「――こちらアースナイツ。北海上空、ターゲットを視認」
『こちら司令部。ナイト1、それが観測されているうちヨーロッパ最大の〝白黒の靄〟だ。攻撃準備にかかれ、幸運を祈る』
「了解、スタンバイ」
『ユーロ・タイフーン全機、ミサイル発射準備完了。ヨーロッパ、中東、ロシア、及びアジア各国の部隊も完了です』
『攻撃開始!』
「アースナイツ、攻撃開始。ナイト1、フォックス3!」
「ナイト5、フォックス3!」
「ナイト14、フォックス3! ……だめだ、効果なし」
「ナイト1よりアースナイツ全機へ。
「ナイト5、了解。アスラームに切り替えます」
「ナイト1、目標ロックオン。フォックス2!」
「ナイト5、フォックス2! ……ちくしょう」
『攻撃失敗、ミサイルは靄との接触面で消失』
『くそったれ! やはり無意味なのか』
「――五時の方向にボギー、未確認飛行物体複数視認」
「あれは、ハーケンクロイツだ! ナイト5、六時だ! 避けろ!!」
「フォックス4だとッ!? ナイト5、ブレイク! ――うわあ!」
「あの円盤、ナイト5に体当たりしても無傷だ! ――こちらナイト1、逆鉤十字の描かれた円盤型飛行物体に攻撃を受けてる!!」
『レーダーにもいきなり現れた。鉤十字の円盤というと、ナチスか!?』
『大陸方向からだがありえない。他の国連軍からの報告にある伝説の具現化だろう、円盤との交戦を許可する!』
『全機、円盤との交戦を許可する。繰り返す、交戦を許可する!』
「こちらナイト1。円盤は敵だ、迎撃体勢をとれ!」
「了解。ナイト14、フォックス3! ――だめだ、半透明のバリアみたいなもので護られてる!!」
「レーザーのようなものも撃ってくるぞ! ――ぐあぁッ!!」
「くそっ。円盤野郎、慣性を無視して動きやがる!」
『またやられました、続けて三機!』
『敵の機影、こちらの数倍はいます。およそ数百!』
「ナイト21、後ろだ! ――あれは!?」
「なんだ?! こちらナイト21、光球状の飛行物体に救われた! 球状物体は曳光弾のようなもので円盤を撃墜! あちらも攻撃を受けてるようだ」
『将軍。ローマの枢機卿を始めいくつかの主張で、特定の異常現象は人間の味方をする傾向にあるとの情報が入っていますが』
『把握している。だが一貫性がなく、さらなる争いを招くとの報告もある。エルサレムなど酷い状況だろう』
「こちらナイト14。新たな機影を目視、目近をかすめたがギュスターヴ・ドゥミに似ていた。円盤の攻撃を受けてるが機銃照射のようなもので蹴散らし、球状物体を狙ってる。どうする?」
「ドゥミだと、ノーベル賞受賞者のか? こちらナイト21だが、球状物体を視認したとき中に人影を複数捉えたぞ。一つは詩江里聖奈に似ていた」
『有名人が生身で飛行して親子喧嘩などするか! 異変だ、惑わされるな。目撃されてるフライングヒューマノイドみたいなものだろう』
「こちらナイト6、球状物体に円盤から救われた。すごい戦闘力だ、もう数十機は墜としてるぞ!」
「ドゥミ型はなにもしてこないが、球状物体を追跡してホーミングミサイルのようなものを撃ってる。球状は回避してるが、危なそうだ。せっかくの味方なのに!!」
『さらに二機墜とされました! 将軍、我々では敵いません』
『……一か八かだ。――球状物体を援護せよ、ドゥミ型を新たな敵と認識する!』
『はい! 全機、球状物体を援護し、ドゥミ型を攻撃せよ。クライン8、クライン17、球状物体を援護せよ!』
「クライン8、了解。フォックス3!」
「クライン17、フォックス3! ……キル!」
「ドゥミ型に命中。……見ろ、球状物体内の人影が手を振ってる!」
「こちらナイト1。球状物体から無数の光線が発射された!! ――敵円盤を追尾、命中。貫通して蹴散らしてるぞ!」
『敵円盤、全機消失。数百機全部が撃墜された模様です!』
「やったぞ! ――球状物体は急上昇、見えなくなっていく」
「あれは、……ちっ。ドゥミ型が煙から出てきた、ぴんぴんしてやがる! 球状を追っていく」
「我々ではどうしようもない高度だが、援護射撃で両者間の距離は開けた。事情は不明だが、助力になれたと信じるしかない」
「賭けが功を奏したな。枢機卿らの訴えは正しかった、有効な対策の可能性として世界に伝えよう!」
『よし。こちらに味方する異変とは、敵対異変との戦いで共闘を試みてみるよう周知しろ。もしかしたら助けになるかもしれない。少なくとも、人類同士が些細な違いで揉めている場合ではないとな!!』