『――こちら、チーム〈
「レンジャーネクサス、了解。お疲れ、レンジャー・セメノフ。〈コア・エモ〉
『くっそっ! さき越された! ……失礼。司令室、〈JF〉リーダー・ジモバ、レンジャー・セメノフの〈ドレスコード〉を確認した。
『ククッ! 律儀に階段をつかうからですよ、チーム〈JF〉!』
カシーゴ
チーフオペレーター代理を努める旧友の視線を感じるより早く、ジョン・ハリス
「レンジャー諸君、ご苦労だった。君たちは犠牲者ゼロの立役者だ。意見なら、傍観しているだけの僕に言ってくれ」
『……これは言い過ぎてしまいましたね。失敬! チーム〈JF〉、ナイスアシストでしたよ』
『そっちもな。窓から突っこんでなきゃ、ギリギリだった』
現場の
と、コンソールを着用した左腕――ではなく、制服のポケットから振動を感じ取り、ハリスは頬をピクリとさせた。
そこに入っている端末は、いわゆる私用機で、司令室に立っている最中でも通知を許可している通信は限られていた。
幸い、旧式の液晶に表示されたのは凶報の文字列ではなかった。
(……さすがだよ。ここまで早く
誰にも聞こえない喜びの声を噛み締めながら、ハリスは再び救命活動の指揮へと、意識を集中させていった。
† † †
――同刻。
――
――その首都・西京都湾某所にて。
「……生命活動の停止を確認っと。任務完了っと。さあてと。帰ってメシにすっかと――っ?!」
あるいは、
どちらにせよ、ソロ威療士である
目の前の光景を――
ただ一つ確かなその己の使命を遂行するためだけに、奥土の体は全てのエネルギーを費やしていた。
「――滅ベ、エイユウノ仔」
よって、唐突に
そうして、
「――――」
死の淵から蘇った涙幽者は、己が身に起きた
当然、忽然と姿を消した涙幽者のことも、同胞ゆえに存在すら感じ取ることはなかった。
涙幽者はただ、涙幽者としての衝動に従い、滂沱の白泪を流しながら眼前に横たわる肉塊を貪る。
その血に濡れた禍々しい牙が、かろうじて原型を留めていたコンソールに触れた。
命を賭して奥土が結んだ、映像送信のコマンド。
その完了を待たずして、弱々しい光の残滓を投げ掛けていたホログラムが、完全に消え去った。