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第97話・反応


前回のあらすじ―――

弥月みつきさんのお兄さんが鬼っ子にプロポーズした。




「うげ。兄貴そっちの趣味があったんですか……

 こりゃ東京に帰ったらゴートゥー家族会議ですよ」


「ちっ違う! 自分は外見だけ幼ければいいとうわけじゃない!

 見た目は若くとも年上であり、それでいて頼りがいのある

 お姉さんなのだ!!


 彼女―――ぬし様はまさに理想の女性!

 自分の人生はこの時のためにあったと言ってもいい……!」


兄妹が話し合うのを、私と裕子さん、そして人外たちが遠巻きに

見つめる。


何でも詩音の提案で、加奈かなさんと同じく琉絆空るきあさんもこちらサイドに

引き込めないかと、野狐やこたちと一緒に篭絡ろうらくしようとしていたらしい。


しかし、さすがにそこは弥月さんの兄と言うべきか。

あらゆる属性、タイプで迫っても何の反応も示さなかったようなのだが、


主様である鬼っ子が来た途端、彼女に一目惚ひとめぼれしたらしい。


そして肝心の本人はというと―――


「それで主様、どうするんだべか?」


「ななな何を言っておるか!

 人間の、まだ三十にも手が届かぬ者など小童こわっぱ同然。

 アタイがそんな程度で揺らぐとも」


川童かわこの銀に答える彼女は、どう見てもその赤い顔をさらに

真っ赤にさせて恥じらい、


「では断るんですか?」


「そそ、そんな事は言っていないであろう!

 だがこういうのはだな、もっとお互いを知ってからで。


 だけどアタイはあの山から離れる事は出来ないし」


倉ぼっこの理奈の問いにさらに慌てふためき、


「じゃああのトレーラーハウスに来てもらえばいいんじゃないですか?」


「んなっ!? そ、それは男と一つ屋根の下で過ごすという事か!?

 結納だってまだだし、それに式も」


詩音の言葉にいろいろすっ飛ばして答える。


「どうしようか、裕子さん」


「落ち着くまで待ちましょう」


そして俺は彼女の言葉通り、場が静まるまでしばらく待機する事にした。



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