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第5話 伝説の乙女

 そして『セリア』の話は続く。


「ギルド直轄地にも縁のある人物なの、だから私も少し知っているんだけれど。伝説だけね」と『セリア』はいう。


「その伝説も尾ヒレはなく真実みたいだから、本当に伝説の人物っていうことになっているんだけれど」と続ける。


「乙女は分かるんですが、そんなに私に似ているんですか?」と聞き方を変えることにした。


「それは間違いないわ、金の流れるような長い髪、紫の瞳、色白の肌、そして白の装束、そして美しい容姿。流通貨コインになっていても、おかしくない人物よ」と『セリア』は答えた。


「勇名が強すぎて、偽物は出なかったらしいんだけど。なにかを討伐した! と言う勇名が数多くあるの。今の私たちみたいに。ただパーティーを組んでいた、という話は聞かないけれどもそれでも勇名が多すぎてよく分らないくらいなの」と続けていったのである。


「すげえ話だな」と『ゲルハート』がつぶやいた。


「その中でもとくに有名なのが、フレイニアの建国にたずさわったという話なの。だからフレイニアでは、建国の七人の中に数えられていて有名なの。そしてヴェルゼニア王国の要人の娘であったって言うところまで、『ウィオラ』ちゃんとそっくり同じなのよ」と『セリア』は締めくくったのである。


 そして『セリア』が、エッシャレオンを口にした後アイスカウフィーを飲んで一服した。


「それでヤツラは固まったり、ビビッて何もできなくなったりしてたわけか」と『ゲルハート』はいった。


「そりゃ、超有名人ですって目の前で言われてるようなものじゃしなあ」と『ウィーゼル』はいった。


「確か神殿の覚書の中にも、白き伝説の乙女じゃと思われる記録が残っているくらいじゃからな」と感慨かんがいぶかく続けていった。


「まあ、『ウィオラ』ちゃんはいつも通り振舞ふるまえば、問題は出ないと思うけど」と『セリア』の一服は終わったようだった。


「ヴェルゼニアにも勇名はとどろいているんでしょうか?」とふと私は気になったことを聞いた。


「どこの誰がってところまでは分かってないとは思うけど、白き伝説の乙女が現れたっていうことくらいは知ってるんじゃないかしら? 冒険者ギルドの情報網だとそれくらいかしら」と『セリア』はいう。


「確かに、まだどこの誰がっていう話は通じてねえと思うぜ」と『ゲルハート』は自信ありげにいった。


「それならば、ルートはえて変えないほうが良さそうですね」と私はいった。


「どういうルート通るの?」と『セリア』は聞いた。


「ディルサイプからロンド、シスタ、レセプトとフレイニア王国を通ってオリオンからヴェルゼニア王国に入って山越えした後、ヴェルゼニアの王都を経由してディオーネ、エフェメリス、そこから北に向かってギルド直轄地まで入るコースです。大都市の名前しか挙げませんでしたけどそれで行けるかなと思っています」と長々と話したのであった。


「確かに無難なコースね、問題は無さそうだわ」と詳細地図を見ながら『セリア』はいった。


「山越えはこの前のルートかい?」と『ウィーゼル』が聞いたので「一本東側の少し難所の多いコースですが、問題なく通れると思いますよ」と答えた。


「それなら安心だな、ヴェルゼニア王都ヴェゼルニアに行けるなんて滅多にないからワクワクするな」と『ウィーゼル』はいった。


「と、そういえば『ティナ』と『アルカナ』は何か質問ある?」と『セリア』は二人に聞いたのであった。


 『ティナ』はおそるおそる聞いた「要人って、お姫様ですか?」と。


「当たらずといえども遠からずってところかな」と『セリア』は答えた。


「ヴェルゼニアじゃとお姫様というよりはお嬢様かな? 他国だとお姫様じゃと思うんじゃが」と『ウィーゼル』はいう。


「俺も最初に知った時は、度肝どぎもを抜かれたからな」と『ウィーゼル』がいった。


「ヴェルゼニア王国上級伯爵にして内政官交通大臣の娘さんだから、ヴェルゼニア王国では伯爵よりも位が上で侯爵と同じ地位を持つ上級伯爵の娘さんだからな。王位を持っていないというだけでお姫様と同じさ」と『ゲルハート』が話した。


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