖奈……」
「祝馬……」
って顔を離しても甘い温もりが残ってて、互いの名前を囁いちゃったりして。いかにもなとこに、
「コホン」
と、覚えのある咳払いが割り込んだわけだ。
聖奈とおれで動転してそっち確認したら、いましたよ。
いつのまにか目近に立って観賞してた、スーツに眼鏡の紳士っぽいおっさんなギュスターヴと、小学校の制服っぽくアレンジしたウェアラブルスーツ纏った幼げなヘレナがな。
……もうね、だいなし。でもかっこいい思い出だけ残したいんで、本日の記述はここで終わり!