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第20話:監視者

 みんなで移動を開始した。


 駆け足くらいの速度である。


 大体軽くランニング手前の速度、といったほうが分かりやすいか。


 それから十五分くらいして、そいつらが円陣を組んでいる手前の丘までやって来たこの丘を越えれば円陣に接することができる。


 他のヤツは避けるような行動をとった奴以外にはいなかった。


 直線状にいて邪魔になりそうだったヤツだけが、自らその場所を退いたのである。


 まるで接近戦は苦手です、とでもいうかのようだった。


 円陣は、崩れることも欠けることもなくそのままだった。


 逃げるようなことはなかった。


 逆に不気味であった。




「ココからは相手も本腰だと思う、エンチャントはそのままだから思い切って行っていいわよ」と『セリア』がいった。


 三つ目の魔法はエンチャントだったらしい。


 そしてさらにその上からハイエンドエンチャントとダブルプロテクションをみんなにかけたのだった、詠唱をする仕草で分かったのである。


 私もアナザーソードを三人掛けした。


 私と『ゲルハート』と『ウィーゼル』の分である。


 私の術の多くは一度唱えたら、後は放置しっぱなしのものが多かった。


 今三人掛けした術、アナザーソードもそうである。


 一時間くらいは平気で、効果が持続するものだからである。



 その間に『セリア』がフクロウを作った。


 そして空に飛ばし、空の目としたのであった。



「さっきの悪魔と大差なさそうよ」と『セリア』がいった。


 私は先頭を走りだした、みなもそれに続く。


 丘を越えた、円陣が見えた。


 円陣を構成するものは、悪魔であった。


 さっき? というモノは私には無いので、コレが初になるわけだ。


 円陣まで一気に寄って、接敵する。


 そのまま戦場居合で斬り抜け、円陣の中に入った。


 ただ円陣の中には何もなかった。


 召喚陣があるわけでもなく、魔法陣が書いてあるわけでもなかった。


 視界の右隅にある矢印が反応した、飛び上がって前を指し示した。


 矢印は黄色から赤に変わっていた。


 さっき斬った時には、いい手ごたえがあったのでそのまま前に進んで進行方向を見た。



 さっきまで何も居なかった空間に、一体新たな悪魔が存在していた。



 その悪魔は斬り捨てた悪魔と比べると、いびつさを感じさせた。


 全身に目が生えていた。


 というか皮膚全てが目だった、と表現するのが正しいのかもしれない。



 私が注目していることに気付いたのか、全身の目を総動員して眺めて来るのである。


 よからぬ感覚、というのが走った。


 そのまま一気に接敵すべく跳躍して円陣を飛び越し、ソイツ目掛けて地を蹴った。


 後ろでは乱戦模様になっていたが、後ろまで気が回るわけではない。


 『セリア』の悲鳴が聞こえてないということは、乱戦模様でも後衛の安全が確保されているということに他ならなかった。



 目の前の悪魔に集中する。


 その悪魔の強さが、よく分らなかった。


 危険を承知で飛び込んだ、踏み込んで正面から斬り倒そうとする。


 斬り倒そうとした瞬間に、ソイツは長い鋭利な刃を両手に生み出し交差受けしてきた。


 一刀流と二刀流では差が出る。


 そう思ったので私も二刀流に切り替えた。


 威力は若干落ちるが仕方ない、今は火力よりも堅実性を優先すべき時だ。


 そう思った。



 両手の刀にイリュージョンウェポンをかける。


 幻影をまとい刀身が見えなくなった。


 そのついでに、コンタクトチューニングもかける。


 ソイツが身をよじらせ抵抗しようとした。



 が遅い、同調させた。


 ソイツは両手の刃を振り回し、がむしゃらに突っ込んできた。



 そんな手に乗るほどお子様ではない。


 いったん引きレギュラービハイベァを唱えた、私側にかけられた不利な部分が吹き飛んだ。


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