「…………?」
何の変哲もない、ただの田舎の一本道の集落道。
「一族の調査機関に調べてもらったところでは、あのバイクを停めた場所から
30分もすれば目的地、
だが彼女はすでに4,50分ほど歩き続けていた。
手持ちのペットボトルの水ももう半分だ。
「ふむ―――
すでに
弥月はきょろきょろと周囲を見渡し、ポニーテールがそれに合わせて揺れる。
「この程度であれば、狐か狸と言ったところでしょうか。
……えい!」
彼女は両手を上下左右に動かしたかと思うと、気合いを入れる。
しかし、
「―――?
え? 破れない?」
きょとんとする弥月の頭上から、くすくすと笑い声がする。
「……!」
そして笑い声は頭上だけではなく、道の両側からもするようになり、
「ちょっとみくびったようですね。これは
それに答えるように笑い声も消えて、
『うふふ……そういうあなたもただの人間ではありませんね。
こんな状況で冷静でいられるなんて』
『とはいえ、友好的ではないのは確かなようです。
このまま回れ右で帰ってもらえると、有難いのですが』
「あいにく、私も用がありますので―――
このままじゃどこを向いてしゃべっていいのかもわかりませんので、
出てきてくれませんか?」
『ふふ……『出る』というのならもう出ているじゃないですか……♪』
からかうような詩音の言葉に、弥月は微笑みを浮かべる。
「ではちょっと手荒になりますけど、出てきてもらいますよ。
―――
胸の前で両手の手のひらを絡ませたかと思うと、急に大声を発し、
『え? ええっ? くっ、こ、このぉっ!!』
空気がビリビリと震え、無風状態の中地面が微妙に振動する。
「ふ、ふーん。結構やるじゃありませんか。
しかし、私も引くわけにはいかないんですよ……!」
こうして普通の人間の理解を越えた―――
人と妖の力比べが始まった。