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日記2

 悲報。

 ……約三年ぶりだな。

 ああ、間違いない。――大異変だ。


 ……どうも、南方祝馬だけど。なんでだ。

 なんでだ、なんでだ、なんでなんだよぉッ!? また大異変起きやがったよ!


 今度は大学にいたんだが、講義聞いてたらだんだん周りが、ざわざわ、してきたんだよね。賭博場みたいに。――行ったことないけど。

 で、そんときの教授の話が唐突に止まったんで訝しんだら、こっち見上げたまま固まってんの。したら、大学のあの階段上の机上を、「いえーい♪」とかほざきながら上から順に飛び移って降りてきたんだよね。――全裸の小さいおじさんたちが。


 教授が真っ先に逃走したよ。ギュスターヴだったらそんなことしなかっただろうけど、彼は運悪く今日休みらしい。お蔭でみんなもパニック。

 高校時代からのキモオタな友人筆頭に、「イワウマ氏、早く逃げるでござる!」とか腕引っ張ってくれる奇特な人たちもいたから、仕方なくいったんおれも教室出た。


 けど、途中ではぐれたふりして手近な部屋に飛び込んだよ。幸か不幸か、みんなは避難したらしくてそこは無人だった。

 なんでそんなことしたのかといえば、この状況はたぶんまたおれらにしか解決できないだろうからだ。なのにスマホで日記書いてる場合かって?

 だってゾンビになったときのために生きた形跡を……じゃなくて。電話もなにもかも、聖奈にもヘレナにもギュスターヴにも繋がらないからだ。


 にしても二階のこのコンピュータルームからでも、あんときみたいに魑魅魍魎が跋扈ばっこする街がいくらか窺えるね。逃げ惑う市民とか、立ち上る煙とか、響き渡るサイレンとか。もうね、トラウマ再燃だよほんと。

 前回は直視する前にカーテン閉めた、ティラノサウルスっぽいあの怪獣と亀っぽいあの怪獣がビル群なぎ倒しながら決闘してんのまで目撃しちゃったし。やっぱ太陽も月もなくて、ミディアムレアみたいな空だし……


 ん?


 前回とは違うな。なんかところどころの空に、白と黒の染みみたいなのがある。

 アメーバみたいに蠢いてて、ちょっとずつでかくなってるような……。なんなんだあの靄は?

 ……いや。街の中にも、大学の敷地にもまばらにあるな。


 とりあえず日付は、2015年9月23日。時計はやっぱみんな0時で止まってるらしい。

 なんかの予言で危ないってされてた年と月だからか、でももうヘレナはそんなことできないししないはずなのになんで?

 だめだ落ち着け。今回は前よりだいぶ事態を把握できてるはずだし、


 ――そうだ、おれもパニクってたな。とっておきの連絡手段を忘れてたよ。

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