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こじつけの先に

「――ピザ屋か。しばらく顔を見んかったもんだから、いつ運ばれてくるか、みなで賭けていたぞ」

「そういうドクター・ファレルは、どちらにBETしたんです?」

「フン。言えるかい、そんなもん。……で、なんの用だ? 知ってると思うが、ここは見物人をつれてきていい所じゃないんだがな」


 見るからに着古した感が否めない、ヨレヨレの白衣を纏った禿頭。その丸眼鏡の奥から、刺すような視線が向けられてきていた。

 紹介されるのも癪だと思い、デレクは、「ども。研修生のデレク・アレンっす」と軽く目礼する。

 が、白衣の禿頭は一顧だにせず、チームリーダーに咎める視線を向ける。


「研修生だと? いったい、何を考えてる。〈バッズ〉が要らなくなったんなら、他所でやれ」

「元から〈バッズ〉は着けていませんよ。僕たちは、広いレンジャーネクサスの中で迷子になって、たまたまここに行き着いたんです。ですから、ただの一般人です」

「で、お前は? こいつに付き合ってると、アカデミーから放り出されるぞ」


 ようやくこちらへ目を合わせたファレルの目は、至って真剣だった。

 その目に、見慣れた“曇り”を見て取って、デレクは確信した。


(……この人も、身近にスペクター化した人間がいるのか)


「オレのユニーカは、物体の構造を変えられる。リーダー……キムさんから、ドクターの役に立つかもしれないと聞いて来ました」

「……何。構造変化のユニーカだと? どのレベルまでいける?」

「一回しか試してないっすけど、〈コア・エモ〉をバラしかけて――」

「――ついてこい!」


 ファレルが背を向け、走るように進んでいく。

 横へ目を向けると、頷いたチームリーダーが先を促すジェスチャーを示していた。

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