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第11話 封鎖

不味まずい情報が入ってきた! シゴクと次の都市レナウンに行く間にあるマティって都市の近くにある遺跡なんだが、こちらとの距離も近くてその街道沿いに死霊があふれ出ているらしい。俺の聞いた話だと、死霊共の首領はデスソウルイーターらしい。レナウンに行こうとしていた隊商からの情報だ、確定情報だと見ていい。どうする?」と『ゲルハート』が皆に聞いた。


「デスソウルイーターってソウルイーターの上位種のやつでしょ? その情報確定なの?」と『セリア』が『ゲルハート』に聞いた。


「道を封鎖している死霊騎士からの伝言らしい。いわく、『この道はデスソウルイーター様の通る道だから引き返すなら手出しはしない』とその隊商に言ったみたいなんだ。えらく、信憑性しんぴょうせいとぼしい情報だが、戻ってきた隊商が居たんで聞いてみたら本当にそうだったらしくて、そいつら死霊騎士のいうことが本当なら間違いはねえということらしい。但しマティ遺跡は発掘がすでに終わっている遺跡だから、明かに何者かに呼び出されないとそんなことは起こり得るはずがない。悪魔か魔神でも付いて居るんじゃないか?」と『ゲルハート』はいい切った。


「下位のデビルにできる事じゃないわ、最低でも中位か上位のデビルか下級の魔神がいないと起こりえない状況よそれ」と『セリア』はありそうだが嫌そうなこととしていった。


「でもなぜかしら、かなり作為的な状況も感じるけど。手引きしてるのが王都に潜伏する上位のデビルか上級魔神のでも居ないと説明がつかないわ。それに対象はダレ? まさか私たち?」と『セリア』はいった。


「でもそれなら、御大自ら出て来て蹴散らせば済む話よね?」ともいうのだ。


「それに王都の状況はそうなればかなりの冒険者が居るはずだから、ランク二十や三十の冒険者が気付かないところにでも居ないと……まさか王宮に居るのかしら。だとすると、かなり危ない橋をたくさん渡ることになるわよね。そこんところ分かってる?」と『セリア』はいった。


「とりあえずは王都に入ってみないと状況が分らんぜ? それに王宮のヤツが居るとしたらなぜ俺らに手配書を出さない? 理由なんて幾らでも付けられるだろうが」と『ゲルハート』は反論した。


「理由なら一つあるわ、『ウィオラ』ちゃんよ、強大な軍事力を誇るヴェルゼニア王国を敵に回したくないから『ウィオラ』ちゃんを名指しできないんじゃないかしら?」と『セリア』はいったのである。


「フレイニア王国の軍事力はたかが知れてるわ、対してヴェルゼニア王国の軍事力は大陸一、とまで言われるくらいなのよ。下手ににらまれでもしたら、何か計画が、あったとしても全て終わりよ。そこじゃないかしら手下を次々と回す羽目になっているのは」とまで『セリア』はいい切る。


「それなら、小物がちょくちょく現れる理由も分からなくはない、けどなぜかしら。私たちである理由が今一つ思いつかないわ? まさか、『ウィオラ』ちゃんの師匠がトリガーになっているのかしら、一番弟子とも言われる者が王都目掛けて一直線に降りてくる。確かに三年間も教わっていればそうとも言われそうなものだけど、あの人長くても数週間しか教えないから……」と『セリア』は感慨深げにいった。


「あくまでこの状況を見て楽しんでいる者が居るのかしら? それならさらに複雑になるけれども、魔神や悪魔の中にも権力争いはあるでしょうから」と『セリア』はいった。


「で、当面はどーするんだ、俺の勘じゃどちらにしてもそいつらと激突する未来しか見えないんだが」と『ウィーゼル』はいった。


「行くしかありませんね」と私もいった。


「どのみち激突するなら、街に影響が出ても遅いですから。そのデスソウルイーターがあゆむ道ってことはその先にある街に影響があるって言うことですよね。ではなおさら急がないと!」とも続けたのであった。


「ま、今はそうよね、レナウンに被害が出てからでは遅いし。泊まる宿が無くなっちゃう」と少々ふざけ気味だったが、『セリア』はそういったのであった。


「出ましょうか?」といって私は荷物を背負った。


「おう!」と『ゲルハート』もいった。


「俺も!」と『ウィーゼル』は答えた。


 そして宿賃に払おうとすると、「すでに警備隊長からいただいています。今回の分の非礼だとかで」と宿のおかみは少々困惑気味でいったのであった。


 一礼すると馬車の方に行った。皆私の後に続いたのであった。


 馬車の方にも置手紙があり、「全装備すべて新しくさせていただきました。水や酒と保存食は出る日に積み込ませるような手はずになっておりますので、先日の非礼の分と思ってお納めください」と私が手紙を読んでいる際に、水や酒と保存食の新しいものが積み込まれていったのである。


 そしてシゴクの宿を出る際には従業員総出で見送られたのであった。

 それには、馬車の後ろから、手を振って答えたのである。


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