「うぅ……っ、い、いい加減にしてくれませんかね?
こっちは移動時間が長かったので、その疲れもあるんですし」
『そっ、そちらこそ諦めてくれませんか!?
ていうかあなた、
アタシ、人様に迷惑かけた事なんてそんなにありませんよ!』
彼女の異能の力と、
『ていうかあなた、どこから来たんですか?』
「私? 私は東京からですけど―――」
『えっ。いいなー、アタシも一度行ってみたい……
じゃなくて! アタシ東京なんて行った事ないですよ!
あなたにも迷惑なんて当然かける事は出来ませんし―――
それがどうしてあなたに狙われなければならないんですか!!』
詩音が疑問を口にすると、
「それが関わっているから不思議なんですよね。
ここに誰か、人間が来ているでしょう?」
『……っ!? まさか、ミツ様の……!?
それならなおさら、ここを通すわけにはいきません!!』
「まあ別に、無害という事がわかればいいんですけどね。
ただしこの目で確かめなければ―――」
弥月は胸の前で組んでいた両手をいったん離すと、また別の動きをして
空を指で切り、
「という事で……
ぶわっ、と彼女の周囲で風が巻き起こる。すると―――
『きゃあああああっ!?』
そこでフラフラになった詩音が、彼女の前に姿を現した。