「――スペクターと市民の数が多い。手早くやるぞ。ルー、状況をまとめてくれ」
「わかったわ。……キャンプ・グランド・ローズウッドで複数のスペクター反応。センサの
「強襲って、あたしたち以外にいたっけ?」
「いるわよ? エリーちゃんが苦手な熱血チーム、〈オニキス・バーガー〉とかね」
「げっ。冬でも暑苦しいあれかー」
「もっと暑苦しいやつがここにもいるぞ?」
救助艇〈ハレーラ〉の操縦室。
ブリーフィングに集ったチーム〈チョコレート・ライトニング〉の面々のうち、茶黒い巨躯――マロカが、得意の自虐ネタで両腕を広げてみせた。細めた深海色の目が、『同僚たちをそう言うな』と諫めていて、リエリーは肩をすくめてみせる。
「パイロット、到着はいつだ?」
「約4分」
「よし。なら、本件の分析を聞かせてもらおうか、レジデント・リエリー」
つい、口角が吊り上がっていた。
救命活動に向かう機内で、救助艇を操縦しながら状況を分析する。おおよそ、他の威療助手には真似できない高度な指示がチームリーダーから下され、リエリーは嬉々として声を張り上げた。
「りょーかい。反転感情〈
「個性的かどうかはともかく、M3のスペクターは、ユニーカが複雑化することがたいがいだ。俺たちレンジャーにとっちゃ、危険極まりない
「他のネクサスなら、最低3チーム合同の救命活動になるんだけど、
「役割分担だってば。あたしとロカは、“
「リーダー? 部下があんなこと言ってますけれど?」
「うん、そういう捉え方もできるってわけだな」
「もぅ、甘いんだから。二人とも、安全第一ですからね! 無茶したら、反省するまで食事はベジタブル・オートミール限定にしますよ」
「なあ、ルー。せめて、チキンくらいは入れてくれんかな……」
「着いたよ!」
公園の駐車場、その開けたスペースに着陸し、リエリーは素早く操縦席から飛び降りた。
同時に、手首の操作ダイヤルを捻じ切り、〈ユニフォーム〉を
「準備は? リーダー」
「お先にどうぞ、相棒」
どちらからともなく拳を突き出し、軽く打ち合わせる。
「ルー。サポよろ」
「ええ、任せて。――
送り出す言葉に背を押され、リエリーは操縦室の開閉ボタンを叩いた。