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第21話:悪魔の中の悪魔

 ソイツはジリジリと後退していた。


 優位な条件でないと戦えないのだ。


 不利な条件となった段階で下がっていくのであった。


 だが、その下がるのも窪地であるため限界があった。


 壁のようにソイツの後ろに、坂が立ちふさがったのである。



 ソイツは坂に足を取られて転倒した。


 坂を上がるのに失敗したらしかった。


 だが問答無用である、私は二刀両断にすべく行動した。



 坂がすぐ後ろにあるため、斬り抜けられなかったので踏み込んで斬り倒すことにしたのだ。


 ソイツは全力で回避をしようと試みるが、アヴォイダンスを唱えくじいてやる。


 そして、そのまま二刀両断に斬り倒した。


 後ろの乱戦も片が付いた様子だった。










 だがソレは、産み落とされるように、私の背後に落ちた。



 肌で、感覚で分かった。


 この前の、赤い目のヤツよりも危険だと。


 直ぐに引き返した。


 しかし味方と合流することは難しかった、味方との間にソレがいるのだ。



 ソレをかわして移動するのは無理があった。


 かなり大きいのだ。


 味方はソレに隠れてしまって、見えない。



 ソレの意識を、こちらに向けさせる必要があった。



 リベリオンを踏み台に、ライトニングブラストを唱えた。


 ソレがこっちを向いた。


 巨大な赤子を思わせる明るい肌色の図体ずうたいと短い手足、ただサイズがスケールが大きかった。


 ただ眼は開いていないようだった。


 ソレが振り向いた直後、空間を裂いて何かが飛び出した。


 緊急回避として跳躍移動回避を実行する。


 さっき居た場所には、材質は何かわからないが漆黒の槍状のものがザクザクとかなりの数が突き刺さっていた。


 避けていなければ場所ごとつらぬかれていたであろう。


 生半可な防御はかけるべきではないと思った。


 またソレの槍状武器のほうがリーチが長いため、後退を余儀なくされた。


 そして詠唱している暇もないほど、絶え間ない攻撃なのだ。


 術はしばらく打てないなと思って、ギリギリの回避を続けていたのだ。



 それに、射線すら確保できないくらいの速さの攻撃であるのだ。


 詠唱こそ必要ないが、唱える暇がないというのは射線を確保できずソレを見る暇もないこういった状況だったからに他ならない。


 空中にまだフクロウが飛んでいることは、地上に落ちた影でかろうじてとらえられた。


 それはつまり、『セリア』はまだ無事だということであった。


 しかしなるべく空中にいる時間を少なめにするべく、フライトで落下時間を短縮して回避を実施するしかなかった。


 さらに回避の作法である歩法を知って無かったら、詰んでいたことであろう。


 しかし反撃は行ってはいるが、一向にソレの使う得物の威力が落ちるなどということが無いので反撃をなるべくしないように回避に重きを置いて実践することにしたのだった。




 不意にソレの背後で閃光が瞬いた。


 ギガスマッシャーと思われる、閃光であった。


 たぶん『セリア』が仕掛けたのだろうと思われた。


 瞬間、隙ができた。


 その瞬間に私も仕掛けた、リベリオンを踏み台にライトニングブラストをまた唱えたのである。


 射線が、しっかりと確保されたからであった。


 今度はソレが空に向かってえた。


 今度こそ確実に入ったようだった。


 そして隙が、これ以上にないくらいに空いた。


 仕掛けるタイミングは今! 魔導剣にライトニングブラストをまとわせて維持した、アナザーソードも上掛けする。


 赤子の首と思しき部分を切り上げるようにすり抜けながら、味方のところまで一気に駆け抜けた。


 フライトで跳躍をコントロールしながら、いったん上に駆け上がってそれから着地を速めにしたのである。


 この方法以外では味方と合流できないと思われたのだ。


「『ウィオラ』無事だったか?」と『ウィーゼル』がいった。


 回復魔法の準備を終えて、いつでもかけられるようにしていたようだった。


「私は大丈夫です! みんなは大丈夫でしたか?」と聞いた。


「俺は生きてるぜ!」と『ゲルハート』が答えた。


「私も大丈夫よ」と『セリア』が答える。


 だがまだ終わったわけではなかった。


 ソレがこっちを向いて目を見開いたのだ。


 その目もまた、紅かったのである。


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