踊り場からの扉開閉。
祝馬、聖奈、ヘレナ、屋上庭園に侵入。
「窓の外が全部真っ暗なわけじゃないようね。ここからだと、空も街もまだ見える」
周囲を見回しつつ、聖奈が分析。
「白黒の靄のせいか」祝馬も付近を窺って言及。「どっちにしろ、研究所が包まれそうな勢いで拡大してんな。で、さっきのレポートについてもよく意味わからんし、なんで屋上に来たんだ?」
「案内した理由については、白黒の靄が完全な無だからです」ヘレナ、応答。「局所的異変すら阻みます。それが中央ホールの通常の出入り口を、全て塞いでいる状態ですので」
「でも」付言は聖奈。「天窓は大きいから、未だ室内と繋がってるんじゃないかって思ったわけよ」
「なるほど」頷いて、祝馬が発想。「パリ支部の中央ホールと同じ構造の天窓か。確かに、侵食が及びきってないみたいだな」
警告、北西方向に
「って、うおおおい?!」
祝馬、物体の放つ音から逃れるように転倒。
「なにびびってんのよ」それを見下ろした聖奈が呆れ。「情けないわね、あのジェット機みたいなのの音よ」
「い、いやあ。研究所の天窓の上で轟音って、前回のトラウマだからな」
「……すみません。そうした心的外傷は前回暴走したわたしが要因でしょう」
ヘレナ、謝罪。
「謝ることないわ」聖奈、頭を振ってフォロー。「イワウマがヘタレなだけだもん。……ま、まさかあれ、こっち来ないわよね?」
「北東方向に遠ざかりつつあります。あの戦闘機編隊はユーロ・タイフーンですね。機体に世界地図のようなシンボルがペイントされていますが、異変ではなく通常のイギリス空軍でしょう」
「そう、じゃあ行きましょうか。……ノートがあるわね」
祝馬、起き上がりつつ、天窓手前のノートを確認。
「……前みたいに、正解ルートだからあるなんかのヒントか?」
ノートに聖奈が接近。取得して黙読。
「パパによる観察記録か」聖奈、独白。「やっぱり、これが理由だったのね」
「だから、厨二病みたいな思わせ振りな独り言はいいよ。どういうことだってばよ?」
天窓から、聖奈が中央ホール内を覗く。
「そうね、またちょっと解説してから行きましょう。やっぱり、彼らしい人影も窺えるし」