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カシーゴ・レンジャーネクサスⅡ

Introduction VII.歴史家ウルフビョルン著『ルカリシア全史 テーマ史 ~個有能力~』より

 ……ルカリシア人類ホモ・ルプスの特性として、個有能力ユニーカの行使が挙げられることを読者諸氏は不可思議に思われるかもしれない。我々、人間には呼吸することと同じように、個有能力の行使が可能であるからだ。


 しかし、この個有能力の行使が確認されている生物種は、ルカリシアにおいて極めて少数であることも事実である。人類の変異体である黒狼は例外であったとしても、古い文献を紐解く限りにおいて、太古のルカリシアの空に君臨したとされる“白き翼”なる存在による個有能力の行使は、ほぼ疑いの余地がない。

 この“白き翼”に関する資料は驚くほど少数であり、一方、中世の文献において“白き翼”を指すと思しき文献を、私は自らの目で確認した。これらのことが指し示す帰結を考えると、空恐ろしささえ感じてしまう。


 さて、主旨が逸れてしまったが、個有能力が人類に計り知れない叡智をもたらしたことは読者諸氏のよく知るところだ。我々の文明は個有能力を持つがゆえに発展したと評価しても差し支えない。


 個有能力ユニーカの生物学的特徴は、専門家諸君に譲るが、歴史的観点から見れば実に興味深い考察が可能である。すなわち、「歴史的転換点」と呼ばれる時期において、特異な個有能力を持つ者が活躍したという事実だ。このことは人類史において繰りかえし見られてきた傾向であり、また、時代が経るごとに頻度が下がっていることも確認されている。……


※註釈……本文中には、現代において差別用語となる語句が含まれるが、原文のまま記載した。

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