「状況はどうなってる?」
「OMSとRCS系統の異常で、オービタの姿勢制御ができなくなっています。ペイロードベイは開いていますが、太陽熱に対する冷却には足りません」
「TPSに破損は?」
「ありません。PASSにトラブルが発生している模様です。キャビンの室温は40℃を超えました」
「スペースシャトルは現在どの辺りにいるんだ?」
「南太平洋上空です」
「ハワイの追跡ステーションと接続してみろ。バックアップシステムはどうした?」
「機能しません」
「テレメトリでこちらからシステムを操作できないのか?」
「だめです。まるで、何者かが波長を変えて送信を阻害しているようです」
『――こちら機長! ヒューストン! ヒューストン、聞こえるか?』
「こちらヒューストンの管制センター、どうしました機長!?」
『……信じられない、機体の姿勢が正常に戻っていく。誰かが船体を押してるみたいだ。……あれは、天使だ!!』
「なんです?」
『天使だ! 白い衣をまとって翼を生やしてる。頭上には光の輪があって、何人もいる。アーメン、神はおられたぞ。機体を天使たちがもとに戻してくれている。……大変だ!』
「こちら管制。なにがあったんですか!」
『反対側に悪魔もいやがった! これまでのシャトルの異常は奴らが――』
「どうしました機長? 機長! 応答せよ!!」
「通信が途絶えました」
「各地の天体観測所から連絡が入っています! オービタの周囲に多数の飛翔体を確認、あちこちで星が消えているそうです!!」
「……は? なんだそれは、いったいなにを言ってるんだ!?」